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Episode 2:双子

銀河警察──通称:オルビス・コード。

この組織は全国に存在し、新入隊員はまず各県の中でも最大規模の支部に配属される。

その拠点の場所は、どこも公式には公表されていない。

中枢機関が狙われるのを防ぐため、拠点は外見からはまったくわからない場所にひっそりと設けられている。


──コンビニの地下。

──マンションの最上階。

──あるいは、ただの一軒家のような建物の中……。


着任初日、私が立っていたのは、仙台市内でも有数の超高級ホテル・Wホテルの正面だった。金色の照明がガラス越しにきらめき、見るからに敷居の高そうな佇まいに、足がすくむ。

「……入りにくい。」


意を決して一歩踏み出すと、ホテルの中から美しく整った女性スタッフが出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ。」

その立ち姿は堂々としていて美しい。長い髪を夜会巻きにし、整った目元に控えめなアイメイク。さすが一流ホテルのスタッフだ……と見とれてしまう。


「ご宿泊でしょうか?」

我に返って、社員証を差し出すと、彼女は微笑みながら頷いた。

「こちらへどうぞ。」

そう言って案内されたのは、≪従業員専用出口≫と書かれた扉。

「中では、担当AIがご案内いたします。いってらっしゃいませ。」

彼女もオルビスコードの関係者なのだろうか...そんなことを思いながらドアを開けた。


目の前にエレベーターが現れ、頭の中に直接響くような声が聞こえてきた。

「これより、私《オルビス・コード専用AI:オルト》がご案内いたします。」

不思議な感覚に戸惑いつつも、オルトの案内に従ってエレベーターに乗り込む。

「まずは更衣室で制服に着替えていただきます。地下一階を選択してください。」

エレベーターが到着すると、広々とした白い廊下が広がっていた。地下とは思えないほど清潔で近未来的な空間だ。表示に従って更衣室へと向かう。

「社員証をタッチしてください。」

言われるままタッチすると、扉が自動で開き、個別のロッカールームが出現した。

扉が閉まり、再びオルトの声。


「社員証を鏡に向けてください。」

鏡に社員証をかざすと、鏡が光を放ち、制服が現れた。


──制服は、深緑のロングコート。

ウエストにはベルトがあり、コートの裾にはスリットが入っていて、動きやすそうだ。肩や胸には銀色の紋章や装飾が施されている。下は黒のスリムパンツ、足元は黒のレースアップブーツ。

ぴったりのサイズ感に、少しだけ気が引き締まる。


その時、更衣室に誰かがいる気配がした。

着替え終わって出ると、現れた顔に思わず安堵の息が漏れた。

朋佳(ともか)!」

メールで知って驚いたが、朋佳も同じ仙台支部だったのだ。

美空(みく)!まさかホントに一緒になるとは思わなかったよ〜。制服、似合ってる!」

朋佳(ともか)こそ!」

私たちは顔を見合わせて笑いながら、新しい制服に身を包み、更衣室を後にした。


再び頭に響くオルトの声。

「新入隊員の皆様は、会議室Bでお待ちください。青木美空(あおきみく)さん、舘内朋佳(たてうちともか)さん、2名をご案内いたします。」

頭に直接響いてくる、オルトの声。

私たちはに指示に従い、白く長い廊下を進んでいった。


「会議室B」と書かれたドアを開けると、大学の講義室のような部屋が広がっていた。

そして前方には、すでに2人の新入隊員が座っている。


顔がそっくりな2人──小林拓斗(こばやしたくと)小林大翔 (こばやしひろと)


訓練生時代から有名だった双子の同期だ。

顔立ちはほぼ同じ。切れ長の目に高い鼻。背丈もほとんど変わらない。

一見して見分けがつかないが、よく見ると雰囲気が少し違う。

弟の大翔 (ひろと)は、黒髪で前髪を斜めに流したマッシュスタイル。柔らかく整った印象。

一方、兄の拓斗(たくと)は黒髪のショートヘアをワックスで無理やり固めたような髪型。どこか刺々しさを感じる。


2人とも訓練生時代は、成績優秀だった。

卒業試験では拓斗(たくと)が9位、大翔 (ひろと)が11位。上位10%以内に入れば、普通は東京本部の配属になるはずだ。それなのに、なぜこの仙台支部に...?


「よっ!」

朋佳(ともか)が声をかけると、大翔 (ひろと)の方が「よっ」と軽く手を挙げた。

「まさか、あんたたちと一緒とは思わなかったわ。」

「まあ、そうだね。これからよろしく。」

名札をちらっと見ると、返事をしたのは弟の大翔 だった。

「こっちは青木美空(あおきみく)。訓練所ではあんまり話す機会なかったよね。」と朋佳が紹介してくれた。 慌てて2人に向かって、 よろしくお願いしますと頭を下げる。

大翔 (ひろと)は柔らかく微笑み、「よろしく」と返してくれた。

しかし、その隣──兄の拓斗(たくと)は違った。

机に頬杖をつき、貧乏ゆすりをしながら、こちらを一切見ようとしない。

大翔 (ひろと)が声をかける。

拓斗(たくと)、同期だって。」

ようやく拓斗(たくと)が顔を上げたが、目は合わない。

「おう、よろしく。」

それだけだった。

「ごめんね、二人とは幼馴染なんだけど、拓斗は昔からちょっと難しい性格で……気にしないでね。」

朋佳(ともか)がそっと私に耳打ちした。


訓練所時代、拓斗(たくと)は問題児と噂されていた。

優秀だが協調性に欠け、グループ訓練中に仲間に暴言を吐いたこともあるらしい。

(この人は、なるべく刺激しないようにしておこう……)

心の中でそっと決意する私だった。

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