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6 天然

あの日以来、俺は極力、近衛を意識的に

見ないように心掛けていた。


だけど、声を聞くだけで

気持ちが波立ち、また

いつの間にか目でその姿を追っている。


そんな自分にいい加減、嫌気がさす。


そんなに自分の事を覚えて貰えていなかったのが

悔しいのかと。


俺、こんな性格だったけ……女々しいったら

ないよな、ホント。




「あの、あの……」



ベランダでボンヤリ、そんなこんなを

思い出していた時、突然声を掛けられて驚いた。


「え?何?」


目の前には、一人の女の子が立っていて、


「杠君、メアド交換しない?」


見れば結構可愛い子で、真っ赤になってる。

その姿を見て、自分もつられて何だか

緊張してきた。


「俺?……いいけど」


特に断る理由が見当たらない。


この子、名前よく知らないけど

多分隣のクラス、三組の子だったような。


中学の時も付き合っていた子はいたから

こういうのは初めてじゃないし、

――何より、近衛の事を考える時間を

紛らわせたかったっていうのが一番の理由だった

かもしれない。


いや、まて逆だろ、俺。


きっと今、女の子と付き合ったりしてないから

どうでもいい事ばかり気にするんだ。


メアド交換が済むと、その子は

ケータイを大事そうに持って嬉しそうに笑った。


「ありがとう。メールしてもいい?」


「うん。いいよ」


(やっぱ、女の子は可愛いよな)


様子を盗み見していたクラスメートから

後で散々冷やかされたが、悪い気はしなかった。


そうだ、そうだよ。

女の子は良いよな。

可愛いし、柔らかそうだし、それに

それに……


何と比較してるいるというのか、

俺はひたすら“女の子は良い”と

自分に言い聞かせるように何度も心の中で

繰り返し呟いた。




「一年~~各自、来たら

十周ランニング終わってから柔軟開始~」


「うぃーす!」


マネージャーの声でそれぞれ来た順に

校内周回に走り出す。


「よぉ」


後、一周って所で合流してきた中村の声で

そっちを向いた。


「おお。遅かったなお前」


中村は中学の時からの友達で部活も

一緒だったから、かなり仲が良かった。


「なんかHR長引いてさぁ、もう面倒くさいったら」


「大変だったなぁ」


「あ。ていうかさぁ~聞いたぞ、ユ~ズちゃん」


突然、変な言い方でニヤニヤしながら

俺に絡んできた。


「うちのクラスの女子と付き合ってるんだって?」


……コイツ、そういえば三組か。


「別に付き合うとかじゃねーよ。

メアド交換しただけだし」


「OKしたことには変わりないじゃん。

女子メッチャ盛り上がってたよな?なぁ、近衛」


え?


ギョッとしたが振り向けずに走っていると、

真後ろから、


「ああ、そういえば何か言ってたな」


いつの間にか合流してきた近衛の声がした。


中村は尚も、


「中学の時も全部、向こうからだったし。

ユズって、見た目可愛いから結構モテんだよなぁ」



(やめろ!なーかーむーらー!!!!!!

余計な事をベラベラ喋ってるんじゃねーよ!)


心の中で絶叫していても、届くはずもなく。


ただ、近衛は、


「ふーん」


さして興味なさそうに相槌を打つその声に

なんとなくホッとする。


「まぁ、近衛はもっと凄かったろーな。

そういえば、入学して十六人だっけ?今まで

告ってきたの」


(ええええええええええええ?)


そんなに告られてたんだ……


「へぇ~す、凄いな」


軽いショックを受けてるのは、誰に対してだ?


「で、誰かOKしたのか?お前」


思わず耳が大きくなる。

え?誰かと付き合ってるのか?近衛。



「あ、ユズ、お前十周終わったんじゃね?

次、柔軟だろ?まったな~」


そういって、俺を残し遅れてきた面々は

ランニングの残りに行ってしまった。


(中村のバカ!!続き気になるだろうーが!)


後でわざわざ、告白されてどうしたとか、

近衛、誰かと付き合ってるんの?誰かに

聞ける訳ねーじゃん、それおかしいだろ。


第一、気軽に聞けるほど軽い性格でもなければ

近衛に直接聞けるほど仲良くないし。


……中村、お前の天然さを

これ程恨んだことはないぞ、クソッ。





―――そして、俺は五日後、奇しくも中村が言っていた

件の現場に偶然居合わせることになった。



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