第4話 死?
「...かい。...じょぶかい!大丈夫かい!」
僕は目を開けた。
「大丈夫かい!」
「は、はい。大丈夫です。何があったんですか?」
僕は重い頭をあげ、周りを見渡した。
黒い。
周りは真っ黒だった。
元々あの魔物がいたと思われる場所を中心に、周りの木や石、土までもが跡形もなく亡くなっている。
あるのは吸い込まれそうな黒い”ナニカ”。
僕と数人の衛兵らしき人と、冒険者と思われる人だけがその”ナニカ”の上にいる。
森の中に空いた不自然な黒い円。
「はっ、エヴェナは?エヴェナは無事ですか?」
「エヴェナ?あのドラゴンの支配者かい?少なくとも俺は見ていないよ。それより、これは君がやったのか!?」
これって....これか?
僕がやれるわけない。
でも、なぜか僕がやったように感じる。
魔術師はこんな魔法も使えるのか?
「すみません....分かりません。ですが、僕がやったかのように感じます」
「強力な魔法にはそれだけ大きな魔力を要する。強力な魔法を使った後には、使った本人の魔力が残る。強力な魔法であればあるだけ、自分で魔法を使ったのは自分だとわかるらしい。今回の場合、自分だってわかっているなら、恐らく君が使った魔法で間違いないだろう。君の職業はなんだ?」
「魔術師....です」
「はっ!嘘をつくんじゃない!あんな魔法、ただの魔術師に打てるわけない!急に森の上に黒い雲がかかったかと思ったら、轟音と共に一筋の太い紫色の光が森の中に降り注いだ。急いで来てみればこの有様だ!強力な力を持ったCPをもった人が使うような魔法だぞ!君は一体何者なんだ!?」
何者?
僕が?
なんでそんなに恐怖のこもった目でこっちを見てくる。
最初は心配していたのに、僕がこの惨状にしたと分かった瞬間にこれか。
まぁ、確かに 無理はないか。
僕でもそうなるかもしれない。
だが、やっぱり気持ちのいいものではないな。
あっ、それよりエヴェナだ!
「僕が何者かって?同じ人間ですよ。無理はないかもしれませんが。その畏怖の目をこっちにむけてくれないでくれませんか?」
「あ、あぁ。すまなかった。ちょっと混乱して取り乱してしまった。許してくれ」
「僕でもそうなっていたと思いますし、いいですよ。それより、さっきも言いましたがエヴェナを知りません?一緒にここまで来たのですが」
「これもさっき言ったが、わからないぁ。エヴェナさんは冒険者だし、冒険者ギルドに聞けば何かわかるかもしれないよ。今ここにいないってことは、もう街に戻っているのではないか?」
僕に何も言わずに戻るとは思わないが、あの魔物にやられた傷もある。
誰かに運ばれたのかもしれないな。
「そうですね。結構ダメージを受けていると思うので、先に街に行ってるかもしれないです」
「聞かせてもらいたいことがたくさんある。一旦街に戻ってから話を聞こう。その間にエヴェナさんのことは、他の誰かに調べてもらおう。いいかな?」
「はい、わかりました」
街に戻ってから色々聞かれた。
だから、ここまでのいきさつを丁寧に話していった。
異世界からきたっていうことは、話が複雑になってしまって変に疑われるのも嫌なので、あやふやにして話した。
「そんなことがあったのか。魔王団の幹部か....」
「はい。死ぬかと思いました。危機一髪でしたよ」
「魔王団の幹部を倒したという明確な証拠がないから、報酬などはない。すまないな」
「いいえ!衛兵さんが謝ることじゃないですよ。僕が魔法で消してしまったのが悪いのですから」
「君はあの魔法については何も知らないんだよな?」
「はい」
「そうか....。不用意に使うんじゃないぞ。あれは....危険だ」
「はい。僕が一番分かってますよ」
「あぁ、そうか。それもそうだな。はっはっは。それより、君の魔法すごいな。魔王団の幹部が消えて無くなるって、笑えない冗談だな。はっはっは」
本当にそうだな。
よく考えると笑えてくるぞ。
僕は魔王団幹部を倒し、生き残ったんだ。
これって凄いことだよな。
「ふふふふふ、ふっふっふ」
タタタタタ
取り調べを受けている部屋の外の廊下から、誰かの走っている足音が聞こえてきた。
そして、ガチャッと勢いよくドアを開け、1人の青年が入ってきた。
衛兵さんがエヴェナのことを調べるように言った青年だ。
「大変です。エヴェナさんは....ドラゴンの支配者は....お亡くなりになりました」
ここで打ち切ります