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元令嬢、名門貴族に笑いかける

「私がするのはただのお願いですから」


ゴリオールはそう言いながら、優越感に浸っていた。

相手はマートライト家を実質支配しているラミス・マートライト。

彼女は個人としての武勇に関しても優れている上、将軍としての能力にも優れている。

そしてマートライト家の寡兵は、ただの私兵でありながら精兵にもまさる練度を誇っている。

もし、自分の賭けに負けラミスが兵士達と一緒に出てくれば自分はすごすごと退散するしかなかっただろう。

だが、自分はその賭けに勝ったのだ。


「この兵のことは気にしないでください。かのマートライト家へのお願いのために万全を喫しただけですので」


そうゴリオールの言葉、それはただのお願いではなくお願いの形をとった命令だった。

ゴリオールが望んでいるのはかのマートライト家の兵を自分のものとすること。

そしてそんなことは今まで王国でも少なくない影響力をマートライト家が持っていたため避けていたが、王国を出ようとしている今そんな遠慮はもう必要ない。


そして今、ゴリオールが率いている500の兵、それは少数ながらもマートライト家を除けば王国の中の一番の精兵だった。


確かにラミスは強い。

さらに付いている執事服を着た少女の方もマートライト家に相応しい実力を持っているのかもしれない。

けれども500の兵、それも戦場を何度も経験し生き抜いてきた精兵達と戦って勝てるわけが無い。

いざという時は実力行使になってもラミスを人質に取り、それからが再度マートライト家の兵士達を集めればかつて王国随一と言われたマートライト家の兵は自分のものになる。


「ふははっ!」


ゴリオールはそう考えて、笑う。

ゴリオールは今日は運のいい日であることを確信する。

執事の少女だけではなく、他にも護衛をラミスは連れてくるものだと思っていたが、連れてきたのは一番弱そうな少女だけだった、それも後でラミスと一緒に楽しめそうな。


「本当にいい女だ」


そこまで考え、ゴリオールはラミスの豊満な身体と整った顔を見てそう呟いた。

その目にはぎらぎらとした欲望で光っており、


「ラミス様から目を離せ!」


再度執事服の少女がゴリオールに殺気を向けてくる。


「テミス!」


だが、再度その少女を止めたのもラミスだった。

その光景こそがラミス達も抵抗が無駄であることを悟っている証だと考え、さらにゴリオールは顔に浮かぶ笑みを深くする。


「こんな弱い雑兵と、その後ろで踏ん反り返っているデブなんていう相手に感情を乱してどうするんです………」


「はっ?」


だが次の瞬間、ラミスの心底呆れたような声にゴリオールのその笑みは固まることとなった。





◇◆◇





「本当に、こんな輩ばかりですわね……」


500程度の兵、それも一応の戦闘経験はある、に囲まれた状態でラミスはそう小さく呟いた。

マートライト家の兵士達を自分のものにするためラミスを狙うという考え。

それは両親が未だ存命の頃、修行として回った国々では当たり前のものだった。

そして時にはその国の最強と呼ばれる翼竜に乗った戦士と単身で戦う羽目になったこともあり、正直目の前の兵士だけで自分を捕らえられると考えているゴリオールの甘さには呆れ以外の感情が浮かばない。


「ラミス嬢、貴女は自分が何を言っているのかお分りですか」


「はぁ……」


だからゴリオールに怒りの篭った声でそう呼びかけられた時もラミスは思わず溜息を着いていた。


「っ!」


その明らかに自分を馬鹿にしている態度にゴリオールの顔に青筋が浮かぶのが分かる。


「ーーー ねぇ?本当にその程度の兵で私にいうことを聞かせられると思ったんですか?」


「なっ!」


だが次の瞬間、ゴリオールの頭を支配していた怒りはラミスの殺気の込められたその言葉に消し飛んだ。

その殺気は最初ゴリオールに向けたものとは明らかに別格のもの。

しかもそれだけの殺気をラミスは自分の愛剣を鞘に直した状態で放っていた。


「あのものを捕らえよ!」


いつの間に剣を直したのか、そして直しながらそれほどの殺気を出せるラミスに対する恐怖が今更ながらゴリオールのうちに生まれる。

だが、それらの感情を全て押し込めてゴリオールは兵士に指示を出していた。

その指示には貴族と呼ばれるようになった、それだけの所以となる反応だったが、


「ぅぁっ、」


「っ!」


ーーー だがその指示が意味をなすことはなかった。


1人を相手にするには圧倒的人数を誇るはずの兵士達が、震えてゴリオールの指示に従わなかったのだ。


「何をしている!早く指示に従え!」


ゴリオールはまさかの兵士の反応に驚愕しながらも、それでも何とか兵士達を動かそうとする。


「無駄ですわよ」


「くっ!」


だが、そのゴリオールの行動が無駄であると、1人の人物が嘲笑した。

それは人間を超越したのではないか、そう思ってしまうほどの覇気を纏ったラミスだった。


「確かにある程度の練度を誇った兵士を500人も私に差し向けた貴方のこの国での影響力は認めましょう」


そしてラミスはそう静かに、ゴリオールの元へと歩き始めた。

ラミスが歩くたびにゴリオールとラミスの間を挟んでいた兵士が自ら道を開け、ラミスとゴリオールの間に一本の道が生まれる。


「ですが戦場に出たことがある、それは逆に私にとって有利にしかなりませんわ」


その道を歩きながらラミスはゴリオールの元へと進んで行く。


「ひっ!」


ゴリオールは恐怖を覚え、逃げようとするが足がもつれ倒れ込んでしまう。

それでもゴリオールはラミスから逃げようと足掻くが、その前にラミスはゴリオールの前へとたどり着いていた。


「ーーー だって、戦場に出ていたってことは、戦場での私の姿を見ていたってことですから」


「っ!」


そしてその時ようやくゴリオールは気づく。

目の前で500人の兵士を圧倒する覇気を出しながら艶然と笑う目の前の元令嬢。

それは絶対に手を出してはいけない。

いや、それどころか関わってはならない化け物であったということを………

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