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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

生きたまま

作者: 時殺神厳
掲載日:2026/03/07

 私は、些末なことにどうしても腹が立つ、所謂器の小さい人間だった。それを命の綱渡りを経て改善した話を、聞いてくれないか。


 次の授業は国語だ。国語の教科書と問題集を机の上に出して、チャイムが鳴る瞬間を待っていた。だが、教室に入ってきたのは数学の先生。困惑とまではいかないが、不思議に思っていると、彼は口を開いた。

「次の授業ですが、数学に変更になります」

謝罪の言葉を待っていたが、彼はそのまま授業を始めた。

 私は教室を飛び出した。私は国語をやるつもりでいたのだ。その予測を裏切ったのだから、謝罪くらいするのが筋ではないのか。私は彼に嫌なことをされたのだから、私も彼を困らせてやろうという魂胆だ。

 私が廊下に出て数秒後、彼も廊下に出てきた。「どうした?」と鬱陶しい声が耳に入る。思ったことを全て正直に話してやった。

「確かに、謝罪はしてもよかったかもしれない。それは悪かったが、君ももう少し寛容になったらどうだ」

その言葉はもっともだった。だから、憤りは覚えなかったし、代わりに深く傷ついた。私は人を許すことができない、最低なのだ。

 翌日、私は一限目から教室を飛び出した。普段のように怒りを覚えたからではない。死ぬ為だった。生きているのが申し訳なくなった。廊下を走って、階段を駆け下りて、近くにトイレだけがある、人目に映りにくい空間に来た。私は、そこにある手すりにベルトをかけ、ベルトに首をかけた。足を離す勇気はなかったから、足にかける体重を最小限にして、体重の多くを首にかけた。

 次第に圧迫感が襲い、唾液が分泌されるようになるが、飲み込むと、喉か首か判らないが、その辺りに痛みというか、不快な違和感が走る。

 辛くなってきた頃に、足音が聞こえる。ベルトから首を外そうか悩んでいる間に、数学教師が顔を見せる。彼は一瞬驚いた顔をして、すぐに真剣な表情に戻る。彼は手際よくベルトを手すりから外し、私は地面に尻をついた。

 彼は私の動機を知っているかのように、「私はそういうことが言いたかったのではない」と話した。そうだ、当たり前だ。彼は私を責めたかったのではない。私に死んでほしかったのではない。欠点を治してほしかったのだ。

 私は彼の言葉を受け止めて満足していたが、それで自分を責めるだけでは意味がない。変わる為の努力をしなければならなかったのだ。

 幸い、私は、彼のおかげでまだ生きている。それは、まだ機会はあるということを示している。今からだっていい。生きたまま、生まれ変わろう。

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