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JKメタラー☆姫タル俺の秘めたる事情  作者: 祭人
第二章 姫タル俺のドキドキ夏の海合宿
12/40

第12話

 ――と見間違うようなビキニ姿が。


「さー、いってみよーかー!」


 じゃじゃ馬娘の陽菜は、下着の変わりに水着を既に仕込んでいたみたいだ。


「さあ、メタルうぃんぐ全軍突撃ーっ!」


 空かさず鈴音と翼が、同時に陽菜のサイドテールを掴んだ。


「イタタタタ。ひひ~ん、離してぐで~」

 

 ◇


 しばらくして、U窓海岸バス停に迎えの車が来た。

 パールホワイトのメルセデス・V-class。いわゆるベンツのミニバンだ。

 実物は初めて見た。大きなツリ目状ヘッドライトと巨大な十九インチアルミホイール。田舎の路上というシチュエーションとのミスマッチも合間見えて、インパクト絶大である。

 陽菜ちゃんが嬉々としてピョンピョン飛び上がる。


「アニメタルきたー!」


 は? 美羽の家族がメンバー?

 無言のまま、表情で疑問符を投げ掛ける姫タル俺。

 そんな俺を見て、鈴音ちゃんがくすくすと笑って補足する。


「ヒナちゃんがふざけて言っているだけですよ。ミューちゃんの大学生のお兄さんです」


 なるほど。あにメタルか。彼が荷物の運搬係ということらしい。

 ベンツの扉が開く。そこに現れたのは、短めウルフヘアーの茶髪をした背の高い青年だった。


「おまたせ。みんな」


 浅黒い肌に引き締まった体躯。爽やかな笑顔がやたらと眩しい。


「待ってたねんよ、おにいちゃんっ。うちがヒナメタル、よろしくっ!」


 アニメ声で挨拶する陽菜。なんだ初対面か。相変わらずの馴れ馴れしさだ。


「よろしくお願いします」


 体育会系の挨拶で追随する翼さん。


「やあ、みんなよろしく」


 例のハンサム顧問教師の高崎に引き続き、またもやイケメンの襲来とは。まったく気が気ではない。鈴音ちゃんの心を揺れ動かさないかが心配だ。


「遅いわよ光彦みつひこ兄さん。時間厳守」


 妹の美羽が苦言を呈す。

 時間厳守……って君が言うか?

 いっつもスタジオ練習は遅刻の常習犯だというのに。


「まあ、そう言うなよ美羽。結構な大荷物で、搬入大変だったんだぜ。それに家車いえしゃのミニバンは乗り慣れてないんだ。いつものポルシェと違って、車幅が全然分かんないからな」


 なっ、学生の分際でファーストカーはポルシェかよっ!


「久しぶりだね、鈴ちゃん」

「はい、お久しぶりです、お兄さん」


 おいこら、なんだよ鈴ちゃんって。登場するなり馴れ馴れしいぞ!


「この度は色々と良くして頂き、ありがとうございます。しばらくお世話になります」


 鈴音と美羽は小学校高学年以来の幼馴染だ。当然、その兄妹とも面識はあってしかるべきなのだが……。


「しばらく見ないうちに、随分と美人になったね」


 バツン!

 俺の脳内でギターの弦がブチ切れ弾けた。細い1弦や3弦じゃない。ぶっとい5弦だ!

 だからどうしてイケメンという人種は、こんな臆面もなくチャラいことが言えるのか?


 顔を真っ赤にして俯く鈴音。もしや、密かにこのイケメン兄に気があるとか……。

 そんなことないよな? 頼むぜメタルの神よ、そんなことないって言っておくれよ。


「それに、色々なタイプの可愛い子ぞろいだ。みんな甲乙付け難い」


 甲乙付け難いなんて、女たらしの常套句だ。どうせオキニの目星は付けて……なっ?

 こともあろうに美羽兄の光彦は、姫タル俺へと露骨に色目を投げ掛けて来た。

 ゆっくりと目線が太ももへと下降する。キモい、やめろ、やめてくれ~!


「なあ美羽、ひとりぐらいお持ち帰りさせて貰って構わないかな」

「別に構わないけど」


 いや、そこは構えよ!


「兄さん、O県青少年健全育成条例は知ってるわよね。未成年者への淫行は条例違反で二年以下の懲役または百万円以下の罰金。場合によっては懲役刑もあり得るわ。動かぬ物証の現場写真を、ネットに拡散されて平然としていられる度胸があるのなら、お好きにどうぞ」

「おー怖っ、公開処刑かよ。冗談だよ、冗談っ。ほんと強気のドSだよなあ、うちの家を継ぐのは秀才のおまえの方だからってさ」


 苦笑いで頭を掻きながら、光彦は俺たちをベンツのミニバンへと促した。


 ◇


 十数分後、一向はロッジに辿り着いた。


「到着ぅ!」と陽菜ちゃんが叫ぶ。

「すごい、個人所有の建物とは思えないわ」

「ああ、もっと小屋みたいのを、オレもイメージしていたんだけど」


 かなり大型のログハウス。まだ築年数は浅そうだ。屋根勾配のきつい北欧風の丸太組み式。森林を背景にヨーロピアンな風情が漂っている。


 光彦が「さあ、どうぞ」と鍵を開け、丸太製の扉を開く。


「「「すごーい、広ーい!」」」


 スズメ・ヒナ・ツバメの三羽がユニゾンだ。

 吹き抜けの大型リビング。軽く三十帖以上はありそうだ。何時ものドクドクの一番広いスタジオよりも、遥かに大型スペースである。


「ねえねえミューちゃん、いったい何部屋あんねんの?」

「3LDK。シングル1にツインが2。後は倉庫の屋根裏部屋」

「なるほどなあ。屋根勾配がきつくて、大型のリビングが吹き抜けになっているから。二階の有効スペースはそうでもないのか」と翼さんが相槌を打つ。

「後で部屋割りしなくちゃね」とリーダーの鈴音ちゃんは言った。


「じゃあな。機材関係はリビングに固めて置いてあるから、後は自分達でやるんだぞ」


 美羽にロッジの鍵を手渡し、玄関へと向かう光彦。

 直後「あ、そうだ」と踵を返した。


「美羽、ちゃーんと連れて来てやったからな。おまえの愛しのダーリンも」


 ソファの上を指差す。そこには大きな犬のぬいぐるみが置かれてあった。


「……さっきの仕返しのつもり? 性格悪いわね」


 美羽は顔を真っ赤にして兄を睨みつけた。

 光彦がニヤリと笑う。


「ふふっ、性格悪いのはお互い様さ。これも冬堂家の血筋かね」


 あれが鈴音ちゃんの言っていたケンちゃんか。彼女が毎晩抱いて寝ているという。

 白い毛並みのへちゃ顏犬。偶然にも俺、健太郎と同じ名前なので気恥ずかしい。


「じゃあね、みんなごゆっくり。四日後の朝に迎えに来るからね」

 

 光彦は俺たちの方を向くと、とびきりのスマイルを浮かべ手を振った。


 ◇


 三十帖を越える大型リビング。

 丸太の大型ウッドテーブルに高級そうな革張りのソファ。中央奥には六十インチの大型液晶テレビが鎮座している。

 その片隅には、俺たちの機材が一箇所に固めて置かれてある。

 このリビングには、カラオケやダンスパーティ用に、マイクなどが挿せるPAミキサーとBOSEのスピーカーが設置されている。電子ピアノも常設だ。それらを利用して簡易スタジオにしようという趣旨である。

 美羽がエアコンのスイッチを入れる。厚い木を使っているログハウスは断熱効果が高く、夏場も冬場も快適だ。木には雑音を吸収する吸音材の働きがあるので防音効果が高い。

 ポイントはログハウス特有の凸凹のある壁。これが音を受け止める表面積を拡大し、反射材効果をもたらす。ホームシアターや楽器の演奏に最適なのである。


「父の道楽なの。私はあまり興味ないんだけど」と美羽は冷めた口調で言った。

「さー、今度こそ泳ぎに行くねんよー!」

「ヒナちゃん。遊びに来た訳じゃないのよ。バンド優先。先ずはセッティングをしないと」

「せやかて。機材とかの難しいことはうちら分からへんし。あ、そうだ! ねえねえ、みんなっ。ここは姫ちん大先生にお任せして、うちらはこっちこっち」


 陽菜ちゃんは鈴音ちゃんの腕を引っ張ると、早々に二階へと引っ込んだ。

 翼さんも後を追う。美羽も無言で続いた。


 まあ、いいか。どうせ機械に疎い彼女たちには未知の領域だ。ひとりの方が仕事も捗る。

 リビングにひとり取り残された俺は早速、セッティングを開始した。

 脇目も振らず、黙々と持参のエフェクターやギターアンプなどの梱包を開封して行く。

 誰かがツンツンと背中を指で刺す。俺は反射的に振り返った。


「なななっ!」


 おもわずレザーマスクで覆った俺の口から声が漏れる。


「じゃじゃーん!」と陽菜が叫んだ。


「むふふのふ。姫ちんにスズメちゃん、先ずはロックは衣装スタイルからやねんよ!」


 なんとそこには、内股気味にもじもじと頬を赤らめる――。


「もうっ、ヒナちゃんったら。なんで無理やりこんなの着させるのよっ!」


 バニーガール姿の鈴音ちゃんがいた。



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