春(3)
チルノと入れ替わりでやってきたのは、永遠亭のお姫様・蓬莱山輝夜(ほうらいさん‐かぐや)とその部下(むしろペットに近い)の鈴仙・優曇華院・イナバ(れいせん‐うどんげいん‐いなば)と因幡てゐ(いなば‐てい)。今日は輝夜の付き添いも兼ねて博麗神社に参拝しに来たのだ。
参道で一人佇む輝夜を尻目に、二羽の兎はそれぞれ願掛けをした。
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一方、縁側では医師で薬師の八意永琳(やごころ‐えいりん)による診療が行われていた。
苦しがる魔理沙を心配そうに霊夢とアリスが見つめている。
永琳「ふむ。毒が回った形跡は無さそうね。」
霊「だったら、なんでこんなに苦しんでいるのよ。」
永「私にも判らないわ。これはもう少し調べる必要があるわねえ…魔理沙、口を開けて。」
何処からともなく取り出した懐中電灯で喉の奥の状態を確かめる。
永「治療法が判ったわ。霊夢、ちょっと離れてくれる?」
霊「(何をするのかしら……?)」
言われた通りに霊夢がその場を離れた。アリスと萃香も固唾を飲んで見守っている。
永「魔理沙。ちょっと痛いけど、我慢しなさいよ?」
魔「(頷く)」
永琳は高く腕を振り上げて。
永「そぉい!」
魔「グボァ!」
霊&萃&ア「Σ(°□°;)」
なんと、思い切り魔理沙の腹を殴ったのだ。
魔理沙は殴られた際に大きく息を吐き出したため、喉に詰まっていたキノコが取れた。キノコはそのまま屋根の向こうに飛んでいった。
永「はい、診察終了。どうやら、キノコを食べた時にそのまま飲み込んでしまったみたいね。」
ア「魔理沙、大丈夫?」
魔「ゲホゲホ…。あ~、死ぬかと思ったぜ。」
霊「全く、何やってんのよ…。」
魔「まぁ、これにて一件落着ってことで良いじゃないか。ハハハハハ!」
ア「良いわけないじゃないの…;」
魔「面目ない。」
永「まあ、以後気を付けなさいよ?」
魔「肝に銘じておくぜ…。」
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魔理沙が吐き出したキノコは本殿を越え、石段付近に居た輝夜の目の前に落ちた。
輝夜「あら、何かしら?美味しそうね♪」
こともあろうか、輝夜は安全性を確かめもせずにキノコを食べた。
輝「(…か、辛い~!!)」
余りの辛さに輝夜は声にならない悲鳴を上げ、のたうちまわりはじめた。願掛け中だった二羽は輝夜の異変にすぐ気づいた。
鈴仙「姫様、どうされました!?」
輝「~~~~っ!」
するとそこへ、魔理沙の診療を終えた永琳が戻ってきた。
てゐ「師匠、姫が大変なことに!」
永「……ああ、さっきのキノコには辛味成分が含まれていたのね。はい、水ですよ。」
永琳が何処からともなく差し出した水を一気飲みすると、ようやく輝夜は落ち着いた。
輝「ありがとう永琳…さっきは死ぬかと思ったわ。」
永「先ほど診察した魔理沙も同じことを言っていましたよ。姫様、もう拾い食いはやめて下さいね。」
輝「ええ、分かったわ。」
永「それじゃあ帰りましょうか。ウドンゲ、てゐ。姫様をよろしく頼むわね。」
そう言うと永琳は先に行ってしまった。
輝「そしたら行きましょう。二人とも、またよろしく頼むわね。」
鈴&て「はい。(うへえ~;)」
輝夜が駕籠に乗り込んだのを確認して、鈴仙とてゐは、また大汗かきながら石段を下っていった。
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ところ変わって、再び縁側。
霊「魔理沙、とにかくもう無茶はしないでよね。さっきは心配したんだから。」
魔「ああ、十分に分かっているぜ。ところで霊夢、また夕方ごろここに来ても良いか?」
霊「別に構わないわよ。」
魔「サンキュー。んじゃアリス、帰るか。」
ア「ええ。」
魔理沙が箒に跨がり、アリスもそれに続く。
魔「霊夢に萃香、世話になったな…それじゃあ夕方、また会おうぜ!」
箒が浮上し、一旦後ろへ下がったのち。
まるで弾け飛んだ輪ゴムのように箒は急発進して、あっという間に見えなくなった。