Episode7: Eyes on the Arena
地球人の新入隊員は、訓練場の左側に集まった。
「お互い連携のとりやすい俺と拓斗、青木さんと朋佳の組み合わせで良いよね?」
大翔が言った。
全員が大翔の意見に賛成するように頷いた。
その時、背後から藤原の声が飛んできた。
「全員、ギアの状態を確認し、訓練モードに設定するように。」
隊員には訓練生時代から、それぞれに「アルケイン・ギア(Arcane Gear)」と呼ばれる個人武装が支給されている。
これは、魔法犯罪に対抗するために開発された特別な武器。惑星戦争期から進化を続け、今や惑星人の魔法にも耐性を持つ数少ない手段となっている。
ギアにはエネルギー源の残量があり、使用者は戦闘中も常に確認を怠ってはならない。
そして最大の特徴は――使用者の戦闘スタイルに応じて、自在に“形”を変えることができる。
「訓練モード。」
私は腕輪に呼びかけた。
すると、腕輪がふわりと光をまとい、美しい銀色に輝く剣に変わった。
ギアは想像によってさまざまな武器や盾に姿を変えられるが、エネルギー消費や使用者の戦闘技術に応じて選択しなければならない。
訓練モードのギアは、人を傷つけない安全設計がされている。
致命的な部位に触れた瞬間、自動で攻撃判定がストップする仕組みだ。
ただし――
訓練モードを解除すれば、実戦仕様となり、本当に人を殺傷できる。
心して扱うべき力だ。
「じゃあ、第一試合始めるぞ~。」
佐々木部長の声が場内に響く。
「俺たちが先に行く。」
拓斗と大翔が訓練場に向かう。
私と朋佳は、了承して二人を見守った。
「それでは、私は観客席から見ています。健闘を祈ります。」
藤原は新入隊員に声をかけて観客席へ向かっていった。
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――観客席。
そこにはすでに、オルビス・コードの隊員たちが続々と集まっていた。
席の前列では、髪を内巻きボブにまとめた女性が身を乗り出している。
彼女は木星人のセレナ。
長いまつ毛と綺麗に仕上げたメイク。
すらりとしたモデル体型で、制服もどこかスタイリッシュに着こなしていた。
「悠ちゃん、なんかロボット出てこないよ~。」
セレナが隣の男性に話しかける。
「そろそろ始まる時間だけど……押してるのかな?」
彼は一番隊隊長、千葉悠真。
身長170cmほど、柔らかい眉と優しい垂れ目が印象的。声も表情も、どこか癒し系だ。
そこへ、さらに二人の隊員が到着する。
「お疲れ様です。」
180cmはありそうな大柄な男性が、隣の席に腰を下ろす。
鋭い目つきに筋肉質な体つき――彼は二番隊隊長、**山田遥仁**だった。
「あれ、まだ始まってないみたいですね。遅刻かと思いましたよ。」
遥仁の後ろから顔をのぞかせたのは、
小柄な木星人のアイラだった。
身長は150cm程度、大きな目が印象的な彼女は、ポニーテールを揺らしながら、遥仁の隣に座った。
「クロエー。何か知ってる?」
セレナが近くに座り、パソコンで作業している女性に尋ねた。
「私も何も知らないですね…。」
白っぽい金髪のショートヘアで、丸めがねをかけた女性は金星人のクロエだ。
――そのとき、藤原が後ろから現れ、クロエの隣に座る。
「お疲れ様です。」
「ねぇ、さとちゃん、これ今どういう状況?」
セレナが藤原に向かって問いかける。
その呼び方やめてください、とため息をつきながらも、藤原は状況を簡潔に説明した。
「…え…今年の新入隊員、癖つよすぎない…?」
セレナがドン引きしながらつぶやく。
「私たち、その子たちの先輩になるんですよね...うぅお腹痛い…。」
アイラもお腹をさすりながら言った。
隊長二人も苦笑いをしていた。
「さぁ...どうなりますかね...。」
誰ともなくつぶやいたその声に、全員が再び、訓練場へと視線を向けた。