表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史を変えたあの日の続きを ~もう一度だけ居させてください~  作者: 株式会社minazukiグループ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/5

肆ノ話:外の世界

「わぁ...翡翠さん見てください!すごいですよ!」

「お、おう」

 なぜこんなことになっているかと言うと、


<<<数十分前>>>


「そう言えば、花宮。お前、夕食は...」

「あ、申し訳ございません。すぐ準備に、」

「あぁ、いや。この家には食材がほとんどなくてな。これから出かけるんだが、お前も来るか?」

「え?私もついて行って良いのですか?」

 かえって来たのは衝撃的な答えだった。

「...いや、お前...街に行ったことは?」

「いつもは、他の使用が出ていますので、私は外に出られないんです。」

と、静かに語った。

 正直そんなことだろうとは思っていた。花宮家と言えば、名家の中でもそれなりの地位に居る家だが、娘を家から出さず、しかも使用人同然に扱っている。

 恐らく、もともと娘を嫁に出すなんて考えてなかったんだろう。

「そうか...なら、早く支度をしろ。行くぞ。」

「はい。かしこまりました。」


で、今に至ると言う訳だ。肝心の花宮はと言うと、

「わぁ...」

色々と街のものに目を輝かせている。

「...まるで猫だな。」

「あ、申し訳ございません。私ばっかり楽しんでしまって...」

「いい、気にするな。じゃー、食材を探すぞ。」

「はい」


「翡翠様は、何か食べたいものはありませんか?」

 夕餉の食材を探している時だった。花宮は俺にそんなことを訪ねてきたのだ。

 俺は少し考え、

「...そうだな。お前は、食いたいものはないのか?」

 そう聞くと、

「え!?あ、えっと...」

「...やっぱりか」

 案の定、俺の予想は当たっていたらしい。家ではほとんど飯を食わせてもらえなかったのだろう。

「も、申し訳ございません」

「なぜ謝る。お前は何もしていないだろ。」

 どうもこいつはすぐに謝ってしまう癖でもあるらしい。

 だが、これに関しては俺がどうこう出来る問題ではない。生まれた環境、育っていく過程、親の対応、周りの対応、すべてにおいて、ついていなかった、とまとめるしかないのだ。

「そうだな、今日は肉にしよう。お前が来た祝いもかねて。」

「え、いや私は」

「遠慮するな、何でも言ってみろ。」

 俺は花宮のほうに目をやった。だが、やはり本人は浮かない顔をしていた。

「...」

「...まさかと思うが、普通の食事は摂っていたんだよな?」

「...」

「はぁ...今まで何を食べていたんだ...」

「少量のお米と水です。」

「それはほぼ飯ではねぇよ...」

 はっきり言う花宮に対し、俺はあきれてしまった。ひとまず花宮を連れ、買い物を済ませた。

「肉を買うなら、行きつけの所がある。そこに行くぞ。」

「わかりました。」

俺が肉屋へ歩き始めると、その後ろを歩くように花宮がついてきた。

まるで犬のようだな。

そんなことを考え、花宮を前に出した。

「どうかなさいましたか?」

「...いや、後ろを歩かれるのが慣れていないだけだ。」

 そう言うと、花宮は不思議そうにしていた。




「あ!翡翠の旦那ぁ!最近見なくなったから心配しましたよ。」

「あぁ、悪い悪い。」

 俺たちが肉屋に行くと、一人の若いやつが話しかけてきた。

「最近はここらも物騒になって来てるし、翡翠の旦那も気を付けてくださいよ」

「あぁ、わかってるよ。おやっさんは居るか?」

「あぁ、じいちゃんなら奥の部屋に...えぇ!?あれあれあれあれあれあれあれ?旦那ぁ、そのお嬢さんってもしかして?」

「まったく、さっさとおやっさんを呼んで来い。」

「へいへい。」

 そう言うと、そいつは奥へと走っていった。

「悪かったな、驚いただろ。」

「い、いえ、私は大丈夫です。あの、さっきの方は...」

「あぁ、あいつは一ノ(いちのせ) 雷太(らいた)。ここの肉屋の跡継ぎだ。まだ若いが、腕は確かな奴だ。」

「仲がよろしいんですね。」

「まぁ、あいつの爺さんからの付き合いだからな。」

 そんな話をしていると、

「これはこれは、お待たせしました。」

扉の奥から現れたのは、細々とし、髪が白く、腰が曲がり、弱弱しい老人がやって出て来た。

「おやっさん、随分と老けたな。」

「ははは...残念ながら、翡翠さんとは生きられる時間が違いますから...」

 そう言うと、おやっさんは花宮の方を見た。

「...」

「あ、あのぉ...」

「おぉ、これはこれは、申し訳ない。翡翠さん、そちらのお嬢さんは...」

「あぁ、一応俺の所に嫁ぎに来た奴だ。」

「は、初めまして。花宮 彩月と言います。」

「これはこれはご丁寧に、わしはここの3代目店主、一ノ(いちのせ) 陽炎(かげろう)。ただの老いぼれじゃ。」

と、おやっさんは軽く挨拶をした。ただの老いぼれとは、上手く言ったもんだ。

「それにしても、花宮家のお嬢さんとは、良い嫁さんを手に入れたんじゃな。まぁ、翡翠さんのことじゃ、結婚の年まで引き取っとるだけじゃろ?」

「...たく、なんであんたはそうもこっちが考えてることがわかってんだ。」

「ははははは、長年の感っちゅうやつじゃ。」

 おやっさんの感は正しい。能力でもなんでもない、俗にいう天性の才ってやつだ。それなのに、今ではただ死を待つだけの老人だ。

「それで、今回は何をお求めで...」

「あぁ、いつものを二人分頼む。」

 そう言うと、すでに知っているかのように、品物を渡してきた。

「...はぁ、はいはい。お代はつけといてくれ。」

「知っていますよ。」

そう言うと、俺たちは店を後にした。


「不思議なおじいさんでしたね。」

 家に帰っている途中、花宮がそう言ってきた。

「まぁ、あの勘の良さには少しビビるがな。」

 そんな話をしていると、

「...あ、あのぉ...」

 と、よそよそしく話しかけてきた。

「ん?どうかしたか?」

「いえ...」

「...何か聞きたいことがあるなら言え。遠慮はするな。」

「も、申し訳ございません。」

「謝らなくていい。」

「も...はい...」

「それで、何が聞きたかったんだ?」

「いえ...先ほどおっしゃっていた、結婚の年まで引き取るというのは...」

「なんだ、そんなことか。」

「...やはり、お邪魔でしょうか...」

「なぜそうなる。」

 どうやら、変な誤解を生んだらしい。花宮は、結婚の年になったら捨てられる。そう思ったらしい。

「無理に結婚しなくて良いと言うことだ。お前が不満に思うなら、ここを出て行ってもらっても構わない。」

「そ!そんなことは!」

「これはお前の人生だ。」

俺はゆっくりと、花宮の方を向き。


「人生は、無限にある訳ではない。必ず終わりは来る。ただそれが早いか遅いかだ。それまでに、自分が納得できるような生き方をしろ。」


そう、言葉を漏らした。


今回はご愛読ありがとうございました!

これからも、書き続けていきますので

よろしくお願いします('ω')ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ