表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/3

壱ノ話:不憫な世界

「おい!早く火を消せ!」 「中に人は!」

「助けてください!」 「こっちにもっと水を!」

「近隣の人の避難を!」 「水はまだか!」

「早くしないと燃え移るぞ!」 「一旦下がれ!」


「...だんな...さま...」


「...ありがとう...ござい...ま...」


この言葉が、最後に聞いた言葉だった。




「がはっ!」

「...はぁ、さっきからの気配はこいつだったか。」

最近、長いこと気配を感じていたが、この強さは下っ端か、もしくは本当に力に恵まれなかったやつか。


ここは、実力のあるものだけが生きていられる世界。強いものは平穏に暮らし、弱いものは物乞いをする生活を送る。もちろん武器を持っていても捕まる訳でも無い。どんな一般人も持つことはできるが、武器も技術も、結局は金がかかる。


 この世界で稼ぐのは難しいことでは無い。だが、

「やめてください!」

「誰がここで商売して良いって言った!?」

「お願いします。お金が必要なんです。」

 そう、稼ぐ方法は色々あり、一般的には商売をすることで金を稼ぐ。だが、実力が無ければ売り出す場所の許可すらもらえない。


 ほかに方法があるとすれば、

「おい!」

「離せ!離せよ!」

「お前さん、またうちの店から品物盗んでいきやがって!」

 そう、盗みだ。

 ほかにもスリ、窃盗がある。一度に入る額はデカいが、その分命を張ることになる。つまり、この世界では人を蹴落としてでも自分の生活をつかみ取る必要があるのだ。

 それが、人を殺すことが必要だとしても。


 今はただの散歩として、町まで降りてきたのだ。だが、さっきも見た通り、公共の場だからと言って必ずしも安全と言う訳ではない。とは言っても、こんなことが起こるのはそこそこ稀だ。何にしろ、もっと上手くやるのが定石なのだ。


 と、そんなことを考えながら歩いていると、

「痛ってぇなぁ...」

「ん?」

一人の男が突如とぶつかって来たのだ。

「あぁあぁ、これ折れてるかもしれねぇなぁ。」

「...そうですか。気を付けて歩いてくださいね。」

 俺はその場を去ろうとした。その刹那、さっきの男が俺の腕を掴んできたのだ。

「...なんですか。」

 俺がそう聞くと、少しイラだった様子でこちらを睨みながら、

「...3000。3000文で許してやるよ。」

 まぁ、初めからこいつの魂胆はわかっていた。ここら辺では珍しくもない、ただの当たり屋だ。わざと当たりに来て怪我をしたフリをし、多額の金を示談金と称して払わせ、払えない奴はとことん絞り取る。最近では見慣れた手法だ。

「3000ですかぁ。もう少し、安くなったりしませんか?」

「は?なめてんの?」

「いやいや、なめてないですよ。今、手持ちが少ないものでして」

「...そ、へぇ...」


「じゃー、死のうか。」


 男がそう言うと、隠れていた手下らしき奴らが飛び出してきた。どうやら、今回は当たり屋の中でもかなりの過激派を引いたらしい。

「...そうですかぁ。」

「どうだ?少しは払う気にはなったか?」

 どうやら、相手は相当な自信を持っているらしい。

「...ふ」

「ちっ、何笑ってんだよ!」

男は怒りが隠せなかったのか、刀を抜き、切り付けてきた。その刹那...

「がぁ!...い...」

「てめぇ!」

 俺は切りかかって来た男の腕を切っていた。騒ぎを聞きつけてか、俺たちを囲うように傍観者が増えていった。

「貴様、一体何者だ!」


「...俺は...」



「最強のアウトローさ」



 俺がそう言ってから、時間はかからなかった。当たり屋どもの息は止まり。立ち続けているのは、俺だけだった。俺は傍観者をかき分け、家に帰ることにした。


「...はぁ、やっと帰って来た。」

 ここは俺の屋敷だ。と言っても、俺以外に住んでいる奴はいない。使用人も、親も、家族も。ただ何も考えず、風呂に入り、床につく。それを繰り返すだけの日常だ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「痛っ!」

部屋中に鋭い音が鳴り響いた。

「まったく...夕飯の支度すらまともに出来ないなんて。」

「おい、他の者が作った飯を持ってきなさい。」

 父と義母が、そう私に言いつけた。

「申し訳ございません。」

 私は謝罪をし、その場を後にした。


「大丈夫ですか!?彩月お嬢様。」

「えぇ、何も心配は要りません。」

 女中はいつも私を心配してくれる。ほかの使用人たちも、名家の娘がやることでは無いと言ってくれるが、だからと言って何もしていないと、ごくつぶしと言われ殴られ、罵倒される。私にはこれしか出来ない。


いや、これしかないのだ。


 ご飯も、お風呂にもまともに入れるはずもなく、冷たい水で湯あみをし、夕食の残りを一口食べ、ただ静かに眠りに付く。

 こんな日々を、私はずっと送っている。



「...お母さま...」



 そんな日だった。

「お嬢様!」

「はい、なんでしょうか。」

 庭の掃き掃除をしていると、女中が声をかけてきた。

「旦那様がお呼び出しです。」

「お父様が?」

 なにやら緊急の呼び出しらしい。正直、なんで呼び出されたのかがわからない。また、理不尽に殴られるのだろうか。行きたくないが、行かないと殴られる。行っても殴られない保証なんてない。

 小さな期待を持ち、言われた部屋に行った。


「やっと来たか、そこに座りなさい。」

 そこには奥様も居た。

「単刀直入に言うが、彩月。お前には、他の家に嫁いでもらうことにした。」

今回はご愛読ありがとうございました!

投稿は遅いかもしれませんが

     よろしくお願いします('ω')ノ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ