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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会一日目

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最悪なシナリオ

(はやく……あの御方を連れて行かなくては――――)


 竜種は口から血を吐き出しながら命令を達成するため立ち上がろうとするが、頭上から三本の長槍が降りかかる。


「――――――――」


 一本目は咄嗟(とっさ)に回避するが続く二槍、三槍は間に合わずに後ろ足と前足の付け根に突き刺さってしまった。


「【黒器創成(くろきそうせい)】」


 アルムは次々に槍を生成すると貫通力を高めるため魔力を纏わせる。


(トールズの脚なら撒くことは可能だ。俺はこの場で援護しながら時間を稼ぎ、タイミングを見計らって竜種を狩りに行く!)


「【黒憑(クロウヴィル)】」


 アルムは十分に魔力で被膜(ひまく)したそばから竜種に目掛けて再び投擲(とうてき)した。


『先程まで後手に回っていたアルム選手ですが、マリア選手が離脱してから一転(いってん)! 遠距離投擲(とうてき)が容赦なく竜種を襲う!』


『竜種の外皮は鋼を上回るほどの硬度を有するため、原則として多種多様な魔法攻撃を展開するはずなのですが、彼にその戦術は必要ないみたいですね』


 竜種が倒されるのも時間の問題だと確信したサイベルたちは各々の職務(しょくむ)を遂行する。

 また司会者だけでなく、試合を観戦していた人々も安堵(あんど)の表情を浮かべ、中断された競技を心配する者すら居た。


「――――あの、結局わたしたちはどこまで逃げるんですか?」


「分かんねェけど、竜種を息の根を止めるまでは走り続ける予定だ!」


 トールズの両手に抱きかかえられながら状況を説明した。


「殺すんですか? あの竜種を……!」


「当たり前だろ! 竜種なんて珍しいだけで生け捕りにする価値はないからな!」


 世間一般的な見解(けんかい)を述べるトールズに彼女は納得できない様子を見せる。


「……駄目です」


「んぁ? 何か言ったか?」


「殺しては駄目です! トールズさん、私を竜種の下へ連れ戻してください!」


「……錯乱(さくらん)するのも無理はねェか」


 理解不能の発言をするマリアに対してトールズは同情の目を向け、そのまま走り続けた。


「私は正気です! お願いですから戻ってください!」


「正気なら尚更(こえ)ェよ! 何をどう考えたら戻ろうなんて思い付くんだ! もう話さなくて良いから大人しくしてくれ……」


「声が聞こえたんです! あの竜種と意思の疎通(そつう)が出来るかもしれないんです!」


「…………」


 必死に訴える彼女だが、会話にならないと判断したトールズは無言を貫く。


「……分かりました」


 そして説得できないと判断したマリアは空に向けて手を上げ、構築式を展開した。


「【召喚(サモン)】!」


「えっ?」


 構築式から大熊(グロウズリー)が姿を現すのと同時に彼の腕の中から抜け出した。


「――――が……あぁ……!」


 トールズは回避する間もなく大熊の巨体に圧し潰れれてしまう。


「本当にごめんなさい……!」


 彼女はぺこりと頭を下げ、竜種の下へ向かって走る。


「おいっ! ちょっと待て――――くっそ(おめ)ェな!」


 大熊を退()かそうと踏ん張るトールズだが、怪力とは言い(がた)い彼では数百キロの大熊を動かせなかった。


「ふぅ……投擲槍じゃ決め手に欠ける、魔黒閃(ビルスター)(しま)いにするか」


 周囲の安全が確保されていると知っていたアルムは躊躇(ちゅうちょ)なく、竜種に指先を向ける。


「あっ! 一応、許可は取って置こう」


 竜種の処遇(しょぐう)を独断で決めてはいけないと思い、アルムは伝承石で付近の監督者に意見を求めた。


「何やってんだろう、わたし……」


 客観的に自身の言動を振り返り、マリアは自己嫌悪に(さいな)まれた。


召喚獣(グリちゃん)の声を聞いたすらないのに、野良(のら)の魔物の声が聞こえたなんて……でもあの声主は間違いなくあの竜種、怖いけど確かめなくちゃ!)


「間に合って……!」


 彼女は竜種が生きている事を願いながら、小さい体で懸命(けんめい)に走る。


(あの御方が近付いて来ている……! 早く連れて行かなくては……)


 うつ伏せていた竜種はマリアが接近している事に気が付き、止まっていた足を動かした。


「――――確認とれました、竜種は始末して問題ないとのことです」


「分かりました、ご協力ありがとうございます」


 言質が取れたアルムは通信を絶ち、再び竜種に視線を向ける。


「……まだ動けたのか、流石の耐久力(タフネス)だがこれで終わりにしてやる」


 照準(しょうじゅん)を竜種に合わせ、彼の指先から黒い熱光線が放出された。


(動け! 動け! 動けェ――――!)


 複数箇所に穴を作られた大きな両翼(りょうよく)を広げ、間一髪のところで逃れる。


(まだ生きようと抗うか……ただの生存本能か、それともマリアを狙っているのか)


「どちらでも良いか、つぎで仕留める」


 アルムは飛行ルートを導き出し、人差し指の向きを変えた。  


「……生きてる! 良かったぁ」


 森の上を飛んでいる竜種を見つけ、マリアはホッと胸を撫で下ろす。


「ねぇ、少し危なくない?」


 対して会場内は不穏な空気が(ただよ)い始める。


「彼はマリアさんが近くに居る事を知らないはずです……」

「待てアルム、今は撃っちゃ駄目だ……」

「誰かアイツに知らせてくれ!」


 救出した仲間を自分の手で殺した、という最悪なシナリオを想像してしまった彼らは焦った様子で大会運営者に(うった)える。


「早くアルム選手に伝えるんだ!」


「は、はい!」


 大会運営者らは取り急ぎ、監督者を通じてアルムに伝えようと試みるが間に合う可能性は限りなく低い状況だった。


「――――――――!」


(さぁ! 私たちの里へ帰りましょう!)


 マリアを見つけた竜種は地面に着地し、彼女に語り掛ける。


「私たちの里? 貴方って一体――――」


「――――【魔黒閃(ビルスター)】!」


 しかしマリアの質問を待たずに遠く離れた崖からアルムは魔法を撃ち放った。

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