マイヤール、襲われる
「気味が悪いな……」
止める冒険者達を振り切って森の中に入っていたマイヤールは森の中、そう漏らした。
その目に宿るのは警戒心だった。
高位魔獣がいるのではないかとそう言われていた森の中に入るのにいたってマイヤールには一切油断はない。
だがそれでもマイヤール決して戦って負けるとは思っていなかった。
どんな魔獣でも切り札を切れば勝つ自信がある、その自信がマイヤールにはあるる。
切り札はそう断言するのにたる能力だとマイヤールは確信している。
だがそれでも高位魔獣との戦闘など普通なら忌避すべきことだろう。
冒険者で徒党を組んで高位魔獣と戦いに行くのでもなく、たった1人で、それも他の魔獣も存在する森の中に行く。
それは通常なら何としてでも忌避すべきことだった。
そして普通ならばそうなってもマイヤールが大した被害を受けることはないはずだった。
冒険者達は怯えてしまい、徒党を組んだとしても命が奪われるかもしれない森の中には入ろうとしない。
もちろんいつかは高位の冒険者がギルドから呼び出されて、高位魔獣を倒し前と同じように森の中に入れるようになるだろう。
だがそれまでにはかなりの期間が開くことになる。
それは今までD級として活躍してしたマイヤールからすれば決して生きていけなくなるような期間ではない。
だが、それは1人の場合だ。
「……あぁ、畜生。タイミング悪すぎだろ」
マイヤールは頭にラミスとテミスの姿を頭に浮かべてそう呟く。
そう、今マイヤールが態々高位魔獣を倒すためにやってきた理由それはラミス達のことだった。
少し前に冒険者となったラミス達。
彼らが今、そこまでの蓄えがあるはずがない。
そんな状況で唯一の稼ぎ場所である森に入ることが出来なくなればラミス達はあっさりと食べて行けなくなるだろう。
そしてそうなれば幾らマイヤールでも彼女達を養うことはできない。
それならば高位魔獣を倒す方が簡単だとそう判断してマイヤールは行動を起こしていた。
「……まぁ、とっとと終わらせるか」
ベテランが逃げる暇もなく殺した高位魔獣。
絶対に油断することはできない相手だが、それでも決して絶対に勝てないそんな存在ではない。
「よし!」
そして気合を入れて行くマイヤールは気づいていた。
背後から少し距離を開けてずっと2人の人間が歩いてついてきていることを……
◇◆◇
どれだけ歩いただろうか。
木が辺りに生え揃うそんな場所にやってきて、そしてマイヤールは足を止めた。
「……なぁ、もういいか?」
「っ!」
そのマイヤールの声に自分をつけていた2人の男は驚愕を漏らす。
だが、その反応にマイヤールは呆れを覚える。
相手が自分よりも実力が低いのは明らかでそれは男達も分かっているだろう。
なのにこれだけ隠す気の無い敵意を自分に向けてきながら今までマイヤールが気づいていなかったと考えていたとは。
「あ、逃げようとは思うなよ。この足場の悪い場所で走ればこけるぞ」
もちろんなれている自分は別だが、とマイヤールは言外に含ませて男達、冒険者達に告げた。
「くそっ!相変わらず生意気な!」
振り返り視界に入ってきたのはギルドで見たことがある冒険者達だった。
もちろん決して仲の良い冒険者ではない。
それどころか、嫉妬などの一方的な悪意を向けられてきた相手。
「………何しにきた?」
そしてだからこそ、マイヤールには何故この2人が自分を追いかけてきたのか分からなかった。
確かに彼らは自分のことを嫌いだろう。
しかしそれでも現在この状況で自分をどうにか出来るなどそんなことを思うほど馬鹿だとは思えない。
だとしたら手柄のおこぼれをもらいについてきたという可能性があるが、そんな信頼関係を作った覚えもない。
だが、そんな疑問はすぐにマイヤールの頭の中から霧散した。
とにかく今はこの危険な場所からこの2人を逃げさせるのが先決だと判断して、口を開く。
「ここは高位魔獣が……えっ?」
だが、その瞬間身体に感じた悪寒に反射的にマイヤールは剣を抜きはなっていた。
その悪寒の元は笑う冒険者達の影。
突然その影が膨らみ、そして同時に強烈な威圧が周囲に放たれる。
そんな中、マイヤールは異様な目の前の光景に目を見開く。
「高位魔獣?そんなの気にする必要なんてない!」
そして目を見開くマイヤールに対して、冒険者2人はそう嗜虐的な愉悦に唇をゆがめながらそう吐き捨てる。
「Gaaa!!」
そんな2人の言葉が終わる前に異様に膨らんだ影の中から何かが現れる。
それはまるで魔獣のような、だが明らかに高位魔獣ですら及ばない威圧感を放つ黒い魔獣もどき。
そしてその姿に言葉を失うマイヤールを冒険者は嘲笑い、口を開く。
「ーーー 高位魔獣、それ俺たちのことだから!」




