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現在、他校との交流試合真っ只中。

スコアは0-0。


近隣校との交流試合をうちの学校で、ってんで

放課後、結構残って応援してくれている

生徒もいるみたいだ。


「近衛く~~ん!!」


「近衛~!」


その中でも、やっぱり近衛、応援の声が目立つ。


「いけー!!うおお!やったー!」


「日野先輩!流石っ!」


「今の見た?すげー近衛のアシスト!」



「……見てた、見てたって」


今、試合以外の一体何処を見るって言うんだ、

耳元で大声出すな。鼓膜破れるわ!


まぁ、俺達一年が初めて見る対抗試合だから

盛り上がるのは分かるんだけど、

皆、凄い興奮状態だ。



俺も勿論、うちの学校が点を取るのは嬉しいけどさ。


見てるだけじゃなく、やっぱあの中の一員で

活躍してナンボだと思うんだよな。


早く出たい、俺も試合に出て共感したい。

もっと頑張らないと駄目だ、と少し

一年で唯一活躍してる近衛を羨ましく思った。


アイツはスターかもしれないけど、同じ一年なんだ、

俺たちだって可能性はあるって事を

ヤツが身を持って教えてくれているのに。


で、気になることが二つ。

その一つが……


(あ、まただ)


しかし、あの5番と14番……

審判が見てないところで、やたら

無駄に近衛にプレスかけてやがる。



「クソッ、ムカつくな」


「ああ。5、14だろ?」


俺の独り言を聞いていたのか、横で

岩倉さんがそう言った。


「結構、陰湿だね~反則ギリギリだよなぁ。

共に三年生か。あれじゃ流石の近衛も

ちょっとキツイよね」


ギリギリ?

時々、服引っ張られたりしてるみたいだけど

明らかにやりすぎだろ。


向こうは反則も厭わない感じでやってるから、

近衛も中々前に出ることが出来きない。


それでも、一瞬の隙をついて点数に

繋がるアシストをするあたり、

ヤツがスーパースターと称される所以だろう。


ここで、審判がホイッスルを吹き、前半、1-0。


「どうしたぁ?

ギャラリーが多いからって、良いとこ見せようと

するから無駄に力入ってるんだよなぁ。

気楽にやれ~怪我しない程度にさ」


紺里……何というアバウトな指示。

まるで勝ちとかどうでも良さげじゃないか。


円陣を組んでの掛け声の後、皆ピッチへ散らばる中、

近衛だけがチョイチョイと手招きで呼ばれていた。


「オ~イ。何時まで遊んでるんだ?

お前は力抜き過ぎ~見ててバレてるから」


「……ウイッス」


後半戦が再開された。



始まった途端、近衛はまるで前半と動きが違っていて、

前半あんなに押さえ込まれていたのが嘘の様に

マークを外し、すぐさま追加点を入れた。


「……え?」


そして、ルーズボールを拾っての

カウンターを決めもう一点追加。

この間、時間にして約7分。


もうこの時点で、我が校のギャラリーは狂喜乱舞。

これでもかという程の盛り上がりを見せ、

コールは“近衛”一色となった。


相手チームは二人では、足りないと見たか

マークを三人に増やしてきたけど、

結果は同じだった。


もうこうなると近衛の独壇場だった。


「前半、何だったんだ?」


と、俺。


「最初からヤレっての」


と、紺里。


それを横で岩倉さんはアハハと笑って見ていた。



終いには向こうの学校の女子からも

近衛の活躍に黄色い悲鳴が混じりだした。


凄い、マジで凄い。

何だよ……メチャクチャ格好良すぎるだろ。



にしても、腑に落ちない。

紺里は、こうなること最初から分かってたのか?

今一つピンと来ないんだけど。


近衛に対しては兎も角、ハーフタイムでの

あの口ぶりからは、テキトーにやれて感じだった。


それに気にかかること、二つ目……


「岩倉さん、監督って何で試合の時、

常時マスク着けてるんですか?あれじゃ

試合中、指示が聞き取り難いと思うんですけど」


「まさにそれが狙いなんだよ」


「へ?」


「あの人、あ、紺里監督ね、

あれで凄い負けず嫌いなんだよ」


「……はぁ」


だから?


「あ、噂をすれば、そろそろ出るよ。

まぁ百聞は一見に如かず、って事だし」


そう言われて再び紺里を見る。


「オイ!テメー何やってんだ!?

それでも三年かよ!いい加減にしねーと

%$#:@@+*!!」


今、何て?スゲー事言ったよな?


「ハハハ。興奮しだすとね、

あんな風に放送禁止用語怒鳴り出すんだよ。

だから、なるべく洩れないように

マスクして貰ってるんだ」


一見穏やかそうに見える紺里、

これは確かに聞こえたらマズいでしょうよ。


「以前は退場させられたこともあるんだよ」


アハハハって……クセある監督に、このマネージャー

大丈夫か?俺達サッカー部。


俺はどうりでこの部に女子マネがいないのか

理解した気がした。



交流試合終わってみれば、5-1。

圧勝だった。


先輩曰く、この高校に勝ったのは初めてらしく

長年の雪辱をようやく果たせたと歓喜に

沸いていた。


試合が終わって一人の女子が走り寄ってきた。


「すごーい!カッコよかった!近衛君」


「あ、スミマセン」


あの時の女の子の声だ。

付き合ってるんだから応援に来てたのか……


近衛に接している彼女に対して

周りの女の子達のかなりの注目を集めていた。


彼女本人もそれが分かってるらしく

堂々としたものだ。

というか見せびらかすように近衛に

引っ付くように寄り添う。



「近衛君、お疲れ様。はい、タオル使って」


とか言いつつ、タオルで頭を拭いてあげてたり……


「あ。どうも」


近衛も彼女に好きなようにやらせている。


見ているこっちが、段々イライラしてきた。


「お、いいね~近衛」


岩倉さんの明るい声が浮いている。


「ふふふ。岩倉君も彼女作ればいいのに」


“岩倉君”ってことは、この人、上級生かよ。

よく見たら、うわっ三年だ。


「近衛君、待ってるから一緒に帰ろう?」


「ミーティングあるから遅くなると思うけど」


「大丈夫。待ってるし」


「ウッス」


少し笑って返した表情にムカッってした。

多分それは…………彼女に対して、かもしれない。


「杠君、試合勝って良かったね。昨日メールで

試合あるっていうから見に来ちゃった」


「お~~~ユズ、お前も彼女来てんじゃん!」


またお前か、中村!声デカイ!

皆、見てるじゃんか!


「杠くん?」


「う、うん。俺は出てないけどね」


「でもチームの一員だし、応援お疲れ様」


「ありがとう」


相変わらず、本当にいい子だよな。

何時もだったらこの感じに癒されるんだろうけど

なんか今日はおかしいんだ、俺。


この子より後ろの二人が気になって仕方がないとか

本当どうかしてる。



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