第3話 最初のピンチ
「黒那、おかえり。どうだった?」
エヴェナは、にやけながら言った。
「魔術師…だった」
「やっぱり、そうだと思ったよ。まぁ、そんなに気を落とさないで。だいたいの人が魔術師なんだから気にすることないよ」
「うん、ありがとう…」
僕はもう過ぎたことだし気にしないことにした。
魔術師なら魔術師で、一番強くなってやる。
黒那は固く胸に誓った。
「スキル見してくれる?」
エヴェナにスキルの紙を渡した。
「えーと、クリエイトシャドウ。聞いたことないな。まぁ、使ってみれば分かるか」
「使うってどこで使えば良いの?」
「もちろん街の外だよ。魔物に向かって使ってみようよ。もう遅いし明日出よう。宿を紹介するよ」
「ありがとう、何から何まで。エヴェナがいなかったら今頃魔物のお腹の中にいるよ」
「フフッ、別に良いよ。私がやりたくてやったんだし。ここまできたら基本のことはぜんぶ教えるよ。じゃあ行こうか」
宿に着き キノコのシチューを食べて 寝た。
シチューは素朴な味ではあるが美味しかった。
朝になりふとんから出た。
少し期待していたが、やっぱり夢じゃなかった。
母さん心配してるかなぁ。
食堂に行ってパンを食べていると、エヴェナがやって来た。
「今日は比較的安全なところに行くからね。まだ職業についてわからないこともたくさんあるだろうし、私の後ろにいてね。今日はスキルのチェックだけで帰るから」
「それだけ⁉︎」
「それだけ。安全って言っても今の黒那では絶対に倒せない魔物ばかりだから」
「そうなのか。死んだら元も子もないもんな」
「そうだよ。じゃあ早速行こうか!」
街から出て、歩いて1時間ぐらいする森についた。
ここにはゾンビがたくさんいるらしい。
「ここら辺には強い相手はでないけど私の後ろにいてね。私がどうやって戦っているかを見てしっかり学習するんだよ」
「はい、分かりました!」
ゾンビが3体現れた。
「いでよ!リトルシャドウドラゴン!」
エヴェナがそう叫ぶと一体の小さな黒いドラゴンが現れた。
目がクリクリしていて結構可愛い。
「お願い!あのゾンビを倒して」
ドラゴンはゾンビを一瞬で倒した。
「…エヴェナって強かったんだね」
「当たり前じゃん!私は巷ではドラゴンの支配者ともいわれてるんだよ」
え…ちょっと意外すぎて頭が追いつかないのだが。
そして、その戦闘スタイルから何を学べと...
「まぁ、そこまで名が知れ渡っているわけではないから、威張ることでもないんだけどね。
でも、二つ名がついている人ってそんなにいないんだよ」
え…ちょっと意外すぎて頭が追いつかないのだが
二つ名めっちゃ欲しいんですけど。
「ねぇー。なんか言ってよー」
「あ、そうだね。エヴェナって実はすごいんだね。僕も二つ名もらえるかな?」
「んー、普通の魔術師で二つ名を持っている人はそんなにいないからなー」
「…」
「大丈夫だよ。きっと頑張ればなれるよ!多分。おそらく。十中八九…」
僕は顔に絶望感が出ていたらしい。
エヴェナは必死に励ましてくれるが、最後のはっきりしないところが余計に僕を傷つけた。
はー、やっぱ 普通の魔導師には無理なのかな。
仕方ないか。二つ名は諦めようかな。
固く誓ったはずなんだけどなぁ。
少しは頑張るか。
俺意思弱いなぁ...
そんな暗いことを考えていると、話を変えようとエヴェナが話しかけてきた。
「じゃあ、次は黒那が魔物を倒してみようか。最初にもらえるスキルは経験を積まないと弱いから、今日はどんな魔法かを見るために一発だけ魔物に放ってみて。フォローはするから」
「分かった!」
魔法が使えるということでテンションがすごい上がった。
「あっ、あそこにゾンビが一体いるよ。あの魔物に向かって打ってみて。
魔法を放つ時は、スキル名を唱えてね。慣れてくると唱えなくても発動できるけど、慣れないうちは唱えてね。じゃないと使えないから。」
「うん。分かった。
じゃ、いくよ。クリエイトシャド…」
ゴゴゴゴ
僕がスキル名を最後まで唱える前に地響きがなった。
なにがあったのか戸惑っていると、前にいたゾンビが消滅した。
えっ…僕がやったの?
そんなわけないよね。
そう思った瞬間、上から何かが降ってきた。というか飛んできた。
ドーンという大きな音を立ててその何かが地面にぶつかった。
「なんだ⁉︎」
僕は思わず大きな声を出してしまった。
砂煙の中からかすれたおぞましい声が聞こえてきた。
「お゛ろがなに んげんどもよ゛。わ゛れわま゛おうだんのがんぶ.だ。われの゛も りには い゛ってぐるとは いい゛どぎょ う だな。ごのも り゛にはいっでぎて い゛ぎでか え゛れると おも う゛なよ。」
声の正体は魔物だった。
ゾンビのふたまわりくらいでかい。そして、さっきのゾンビとは比較できないほどの威圧感を放っている。
僕はふとエヴェナの方を見た。
エヴェナの顔は青ざめていた。
「この魔物何!?この森って安全じゃないの!?」
「安全なはずなんだけど... これはまずいよ。魔王団幹部なんてAクラスの冒険者複数で命をはって、やっと倒せるか倒せないかの魔物だよ。逃げなきゃ!」
「に゛がずとお も゛うのが?」
そう言って魔物は手を一振りした。
僕とエヴェナは吹き飛ばされて岩に叩きつけらて、吐血した。
逃げないと。 僕はそのことだけを考え必死に手と足を動かして逃げようとした。
すると、魔物は僕に向かってまた手を振った。
内臓が破裂しそうだった。
魔物はとどめだと言ってまた手を振ろうとした。
僕は意識の朦朧とする中で必死に唱えた。
「クリエイトシャドウ」
空一面が暗雲で覆われた。
そして、太い一本の紫色の光が空から魔物に向かって一直線に降ってきて、魔物をその光で包んだ。
魔物は塵一つ残さず文字どうり消えてなくなった。
僕は意識を失った。
4月3日
直しまくりました。
内容が変わるくらい。