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才能

作者: 安岡 憙弘

  才能

 悦子には人に自慢できる才能がないのがコンプレックスであった。ピアノとか勉強とかそういう一芸に秀出た人が悦子にはうらやましくてならなかった。悦子はそれでなにか才能を見出そうとして様々な習い事に身を投じた。

悦子がまず算盤に身を投じたが算盤は悦子のようなトロ臭い人間には難し過ぎた上、あまりにも地味で自慢のタネになりにくいので二年も経たずにやめてしまった。次に悦子は料理が上手になりたいと料理を母から徹底的に教わった。しかし悦子には料理をつくってあげる誰かがいなかったので、バカなことをしたと思って又止めてしまった。悦子は悔しい思いをバネにして次なる水泳に身を投じた。しかし水泳は今時では誰でもできるし、夏にしか自慢することが出来ないので悦子は又してもバタフライの出来る手前まできて勝手に辞めてしまった。悦子は絶望的な気持ちになって、今度は勉強に打ち込むことにした。しかし根本的には悦子は勉強は苦手であった。そこで学校のテストにのみ的を絞って死に物狂いで男も帰りみずに勉強した。

 すると悦子は奇跡的に実力テストで英語で満点を採ることができた。百点は悦子一人でであったので、友達は

「悦子凄いよ。悦子ってやればできるんだね。次も百点採って先生や親を見直してやりなよ。わたしは悦子のことやればできるとずっと思ってたんだ。悦子はだから心配せずに自分のやりたいことを追求したらいいわ。悦子はいつだって自分を控えめにし過ぎなのよ。悦子はもっともっと自分の才能を大切にしなきゃいけないの。悦子いつだって自分を悪くしか評価してもらってない。私は悦子がとってもかわいそうだった。だから早く評価してもらって早く世に出るべきなのよ。悦子はこんな小さな中学にもってる人間じゃないわ。早く世に出て私達を驚かせてよ。ねえ悦子。お願いだから。ネ。」

孝子はそう言っていつも男子をとりこにしているお茶目な瞳で悦子に片目をつむってwinkした。悦子は少しこそばゆい気持ちがした。しかし気を抜いては次の期末で馬脚をあらわしかねない。悦子は孝子に男で負けても学問では負けるまいと誓った。

悦子は次の期末試験でも満点を取った。況んやその次の中間考査でも百点だった。悦子はいつの間にか天才のような扱いを受ける様になりなんだか少し物足りないようになって来た。そこで悦子は気分転換に図書室で居眠りをしていた。すると司書の女性が悦子のところに或る一冊の本を持ってきた。「これは私があなたと同じ年齢の時に読んだ『ファウスト』という本です。上中下とあるからあなたなら読めると思うわ。私に読めたくらいだから貴方によめないはずはないわ。もし興味があったら才能というページを読んでみて。どこにそのページがあるかは才能のある貴方になら分かるはず。だから必ず目を通してね。わかったかしら。貴方とちがって私には才能がないから初めから全部読んだのよ。ネ。」と司書の女性は孝子に勝るとも劣らないかわいい瞳をした。

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