表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

Episode 5: 衝突


──俺は、今回の人事に納得していません──


その言葉が訓練場に響いた瞬間、空気が張り詰めた。


「おいっ!」

拓斗(たくと)の後ろから、弟の大翔(ひろと)が慌てて声を上げ、拓斗(たくと)の肩に手を置く。

だが、拓斗(たくと)はその手を振り払い、真正面から佐々木部長を見据えていた。


佐々木は表情を崩さず、淡々と問いかけた。

「納得いかない理由はなんだ? ……宮城県支部に配属されたことか?」


拓斗(たくと)は一拍おいて、はっきりと答える。

「…一番理解できないのは、惑星人の人選です。」


その視線が、隣に立つ惑星人の同期たちに向けられた。

視線は鋭く、明らかな“拒絶”がにじんでいる。


実は、私も最初に配属通知を見たとき、驚いたのはそこだった。


惑星人──地球外の惑星で確認された知的生命体。

その大きな違いは、出身者の約30%の確率で「魔法」と呼ばれる特殊能力を持つことにある。

その魔法は、出身惑星によって種類も特性も異なる。


特に魔法の力が強いとされている上位3惑星は、雷を操る木星・氷を操る天皇星・高速移動が可能な彗星とされている。オルビス・コードの現場で活躍する惑星人の多くは、これらの惑星の出身者だ。

だが今、私たちの隣に立つ3人は、正直──戦闘向きとは言いがたい惑星出身者だった。


金星—美と誘惑を象徴する惑星。金星人は、感情・精神に関わる魔法を持つ。医療・カウンセリング分野では活躍しているが、攻撃魔法の例はほぼない。


海王星— 神秘的な青の惑星。海と深淵の力を秘めている。水を操ることができるが、水が存在しなければ発動できない。使用場所に大きく制限がある。


火星— 赤い砂塵が舞う過酷な環境の惑星。使用が確認できている魔法は、土魔法。建築・整地などの土木系作業では信頼されているが、瞬発力や破壊力には欠ける。


このような魔法は、一般的には医療・環境・土木関連の分野で活躍するもの。

戦闘部隊に配属されるのは、ほとんど前例がない。


拓斗(たくと)が静かに、けれど確かな怒気をこめて言った。

「一般捜査官は、命を懸けて魔法事件に立ち向かう仕事です。

 ……()()()を守る余裕なんて、現場にはありません。」


その言葉に、惑星人たちを見る目が少しずつ変わる。

さらに、拓斗(たくと)が追い討ちをかけた。


「それに……あの3人の中に1人、犯行履歴のある者がいると聞いています。」


一瞬、佐々木は厳しい顔つきをしたが、冷静に答えた。

「警察へ連行歴がある者については、すでに無罪が証明されている。

 そして、こいつらが信用できるかどうかは──模擬戦を見ればわかるだろう。」


「……あのさ。」


突然、カイが口を開いた。


「要するに、俺たちが“弱い”って言いたいんだよね? ……合ってる?」


拓斗は黙ったまま、目をそらさない。


「じゃあさ、そこの怒ってる君。俺と、模擬戦しようよ。」


静まり返った空間に、カイの挑発的な言葉が静かに響いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ