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テミス、囲まれる

何故か正体を明かしてから順々になったマイヤールを連れ、ラミスは森の中を駆け抜けていた。

決して表に見せようとはしないが、それでも明らかにマイヤールは疲れ切っていることを悟り、ラミスはそれ以上の速度を出すことができない。

そして全力で森の中を抜けられないことに対してラミスは内心歯がゆい気持ちを抱いていた。


今一番気にしなくてはならないこと、それは戦力を持たない人間を人質に取られることだ。


つまり、ラミスと仲が良いエミリを人質に取れるということだけは絶対に避けなければならない。

マイヤールが森の中に入ったと聞いて、一応ラミスはテミスにエミリと彼女の家族を保護するように指示していた過去の自分に思わず良くやったと内心で叫ぶ。

おそらくテミスがいればそう簡単にエミリや彼女の家族たちにギルド支部長よ手が及ぶことはないだろう。

別にそこまで考えての行動ではないが、マイヤールが森の中に入ったことでギルド支部長と敵対する可能性を考え、行動を起こしていてよかったとラミスは唇に笑みを浮かべる。


だが、直ぐにそれは緊張感を伴った顔へと変わった。


確かにテミスは魔法保有者ではないが、かなりの実力を持つ。

しかしそうだとしても今回の敵は想像以上に強すぎた。


元から高位魔獣に匹敵する力を持つそんな魔獣が魔法を使えるようになった存在、そんなもの考えるだけで背筋がこおる。


そしてそんな存在に襲い掛かられたとしたら幾らテミスでもエミリを守れるかどうかはかなり疑問が残る。


「………私が着くまで!」


隠し切れない焦燥を顔に浮かべてラミスが呟いた言葉。

それは森の虚空に霧散して行く……






◇◆◇







「はぁ………」


そして未だラミスが森の中にいる頃、テミスはギルド前でそう深々と溜息をついていた。

だが見るからに気だるそうなその態度に反して、その顔は緊張に強張っていた。


「何なんですかこれは……」


「んん?ねぇちゃんどうしたんだ?」


そう忌々しそうに呟いたテミスは直ぐ足元からした声に、不安そうな様子を見せるわけにはいかないと口を閉じる。


「いいえ何もありませんよ」


「嘘だ!」


「そうだそうだ!だってさっきなんか言ったもん!」


「ねぇちゃん何隠してんだよ!」


「はぁ………」


テミスは何故か楽しそうにそう次々に言葉を重ねる子供達、エミリの妹、弟達の勘の良さに思わず溜息をつく。


「それにしても、私の性別は男だって何で信じてくれないんですかね……」


それから心底疑問そうにそう呟いた……

その声には長年性別を間違われてきたもの特有の哀切が混じっていて、思わず子供達も黙ってぽかんと口を開く。


「ねぇちゃんどうした?」


「はぁ………」


だがその沈黙は1分さえも持つことなく再度テミスは溜息を漏らす。


「ごめんなさい!今、他の受付嬢さんに仕事を代ってもらいました!」


そしてその時エミリがギルドから現れた。

そう、テミス達がこんな場所で子供達と一緒に立っていた理由、それはエミリが出てくるのを待っていたのだ。


「で、話って………えっ?ちょっと!」


そしてテミスはエミリがギルドを出てきたのを確かめると、無言で彼女の手を引きこの場を去ろうとする。


「あれ?何故その受付嬢を連れて行かれようとしておられるですかな?」


「ちっ!」


だが、テミスがその場を去ろうとするその前に嗜虐的な響きに満ちた男の声がその場に響いた。

そしてその声にテミスは舌打ちを漏らし、エミリは何故目の前の人物がこの場所にいるのかわからず呆然とつぶやく。


「何でこんなところに支部長が……」


そのエミリの疑問に支部長は口元に笑みを浮かべる。

それはこの場での勝利を確信したかのような、そんな何らかの確信に満ちたものだった。


「急に受付嬢を連れ出そうとする、本当にそれは許しがたい行動ですね。流石は犯罪者。では、犯罪者は捕らえないと」


「なっ!」


そしてその言葉が終わるか、終わらないかの時にはテミス達を何かの集団の影が覆っていた。


「………あぁ、くそ!間に合いませんでしたか!」


そんな中、エミリ達の表情が恐怖で歪み、テミスから殺気が放たれる。


「Gyaaa!」


次の瞬間黒い、様々な種類の魔獣がその場へと放たれた………

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