サーカスのような渋谷での死闘⓵
山田浅右衛門VSジョン・ゲイシーの戦いに火蓋が切って落とされた。落とされた火蓋がどのようにしてサーカスの渋谷を魅せるのか楽しみにしてください。
パァァン
クラッカーが渋谷中に鳴り響いた。渋谷の見た目は異常である。青い空の下には似合わない派手な装飾に包まれた109や東口の駅前広場にはなぜか象がいる。まさにサーカス小屋である。そして中心のスクランブル交差点はサーカスの会場のようになっている。山田が状況を確認するために少し動きが止まっている時にゲイシーは動き出した。
「プププ、我は道化。汝は観客。観客を魚の目の如く驚かせること道化の要。我!!嘲虐道化に扮装する!!」
次の瞬間、紅白の段幕がゲイシーに降りてきた。そしてその身を包む。そして気づいたらゲイシーの姿はピエロに変身していた。
「さぁ!!ショータイム!!」
嘲虐道化 愉快な第一幕
「まずは楽しい玉乗りだよ!!楽しんでくれよ。山田くん!!」
ポン
軽快な玉乗り
ゲイシーは自ら罪恩で巨大な鉄球の上に乗っていた。そのまま鉄球はゴロゴロという重く渋い音を立てながら移動を始めた。そしてゴロゴロという音が徐々に速くなりゴゴゴゴゴという音を立て始めたと思っていたら、鉄球が山田に向かって突っ込んで来たのだった。それも間合いが近くだった。
「なっ!!しまった未来の東京にみほれていたら。」
スルッ バゴォォオン
鉄球の横を通ることで危機一髪で回避した。しかしハチ公が粉々になっていた。
『ゲイシーが大玉に乗りこうげきをした!!しかし間一髪で浅右衛門は避けてしまった!!ただギリギリでしたね一瞬でも遅かったら試合終了していましたよ。』
『いや、違いますよ、ミミーくん。あれはおそらく最小限の動きで避けたのではないでしょうかね。』
『なぜですかね?』
『おそらく、避けた先に大玉が来たら確実に死亡するからじゃないですかね。引きつけたのですよギリギリまでね。』
『なるほど。』
(一番恐ろしいのはその判断を躊躇なく実行に移したところかな。)
場所が変わり、神側スポンサー席には閻魔大王がお茶を飲みながら、死闘を眺めていた。
「やぁ!!閻魔大王。やっぱりいいね!!人間が争うところを見るのは楽しくてしょうがないよ。」
緑や赤などの派手な見た目をした明るい声をしたその神は閻魔に声をかけていた。
「ウェウェコヨトルか。そういえばゲイシーのスポンサーはお主じゃったのう。お前みたいな争いを見るのが好きな神がなんでバーサーカーみたいな奴ではなくゲイシーを選んだ?」
「そりゃ、アメリカで最も愉快な殺人鬼だったからだよ。一番面白そうじゃんそんなやつに力を与えるて!!」
「そうか。お主らしいの。」
「ちなみに閻魔はどうして彼を選んだの?」
「あいつが日本の中で最高傑作の首切り役人だったからかの。」
閻魔大王はこの死闘を楽しむように見ていた。
「ハハっよく避けたね。でも次は避けられないよ。楽しい楽しいジャグリングだよ!!」
鉄球の上にいながら、ケタケタと笑っていた。そしてポンッポンッとナイフやビンなどがゲイシーの手に出現した。
爽快なジャグリング
ゲイシーはジャグリングを始める。色とりどりのナイフや淡い色の瓶がゲイシーの目の前をクルクルと回っていた。いくつかのナイフや瓶が空高く飛んでいった。しかし浅右衛門は刀も抜かず不動で立ち尽くしていた。すると広場の石道にナイフが半分ほど刺さった。瓶が落ちて粉々になって割れる。まだ山田は動かない。そして目の前にナイフが落ちてもまだ動かない。そして自分と重なるところに瓶が落ちてくる。するとスーーーと動いた。
スーーパリッントットットッンスーートッパリッンスーーーーーパパリッンスーートトッ
(ナッ、避けるのかよ。この瓶とナイフの雨を散歩のように軽やかに歩いてやがる)
パリッントットットッンスーートッパリッンスーーーーーパパリッンスーートトッスー
(避けるな。来るな。離れろ!当たれ当たれ当たれ!!)
トットットッンスーートッパリッンスーーーーーパパリッンスーートトッスーパリッン
ゲイシーに焦りの感情が浮かぶ。それを布で隠れたいる冷めた目で見た山田は無言で行動を移した。
スーーートッパリッンパパリッントトッスーーパリンパリンパリンパリンパリンパリン
攻撃にも焦りが見え始める。最初の技巧に走った攻撃ではなく、暴力をそのまま投げつけるような攻撃に変化していた。
「くそっ!!溶けちまえ!!」
痛快な切り札
ゲイシーは上空に残っていたナイフを投げつけた。すると上空でパリッンパリッンという音が鳴り響いた。
ヒュウウ……ズシャアァアァアァ
ゆっくりと液体が落ちてくるように見えた。それがゲイシーの鉄球からニメートルほどが液体の降水地域になっていた。がそれを突き抜けるように浅右衛門は突っ込んで翔んでいた。
ジュゥゥゥアァァアァァァ
「グッ・・」
浅右衛門の顔が歪む。足の腿あたりが焼け爛れていた。しかしそんなことお構なしに鉄球へ飛び乗った。
『激戦の末、両者鉄球の上で向かい合った!!凄まじい戦闘でしたねニャルラトホテプさん。』
『そうですね。ゲイシーの猛攻を掻い潜って近づいた浅右衛門の度胸と技術には目を見張るものがありますね。』
『しかし、どうやって見切ったのでしょうか?』
『さぁ?』
鉄球の上では両者胸を合わせる形で向かい合っていた。
「日本のサムライはすごいね。僕の技を全て見切るとは・・それが神様にもらった力かい?」
「神にもらった力?まだ罪恩は使ってないぞ。これは己・・・いや山田浅右衛門の力だ。」
「what?!・・・・なにいってんでか!!」
隠し持っていたナイフで不意打ちを仕掛けるが刀の柄頭がナイフを宙へ上げた。
「天網恢恢疎にして漏らさず。私の眼は悪意を見る。」
それは処刑人である山田浅右衛門の秘技である。処刑をする時、執行される側は恨み、暴言、逆恨み、呪い、などの悪意をぶちまけるのだ。中にはそれをしないものもあるが、しかしそんな理不尽な憎悪を介錯人は一挙に受けてしまう。そのために精神を壊してしまうのだ。山田浅右衛門たちは考えたこのまま長くこの家業を続けるには悪意を防がないと意味がないということに、そしてこのような経緯が重なり編み出したのが悪意を見る力、山田浅右衛門たちはそれは半紙に染みる墨のように見えるために“濁世墨眼”と名付けたのであった。
「まぁ、お前みたいな奴は骨の髄まで真っ黒だから見る時にだいぶ困るのだが、飛び道具を使ってくれたおかげでだいぶわかりやすかったぞ。」
「はぁ?ブゴッ」 ドッサ
鞘の打撃を受けて、ゲイシーが鉄球から吹き飛ばされる。そのまま自身がボロボロにした地面に体を叩きつけた。そしてその地にはさっきまで降っていた酸の水溜まりができていた。
「痛!!ちくしょう、酸が腕に!痛え!!」
「因果応報だな。自身がおこなったことに腕を焼かれた。」
「ウルセェ!!お前なんか今はただの人間。俺は道化だ。そこに圧倒的な差があるのだよ!!」
「何を言っているのかよくわからんが、確かに俺だけ罪恩を使わないのは不平等だな。」
すると浅右衛門は刀を前に出した。そして刀身をゆっくりと抜いてみせると、鈍い光った刀身に己を映した。
「我、介錯無道に則り執行する。」
浅右衛門の周りに首が切られて血が吹き出している死装束を着た数名が現れる。そしてその首の上には蝋燭が置いてあった。その蝋燭の灯火が一斉に消えたと思うとその遺体だが溶けて黒い液体となり浅右衛門を包み込んだ。
次回はいつになるかわかりませんが絶対に執筆しますのでよろしくお願いします。(多分今回と同じように3000文字のペースで書いていく予定です。)
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