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元令嬢、支部長の提案を蹴る

「っ!お前ら!」


支部長に捕らえられていたはずの家族の姿に側近達は思わず、涙声を漏らす。

もしかしたらもう生きては会えないかもしれない、そんな恐怖に耐えながら必死に過ごしてきた苦しみが目から溢れ出したのだ。


「何で……」


そしてそんな和やかな空間の中、1人顔を青くした人間がいた。

それはいうまでもなく支部長だった。

何が起きたのかわからない、そんな表情で呆然と目の前の光景を見つめる支部長。


「いや、かなり前から貴方の腹心に見限られていたみたいですね!」


「なっ!」


そしてその支部長へとテミスは笑顔で語りかけた。

その様子を見てラミスはテミスが捕らえられた人のことは何とかしますといっていたのは覚えているが、かなり前から行動していたことを知る。

おそらく未だ支部長の影響力が強いのを分かっていたので、当初はギルド長に悪事を密告してから完璧に救う予定だったのだろう。


「くそっ!」


そして一番の切り札を失ったということに支部長は気づき、そう忌々しげに吐き捨てる。


「おい、あんたには世話になったなぁ?」


「っ!」


だが、次の瞬間その顔に浮かんでいた怒りは怯えへと変わった。

その理由は隠す気もない怒りを支部長へとぶつける元側近、つまりC級冒険者達の姿だった。

その顔に浮かぶ殺意にようやく支部長は自分がどんな状況に置かれているのかを悟って震え始める。


「ラミス殿!いや、ラミス様!」


そして支部長がとった手段それはラミスへと助けを求めることだった。


卑屈な媚びるような笑みを浮かべ、支部長はそう口を開く。


「こいつらを止めてください!こいつらは私の指示で動いていた、いわば同罪だ!こいつらには私を裁く権利などない!」


そう叫んだ支部長の内心は見え見えだった。

つまり、この場でC級冒険者を複数人止めれる実力を持っているのはテミスとラミスだけだ。

そしてテミスはラミスの部下だから、うまくラミスを言いくるめれば死ぬことはないと判断したのだろう。

それは的確な判断だった。


「はぁ……愚か」


ーーー そう、ラミスがそんな話を受けるはずがないという前提さえなければ。


もう呆れて言葉も出ない、そんな表情をラミスは支部長へと向ける。


「いいのですか?」


だが、それでも支部長の顔に浮かぶ自信が消えることはなかった。


「ラミス様がここで私を、貴族を見捨てれば永久に貴女が罪人の汚名をすすぎ、この国に仕えられるようになる機会は無くなりますぞ!」


そう告げた時の支部長の顔に始めて酷く得意げな色が宿っていた。

それはおそらく彼の温めていた最後の手なのだろう。

そして確かにラミス達が罪人だと指名手配されたことは酷く腹立たしい事ではある。


「受けるわけがないでしょう……そもそも国が私を捨てたのではなく、私がこの国を捨てたのですよ……」


「えっ?」


だが、別にラミスは一切名誉を取り戻すことなど望んではいなかった。

おそらく罪人に認定されたことでラミスの貴族社会での評判はもう下がるところがないまでに落ちているだろう。


だが、ラミス達が必死に尽力してきた民衆たちはラミスたちを罪人だと一切思っていなかった。

こんなラミスが一度でさえ訪れたことのない辺境でも、それでもここに住んでいるものに聞けばラミス達が罪人にされたことは冤罪だと憤ってくれる人間がいたのだ。


そして、それでラミス達には十分だった。


「私、言いましたわよね?」


だからラミスは支部長の提案を嘲笑うかのような笑いを顔に浮かべ、さらに言葉を重ねる。


「貴方を裁くのは彼らにお任せしますわ、と」


「っ!」


その言葉に支部長はようやく悟る。

ラミスは絶対に自分の味方にはならないということを。

つまり今までの時間はただの無駄でしかなかったことを。


「おぉ、待たせたな」


「ひいっ!」


そして後ろから響いた、元側近達の声に支部長は悲鳴をあげながら逃げ出した……

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