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何考えてるんだ!?アイツ


此処に女連れ込むとか。

俺と兄弟って事は学校でもごく一部、

生徒では誰も知らない事なのに。


バレたらどうするつもりだよ。


近衛は以前誰に知られても構わないって

感じだったけど俺は違うって言ったのに。



……違う違う違う。ああ、分かってるさ。



本当の問題はもっと別にある。


よりによって俺がいるこの家に

女を連れ込んでくるとか、許せねー!


しかも俺がいない隙を狙って家に入れて

ナニするつもりですか!?



「すみません、コーヒーとかで良かったですか?」


あ、ヤベ!あれこれ考えているうちに

近衛が部屋に戻ってきてしまった。


どうしよう、

アイツは俺の存在を気が付いてない。


取りあえず、いるって知らせなきゃ。


だってホラ、いるって分かってないと

後々、色々気まずいだろ。


それに妙な事を起こす前にな!


(スマホ、スマホ……っと)


………………アイツの番号知らねー!!!


“オイ、近衛の番号教えろ”


中村に極力小さな声で電話を掛ける。

電話の向こうから、小さくてよく聞こえないとか

言われながら、やっと番号ゲット。


あ、俺初めて近衛に電話掛けてる……


とか、感慨に浸ってる場合じゃない!

出ろ!早く!!


コップを耳に当て隣の様子を窺う。

確かに着信音が鳴ってるようだ。


よしよし。鳴ってる。


「あ、鳴ってるよ」


「知らない番号だから良いですよ」



コイツがこんなに用心深いとは知らなかったぞ。

取りあえず出てみりゃいいじゃん!

携帯変えた友達の緊急連絡かも知れないだろーが!

お前はそんなことも考えないのかよ。



チッ。この作戦は失敗だ。


再度、中村に電話。


“近衛のメアド教えろ”


“ユズ、さっきから何やってんの?

連絡、俺が取ってやろうか?”


あ!その手があったか。


中村の番号だったらアイツ出るだろうし。


で?内容何て言うんだ?


俺、隣の部屋にいます……?

それはマズイ。


俺に連絡を……アイツも俺の知らない。



「……先輩」


その時、アイツの声が微かに聞こえた。


「本当?誰もいないの?」


「今日は家族出掛けてますから、夜まで

帰ってきませんよ」


ハッキリは聞こえないけど多分

そんなことを言ってるっぽい。


マズイ、マズイ。

変な雰囲気に隣の部屋がなり始めてる。


他人に向けるそんな近衛の声なんか

聞きたくないし、俺にこの間したことを

その部屋でしてるとか絶対嫌だ。


壁一枚隔てた向こうにいるってのに、

まどろっこしい!


俺がいると分かれば流石に聞かれるのは

嫌だろうし、止めるだろう。

今は理由は何であれ、止めてくれれば

それでいい。


俺は必死の思いで中村に催促す。

確かにこっちの声を押えて喋ってるから

聞こえづらいんだろうけど、グダグダしてる

相手に焦りが募って、段々口調が荒くなっていく。


“良いから早く!教えろって!

今すぐ教えないとマジ絶交だからな”


やっと手に入れたメアドに送ると、

再び着信音が隣の部屋から聞こえた。


『件名:俺、束。

本文:隣の部屋にいるから』


頼む、今度は見てくれ。


暫くして、着信。

無論こっちはバイブにしている。


『件名:知ってる。

本文:だから?』


硬直。頭の中真っ白。


ハァ?知っててワザと、かよ!?

信じられない!どういう神経してやがる!


気付いていないと思っていた上の行為も

無茶苦茶腹が立つが、今となっては

もうそれ以上だった。


スマホを持つ手が怒りでブルブル震える。



つまり。


本命はその先輩で、俺の事はからかっただけ。

思わせぶりの態度は全て俺をバカにしてて

蔑んでいたっていう事だったんだ。


その上、俺が自分の事を好きだと知っていて、

わざわざ俺が隣にいると確認済みの上で

行為に及ぼうとしてるって訳ね。



ハイハイハイ。了解。



自分の部屋を思いっきり開けて、

近衛の部屋をドンドンと叩く。


「お兄ちゃーん、ちょっとウルサイんだけど

余所でやってくれない?

そ・れ・に、今日はお勉強、

見てくれるって言ってなかったっけ?

ねーねーオーニィーチャーン?」


鼻をつまんで殊更大きく言ってやった。

最後の方はやたら恨みがましく低音で。


中から女の声が小さくキャッと

聞こえたけど、知るか。


部屋に戻り音楽をガンガンかけてると

暫くして隣の部屋から人が出て行く気配がした。



再び階段を上がってくる音は一人。



「ざまぁ」


と、扉を開けて嫌味ったらしく

声を掛ける。


だけど、当の近衛は怒るどころか

ニヤリと笑って、


「やるな」


今度はお前の番だけどな、と捨て台詞を残して

自室に消えて行った。



はい??



と、いきなり隣の部屋から我慢できず

吹き出したように笑う声が聞こえた。



近衛がこんな風に、さも可笑しそうに

笑うなんて初めて聞いた。


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