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元令嬢、疑問を覚える

何だかんだとマイヤールに打ち解けてから、数日が経ってもラミス達は大きな問題はなく、生活していた。

日々ラミス1人で魔物の素材をかり、そしてテミスは家で食事の用意をする。

時々ラミスは帰る途中でマイヤールに出会って家に招待することがあるので、テミスは常に少し多めに食事を作るようになっていた。

その際にマイヤールは食事代だと明らかに高額な金額を、おそらくラミス達の生活を試みた金額を置いて行く。

その金額には、マイヤールのラミス達があまり稼げていないのだろうという、思いが現れていたが、だがそれはただの勘違いでしかない。


エミリに頼んで換金され、人知れず蓄えられて行くラミスの金額、それはかなりの値段になっていたのだから。

それもこのギルド1の稼ぎ頭であるはずのマイヤールさえ遥かに超える稼ぎに。

その理由は一重にラミスの冒険者としての能力の高さにあった。


未だテミスさえもラミスの実力が飛び抜けていた、それがギルド長からS級の証明書を貰った理由だと思い込んでいる。

しかしそれは間違いではないが、完璧な正解ではない。

確かに冒険者として実力の有無は大切だ。

そしてラミスは確かにかなり高い実力を持っている。


だが、それはラミスが冒険者としての経験がないことを示してなどいない。


そうつまりラミスがギルド長に貰った証明書は決してラミスがS級冒険者の実力を持つことだけを示しているのではなく、ラミスがS級冒険者として過ごしてゆけることを証明しているのだ。


その結果今のラミスは辺境でありながら高級な素材だけを効率よく集め、迷宮の第一線で働く冒険者にも負けない金額を稼いでいた。


「………本当に何時ものポンコツぶりが信じられなくなる稼ぎですね」


そしてその稼ぎをラミスから聞いたテミスは信じられない、そんな表情でそう呟く。

それは何気なくラミスを馬鹿にしていたが、だがその言葉に対しラミスが反応することはなかった。


「どうしました?」


「………やっぱりおかしい」


ラミスのその状態にテミスはそうたずねる。

その声にはただまたおかしなことでもいうのか、そんな響きが入った声。


「………どういうことですか?」


だが次の瞬間、ラミスの言葉を聞いたテミスの顔には真剣な色が宿っていた。

今までと違う主人の様子、それを決して多くはないが主人と共に戦場に出たことがあるテミスは察知する。

そしてその頭に蘇るのはかつてラミスが敵の策略を違和感から見抜き、勝利を引き寄せた時のこと。


ーーー その時の様子と今のラミスの表情は酷く似ていた。


「これだけの金額、幾ら私でも普通は稼げませんわ。なのに稼げたその理由が分かりますか?」


「えっ?」


いきなりの問いに一瞬、テミスは言葉に詰まる。

だが、ラミスの苦い顔つきにテミスは直ぐに彼女が何を自分に知らせたいか悟る。


「……もしかして、ラミス様でなければ倒せないような、そんな敵がいたと?」


それがテミスが思い浮かべたラミスの悩みの理由。

だが、口にしながらもテミスは自分の言葉を信じていなかった。

テミスのいう強力な個体、それは普通ギルドが機能している限り現れることはない。

確かに魔獣達は森の中で縄張りを持っているが、そんな中で比較的安全に過ごしている魔獣が強力な存在になる、いわゆる進化を行うことはない。

よって強力な個体が出てくるのはいわゆる群れから追い出され、ハグレとなった魔獣が進化した場合だけだ。

だが、それはあり得ない。

何故ならば、普通どんな特別な力を持つ魔獣でも進化までには数年かかる。

そしてそんな時期が経つ前にハグレの魔獣はあらかた冒険者達に狩られるのが普通なのだから。

だからテミスは直ぐに自分の言葉を否定しようとして。


「ええ、その通りです」


「えっ?」


そして次の瞬間、言葉を失った。

ラミスが前に危機だとそう断言した時、それはあと少しでも遅れたら大敗を喫するその直前のことだった。


そしておそらく今回も、その時に負けないくらいの危機をラミスが悟ったとそのことをテミスは無意識に悟った………








◇◆◇







「私が出会っただけで、進化していた特別な個体は数十体を超えていました」


「っ!あり得ない!」


何かがある、そうラミスの様子から悟ったテミスだが、それでも次のラミスの言葉を彼が受け入れらることはなかった。

その顔に浮かぶのは隠しきれない驚愕。

テミスが思わずラミスの言葉を否定した理由、それは決してラミスへの信頼が少ないから、などという理由ではなかった。

それどころかテミスはラミスの言葉を否定しながらもなお、決してラミスの言葉が嘘だとは思っていない。


だがそれでも、認められない、いや、認めてはいけない程の異常事態だったのだ。


進化種、それは一匹でも出たら辺境で討伐隊が組まれるほどの存在。

ラミスが居たからこそ、あっさりと討伐することができたが、それはただの偶然にしか過ぎない。

そんなこと、ギルドがない未だどの国の統治下にも置かれて居ない辺境ならともかく、このギルドのある場所で起きるのは明らかな異常事態で……



「おそらくこの辺境のギルドは殆ど機能していませんわ」


だが、未だ冷静さを失った状態であるテミスにさらなる爆弾をラミスは落とした。

その目にあるのはただただ真剣な色。

そしてそのラミスの目に何とか冷静さを取り戻したテミスは詳しく、全てをラミスから聞こうと口を開きかけて……


「ラミス様、ギルド支部長がお呼びです」


「なっ!」


その時、ギルドの受付嬢であるエミリが顔に隠しきれない苦みを浮かべた状態で現れた……

更新遅れてすいません!

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