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元令嬢、忠告される

「つまり、ラミス様はあの受付嬢の子が見捨てられないからあの男の明らかに罠だと分かる提案を受けたんですね」


「……はい」


ギルド出て昼食時、ラミスは問い詰めるようなテミスの言葉を頭を下げながら肯定した。

その顔にはテミスに怒られるのではないかという恐怖と、相談することなく決めてしまったことに対する後悔が浮かんでいた。

そしてそんなラミスの様子にテミスは呆れたように嘆息する。


「相変わらず即決というか、正直もう少し説明が欲しかったですね……」


「うぅ……ごめんなさい。でも、今はもう私は令嬢では無いし、自由に動けるって思って……」


「いや、令嬢だった時から自由に動いていたじゃ無いですか……」


「うっ!」


テミスの呆れ声に反論できず、ラミスは俯く。

確かに言われてみれば自由に出来る出来ない関係なく、自分の思ったことは遣り通してきた気がする……


「ごめんなさいねテミス……今回に関しては本当に私の独断だから……」


そしてしょんぼりとしたまま、ラミスは嫌ならついてこなくて良いと告げようとして、


「っ!えっ?いや、そんなつもりじゃ……」


「ん?」


急に立ち上がって慌てだしたテミスの姿に目を見開く。


「すいません……」


テミスはそのラミスの戸惑うような視線で自分が取り乱しすぎたことに気づいたのか、顔を真っ赤にして椅子に座りなおす。


「ううん、良いんですよ。悪いのは私ですし、本当に気にせず休んでいてくれても……」


「違うんです!」


ラミスは挙動不審なテミスの態度に、そんなにも行きたく無かったのかと労わるように口を開く。

だが、その瞬間さらにテミスは挙動不審になる。

最終的にどう言えば良いのか分からなくなったラミスがじっとテミスを見つめていると彼は顔を赤くして俯いたままぼそりと話し始めた。


「……ラミス様、決して僕はラミス様のその行動力を責めているわけではありません。僕だってそのラミス様の行動力に助けてもらった1人ですし、それにラミス様が何かを決めた時の表情は凛々しく……いえ!なんでも無いです!」


「あ、うん……」


「っ!」


途中、テミスが失言でもしたのか凄く顔を真っ赤にしていたが、私が何故そんなに慌てているのか分からないことに気づくと、少し消沈しながらも再度口を開く。


「でも、それでも僕はラミス様に危険なことをあまりして欲しくないんです!」


だが、その言葉を告げた時テミスからは物怖じするような雰囲気は消えていた。


「ラミス様が僕なんか比べ物にならないくらい強いのは知っています!そして実際にどんな問題があったてラミス様なら片付けられしまうでしょう。でも、今の僕はラミス様の旅の仲間なんです!守られていなければならなかった今までとは違ってちゃんとラミス様の役に立てます!


だからもっと僕を頼ってください!」


「っ!」


最後にそう告げた時、テミスの目に光るものが見えてラミスは悟る。

テミスが想像以上に自分のことを気にかけてくれていたということを。

テミスはラミスに対し今まで素直に好意を見せることはほんとんど無かった。

その理由は照れだったりと色々と思春期の青年的理由が存在していたのだが、それでもテミスを可愛いいもう……弟のように可愛がっているラミスにとっては1つの悩みの種だった。


「あぁ、もう!いじらしすぎますわ!」


「ら、ラミス様!?」


ーーー そしてだからこそ、テミスのその言葉はラミスにとって何より嬉しいものだった。


それこそ、あまり引っ付いてくるなといつもテミスに怒られているのを忘れ彼を抱きしめてしまう程度には。

急に抱きしめられたテミスの方は流石に予想外だったのか一瞬で顔を再度紅着させる。

そして急いでラミスの身体を引き剥がそうとするが、


「あぁ、可愛い!」


「っ!」


だがラミスの身体に触れた瞬間、その身体の想像以上の柔らかさに反射的に手を引いてしまう。

ラミスはかなり身体を鍛えているはずなのに、テミスにとっての羞恥心を刺激するくらいにはその身体は柔らかく、その身体の柔らかさにテミスの顔はさらに赤くなる。


「ぎゅーっ!」


「なっ!」


だが、ラミスに思いっきり抱きしめられた時、テミスは身体が柔らかいだのなんだの言っている場合で無くなったことを悟る。

ラミスの身体で発達し、最も柔らかい胸部の部分、そこはテミスの背中に押し付けられることになったのだ。


「ら、らみす様ぁ!」


羞恥心、興奮、そのほかの様々な感情が合わさりテミスの目は潤む。

そしてその男性でさえ顔を赤らめそうなテミスの状態にラミスの興奮はマックスになり、その結果さらにテミスを抱きしめるラミスの腕に力が入る。

そのせいでテミスは力づくでラミスの高速を抜け出そうとするものの、ラミスとの腕力の差であっさりと押さえ込まれてしまい……


「何をしているんだ、お前ら……」


そしてその時、1人の少年の声がその場に響いた……




◇◆◇




そこにいたのは少年と思われる背格好の全身を古びた鎧に隠した人間だった。


「貴方は?」


ラミスはテミスを全力で可愛がっていたが、少年に呼び止められたことにより渋々テミスを抱えていた腕を緩める。


「ラミス様の馬鹿!」


そしてその腕が緩んだ隙にもう、目をうるうるとさせたテミスが、ラミスの拘束を解き部屋の隅へと逃げ出す。

そんなほのぼのとした雰囲気に、ラミス達のいる食事やの雰囲気がほのぼのとしたものに変わるが、


「忠告しておく」


だが、次の瞬間少年の告げた言葉によりその場の空気は緊迫感が漂うものへと変わる。


「鎧から見て、お前らは落ちぶれた貴族なんだろう。そして家にあったコネを使って冒険者となるためにこの場所にやって来たと言ったところか。


だったら、もうお前らは冒険者となることを諦めてこの街を出ろ」


少年の言葉には威圧のようなものが含まれていて、ラミスは目を細める。

そして一瞬、少年の威圧に反応して同じく威圧を出しそうになったが、そんなことをして逃げられは仕方がないと自分を抑えながら、口を開いた。


「どうして?」


だがそのラミスの問いに少年が答えることはなかった。


「翌日おそらくギルドから使いが来る。その前までに自分たちの住んでいる宿屋を解約してこの街から出て行け」


ただ、それだけを告げてそしてそれで話は終わったとばかりに踵を返す。

それから少年がラミス達に何かを告げることはもうなかった……

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