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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会一日目

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一日目の順位発表

 竜種を仕留めて数分後、監督者たちが選手らを保護しようとアルムたちの元まで訪れた。


「マリア先輩の容態(ようだい)はどうなんですか?」


「……命に別状はありません。軽い火傷は見受けられますが、しっかり治療(ちりょう)すれば完治するでしょう」


「魔力とか体の内部とかに問題は見当たらないんですか?」 


 アルムは監督者の言葉を信じようとはせず、不安な面持ちで問い詰める。


「それは我々の領分(りょうぶん)ではありません。ですがベルモンド王国の医師たちに任せれば、無事なことが確認されるでしょう」


 監督者は彼をフォローし、気絶したままのマリアを運んでいった。


「……無事なら良いんだけどな」


(額の紋様(もんよう)はすぐに消えちまったけど、結局あれは何だったんだ? あの竜種が異様なほどにマリアを狙っていたようだし、それも何か関係が……)


「まあそれはあとで良いか」


 アルムは彼女を殺さなかったことを心の底から安堵(あんど)し、大きくため息を吐いた。


「アルムっ!」


 森の奥からトールズが焦った様子で駆け寄って来る。


「どうしたんですか、トールズ先輩? そんな慌てて」


「はぁ、お前が通信を切ってからなんの報告も寄越(よこ)さねェからだろ――――じゃなくて、マリアは無事だったか⁉」


「ええ、意識はありませんが大きな外傷は見当たらなかったので、王都で診てもらうそうです」


「そうかぁ、良かった……」


 アルムと同様、彼も安心した表情を浮かべると深々と頭を下げた。


「本当に済まなかった!」


「え、ちょっと――――」


「お前は自分の仕事を全うしたのに俺は彼女を逃がし、あまつさえ竜種の元へ行かせてしまった! 今回は運よく無事だったから良かったけど、取り返しのつかない事になっていたら……俺は――――」


「分かりました! 分かりましたから頭を上げて下さい……」


 トールズが頭を下げる姿を大衆に見てほしくなかったアルムは謝罪を受け入れる。


「確かに驚きましたしたが、貴方は手を貸す義理が無いのに作戦に乗ってくれたんです。マリア先輩も無事なんですから、そんな自分を責めなくても良いんですよ」


 そう言ってアルムは手を突き出し、山道で交わした握手を求める。


「マリア先輩を救出して竜種を倒せたんです、大成功じゃありませんか」


「……ありがとう」


 トールズも笑顔を見せ、固い握手を交わす。


「よくやったぞ二人ともォ!」

「思っていた展開から大分違うけど最高だったぜ!」


 その光景を見ていた会場は歓声を上げ、彼らに大きな拍手を送った。


「アルム選手とトールズ選手ですね。百キロ走(ハンドレッド・ラン)は中止することになったので闘技場までお戻りください」


「……えっと、競技はどうなるんですか?」


「それは向こうで伝えられることになります。今は指示に従って下さい」


 この競技が本命だったトールズは聞き出そうとするが、監督者は淡々とした様子で答える。


「とりあえず勝負は後でにしましょう」


「……ああ、そうだな」


「あ、そう言えば」


 前を歩いていた監督者は思い出したかのように振り返り、崖のほうを指差した。


「あちらの方々を解放していただけますか?」


「あちら……?」


 そこにはアルムの鎖で縛り付けたラビスとスベンが助けを求めていた。


「す、すみません! 今すぐに……」


 竜種とマリアの事ですっかり忘れていたアルムは駆け足で向かった。


「昨夜に引き続き、彼を助けてくれてありがとう」


 レイゼンは会場の一室で他校の生徒に感謝を告げる。


「先生のご指示であれば、いつでも()せ参じますから!」


「先生、さっきの槍は俺のお陰です。こいつは何もしてませんよ」


「ちょっと、ライオス! 嘘つかないでよね、誰があんたの馬鹿力を制御したと思ってんのよ!」


「俺の神技で飛ばすから必要ねェって言ったろ! タリオナこそ手柄横取りすんなぁ!」


 顔を赤らめる彼女にケチをつけると早々に口喧嘩が勃発(ぼっぱつ)した。


「なんでお前たちは仲良く出来ないんだ……」


「ライオスの性格が悪いからです!」

「タリオナの性根が腐っているからだ!」


 レイゼンの素直な感想に両者は同時に答える。


(ほんとうに、仲が良いのか悪いのか分からないな……)


「あまり騒ぐと密会の意味が無い、良い子だから大人しくしなさい」


「はい……」


「分かってますよ」


 本題に入ろうとするレイゼンに二人は渋々椅子に座った。


「ではグレニア王国内での裏社会(スタンドル)、そして『死神教』の動きについて報告してくれ」 


 アルムたちが会場へ帰還する間にレイゼンたちは話し合いを開始した。


 ***


百キロ走(ハンドレッド・ラン)の選手全員が会場に集まったところで大会運営の方から連絡があります!』


 サイベルの言葉のあとに拡声魔法が刻まれたメガホンを手に取った。


『選手の皆さん、まずはお疲れさまでした。竜種の乱入があったとはいえ競技の一時中断は選手だけでなく、学園関係者を不安にさせたことを深くお詫び申し上げます』


 大会運営者の一言目は激励、そして謝罪だった。


『しかし監督者と優秀な選手たちの対応によって、死者がゼロだったことは不幸中の幸いだったと考えております。休憩を入れた後、競技を再開しようと考えておりましたが……競技の趣旨(しゅし)から大きく逸脱(いつだつ)した行為、そして怪我人の数、なにより他の竜種が潜んでいる可能性を(かんが)みて競技を継続して行うことは極めて困難だと考え、百キロ走(ハンドレッド・ラン)は中止することに決定いたしました!』


「まじかよ!」

「集団リンチはヤバいと思ったけど中止って……」

「でも竜種が一体しか居ないとは限らないしな……」


 彼の発言に会場全体がどよめいた。


「ッ……」


 中止になると薄々勘付いていたトールズだが、悔しそうな表情を浮かべる。


「…………」


 そんな彼を見て、選手らを返り討ちにしたアルムは少しばかり罪悪感を(つの)らせた。


『しかし順位ポイントも無くなった訳ではありません。我々で厳粛(げんしゅく)に協議しあった結果、一時中断直前の立ち位置で選手たちに加点することが決定しました!』


 彼は一呼吸置いてから順位発表に移行する。


『まず百キロ走(ハンドレッド・ラン)一位走者、トールズ選手! 次いで二位がマリア選手! 立ち位置が同じでしたので同率三位がラビス選手! そしてスベン選手! 五位がアルム選手! 六位が――――』


 形はどうあれ一位を獲得できたことを喜んで良いにもかかわらず、トールズは無表情のまま結果を受け入れた。


『――――加点ポイント24位と定めていましたが、今回は特例で減点ポイントは撤廃(てっぱい)しゼロポイントとさせて頂きます。なお、この決定に異議(いぎ)を唱えても覆すことはできませんので、くれぐれも軽率(けいそつ)な行動は行わないようにお願いします。私からは以上です』


 連絡事項を伝え終えた彼は司会席を後にする。


「「「…………」」」


 規定通り加点ポイントが貰えて、減点ポイントは無くなり全ての学園が得をした。

 しかし誰一人として喜んでいる者は居らず、重苦しい雰囲気のまま初日の百キロ走が幕を閉じた。

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