Episode 4: First meet
「おぉ……でかい!」
「すごい……!」
「…………」
私たちの後方から、声が聞こえてきた。
その方向を振り返った藤原が「こちらへ…」と声をかけようとしたが…
「おっ、全員そろったな!」
藤原の静かな声をかき消すように、明るく響く声が飛び込んできた。
振り返ると、スーツ姿の男性二人と、制服を着た三人が、訓練場の奥からこちらへ歩いてくる。
「あなたは、他に仕事があるでしょう。」
「いいだろ〜、俺が来たって。」
「まあまあ……」
スーツ姿の男性たちと藤原が軽口を交わしており、私たちは戸惑いながら視線を向けた。
すると、その視線に気づいたらしいスーツの男性が、ゴホンと咳払いをしてから話し始めた。
「宮城県支部長の佐々木遼真だ。たまーに顔出すから、よろしくな〜。」
色黒の肌に、グレーがかった髪をラフにワックスで固めた無造作ヘア。身長は、170cmほどだろうか。
スーツもやや着崩し気味で、正直、隣の藤原のほうが支部長らしく見える。
その隣で、もう一人のスーツの男性が苦笑いしながら口を開いた。
「金星人のロアと申します。現在、支部長の佐々木と共に、惑星人の人事を担当しています。」
肩くらいの長さの金髪の髪、身長は170後半くらい、瞳の色は少し紫がかった美しい色をしていた。
佐々木支部長が再び前に出て、手を叩いた。
「さて、今日は新入隊員が全員そろった初日だな。
ここで軽く、自己紹介と、将来の希望部署を教えてもらおうか。」
希望部署か……。
オルビス・コードの組織構成は、以下のようになっている。
〈総監〉:組織全体のトップ
〈司令官〉:実働部隊を指揮
〈一般捜査官〉:魔法犯罪の捜査・逮捕を担当
〈技術担当官〉:装備や翻訳機などの整備・開発
基本的に訓練所を卒業した隊員は、まず〈一般捜査官〉に配属される。
希望があっても、実務経験を経た後で転属するのが通例だ。
誰から話すのか……と一瞬空気が止まったそのとき、
「舘内朋佳です。希望は、一般捜査官。よろしくお願いします!」
朋佳が先陣を切った。
続いて、小林兄弟が続く。
「小林拓斗。一般捜査官希望。」
「小林大羽。……一般捜査官希望です。」
私は深呼吸をして、一歩前へ出た。
「青木美空です。希望は一般捜査官です。」
続いて、視線は新たな3人──惑星人の同期へと向けられた。
「あ、俺たちの番か。カイです。海王星出身で、今のところ一般捜査官希望です。
これからよろしくね~。」
海の底のように深い青色の髪と瞳、少し垂れ気味の目元にあるホクロが特徴的なカイは、身長180cm近いだろうか。その軽い口調は、どこか掴みどころがない。
カイは、隣に立つ少女に「ルシア、話せそう?」と声をかけた。
彼の声に応えるように、少女が小さな声で口を開く。
「えーと、ルシア。金星出身。希望とかは……よくわからない。」
ウェーブのかかった金髪のボブヘア、茶色と金色が混じり合ったような瞳、人形のように長いまつげが印象的なルシアは、身長140cmほどの小柄な少女だった。
そして、最後に残った青年と視線がぶつかった──
褐色の肌、暗い赤と黒が混じり合った長い髪を一つに束ね、左右で色が違う瞳、身長はカイと同じくらいだろうか。まっすぐに見つめられた気がしたが、すぐに目を逸らしてしまった。
しばらくの沈黙のあと、彼は低く静かな声で言った。
「リアム。火星出身。希望部署は、特になし。」
初めて聞くリアムの声は、落ち着いていて深い響きを持っていた。
「よっし、全員言い終えたな。じゃあ模擬戦に…」
佐々木支部長が締めようとしたそのとき──
拓斗が手を挙げた。
佐々木支部長が眉を上げて、彼に目を向ける。
「どうした?」
拓斗は真っ直ぐに支部長を見つめたまま、はっきりと言った。
「部長。俺は、今回の人事に納得していません。」
──その一言で、空気がぴたりと止まった。