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「大体、何で最初からそれらしい態度
取らなかったんだよ?そしたら俺だって」
「出会ったの二年半位前だぜ?
お前がどんな気持ちとか分からないしな。
様子を見て揺さぶりをかけてた、それが
俺の思い込みでなく確信に変わるまで」
「………え」
揺さぶり?
そんなものに俺は大いに
振り回されてたって訳か。
「女と付き合いだしたと
聞いた時は流石にムカついたぜ?」
「だ、だからアレは中村が勝手に」
「ああ。分かってた。
まぁ、途中から別な意味で動いてたのも
あるけど。お前、イチイチ
引っかかるから面白くて」
「って、確信犯じゃねーか!」
「そうとも言うな」
そうともな、とか……くそっ。
怒ろうにも、ニヤニヤ笑うその顔に
俺はどうしようもなく弱くて。
「ちょ、ちょと……オイ!」
「何だ?」
何処に手を入れてるんだ?お前
「何だ?じゃないだろ、何やってる」
「口で説明しなきゃ分からないのか?
お前もその為に来たんだろう」
「いえいえ。
気持ちが伝わっただけで
お腹一杯ですから、今日はそろそろ
お暇しようかなぁとか
思っているんですけど」
どこの奥様だ?と呆れ顔の近衛。
「この状況で、それを言うか?」
た、確かに、今
近衛の体に組み敷かれて、奴の手は
口ではちょっと言い難い場所に
……って状況だけど!
「いや、こういうのはもっと先で
良いかなぁ、な?な?」
「怖いのか?」
そりゃ、怖いだろ。
初めてなんだぞ?
「痛いの……ヤだし」
「ふーん、やり方は知ってる訳だ?」
「……う」
その底意地の悪そうな笑い方に
思わず目線を逸してしまった。
「最初だけだ、そんなの。
ちゃんと気持ち良くさせてやる」
「テキトーな事、言うなっ」
「お前だってもうキスくらいじゃ
物足りなくなってるんじゃねぇの?」
「足りてるから、どうぞお気になさらず」
「遠慮するなって」
してないから!
逃げる腰を引き寄せられ、そのまま
ベッドに押し倒された。
「嫌だ!」
「何で?」
「お前、先輩と別れてないじゃん。
……ハッキリさせろよ、でなきゃ嫌だ」
なんか、すっごく睨まれてるけど
それ以上は何も言ってこない。
「……………………」
随分長ぇ。どうせロクなこと
考えてないだろう、お前は。
「チッ」
舌打ちをした後、
身体をしぶしぶ開放してくれた。
俺は逃げるように自室に帰り、その夜は
近衛の魔の手から脱する事に成功した。
翌日、部に現れた近衛の頬には
傍から見ても分かるほど
それは見事な手形がくっきり。
紺里におっ!何だ?近衛、新しい遊びか?
などと笑えない冗談を言われていた。
言ったんだ、近衛。
嬉しいけど……痛そう。
「普通はやらせないけど、
あの先輩は俺を殴る権利あるしな。
部に来る前に先輩呼び出してコレだ。
後で聞いた話、なんか段持ちらしい」
段持ち……どうりでハハハ……。
ちょっとテンションが上がって、つい
「惜しいことしたって
思ってるんだろう?」
「いい女だったからな」
「…………」
そりゃ事実だけどさ、
そこは一応否定しとけよ。
なんだよ、結構残念だと思ってるのか?
「妬くなって」
いきなり頭を抱え込まれたかと思うと
近衛がキスをしてきた。
必死で抗ってその身体を押しのけ、
慌てて口を拭う。
「バカっ!こんな所でいきなりするな!
誰かに見られたらどうすんだよっ」
学校敷地で人もまばらにまだいるってのに。
大胆すぎるんだよ、馬鹿野郎。
しかも舌まで入れてきやがって。
「約束を守った彼氏にここは
ご褒美って場面だろう?」
「やややや、マジで。まだ早いって」
お風呂から上がって自室に
戻ろうとした俺は近衛の部屋に
連れ込まれてしまった。
現在、
壁に押し付けられてる危機的状況。
「……いつまで待たせる気だ?」
その低音怖いって。
「なんていうか、レギュラー
になれるかどうかの過渡期だし、
ホラホラ試験も近いし、な?」
「…………」
必死に話してるのに、目の前の
近衛は耳ほじほじし始めて
すごく馬鹿にした態度に
見えるんですけど。
「分かった」
え?なんかアッサリでこっちが
拍子抜けしてしまった。
「え?」
「お前の言いたい事は分かった、
と言ったんだ」
「そ、そう?それは良かった?」
俺は近衛の気持ちが変わらないうちに
速攻部屋に戻った。
もしかしてこの調子で行けば
案外この貞操危機を
なんなく回避できるかもしれない。
俺は心の中でほくそ笑んだ。
――――近衛という男を
甘く見過ぎているとも知らないで……。
<告知>
番外編 第二弾:クロイ ビネツ。
鷺我参上!編(18禁)
やっと恋人同士になって
無事二年生に進級した二人。
そんなある日、滅多に他校からの
練習試合さえ受けない事で有名な
超常勝校、あの天下の“鷺我”が
突然試合を申し込んできた!?
その目的は?
しかも、そこのエースと
近衛には何かあるようで……?
こんな大事な時に近衛は
俺を……しようとするし!
ドサクサに紛れてチーム内の意外な
秘密が明らかになったり。
本文でセーブしていた本来の鬼畜・近衛と
その甘さを堪能して貰えればと思ってます。
※加筆して少し連載することにしました。




