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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
大会始動

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応えたいもの

 俺たちは王城を離れて宿泊施設へと帰り、明日の開幕式に備えたり休息を取ったりと各々の個室で過ごしていた。


「――――ふぅ、これぐらいの怪我なら今日中に回復するだろ」


 俺は百キロ走(ハンドレッド・ラン)監督教師(バルテン)から貰った回復薬を飲み干す。

 怪我の度合いは軽めの打ち身と酷くても骨折程度、しっかりと休養を取れば明日の走りに影響はない。


「はぁぁ……」


 治癒(ちゆ)に生じる疲労を感じて俺はベッドに横になる。

 昼以降の調整時間の大半を竜種の目撃情報に使ったが、時間の割に得られた情報はどれも不確かなものばかり。まあそもそも実物の竜種を見た事が無いんじゃ、それらしい魔物としか言及は出来ない。

 一番信憑性(しんぴょうせい)があった情報だと、『山頂付近の岩窟(がんくつ)に入るのを見た』くらいか。長く大きな尻尾や羽が見えたようで身体的特徴は一致している。

 その山域は明日の走行ルートに指定されているため、正体を確認しておきたかったが懇親会が迫っていて時間も無かった。


「せめて夜中に行けたら、なんて考えていたけどこの様だ」


 ベレス=ダーヴィネータ、競技練習中にその名を上級生が話をしていて耳にはしていた。

 凶暴(きょうぼう)かつ残虐(ざんぎゃく)な性格で自身の圧倒的な実力で逆らう存在をねじ伏せ、国王と同等の権力を有してしまったまさに『暴君』と呼ぶに相応しい男だと……。


「知ってはいたけど、想像以上の男だった……」


 お互い本気を出せない状況だった以上、勝率を導き出すのは難しいが今まで戦ってきた相手と比較するなら、レイゼンやアイビス……即ち、裏社会幹部に匹敵し得るかもしれない。


「最近はこんな相手ばっかだな――――ん?」


 個室ドアがノックされるとテイバンと思しき声が聞こえる。


「どうしたんです、ってミリエラ先輩⁉」


 ドアを開けると予想していたテイバンとミリエラの姿も見えた。


「私も居るんですけど! アルム君!」


 そしてマリアが怒った様子でドアの前に立っていた。


「みなさん揃って何の用ですか?」


 ひとまず部屋に入れたが人数分の椅子は無かったため彼女らはベッドに座らせ、俺は備え付けの椅子に座った。


「「「…………」」」


 しかし三人はお互いに顔を見合わせ、だれが先に話すのか牽制(けんせい)しあっているようだった。


「ではミリエラ先輩からお聞きします」


「……はい、エルヴィスさんの件はご迷惑をお掛けしました」


 指名すると先の一件に対して謝罪する。


「飲み物を掛けたんでしたっけ? あれだけ大勢の生徒が集まれば仕方ありませんよ。まああれ程大きな飛び火が飛んで来るとは思っていませんでしたが……」


「そうなってしまったのは俺がエルヴィス殿を説得できなかったせいだ! それにベレスとの戦闘中に加勢も出来ず……本当に申し訳ない」


 テイバンは何もできなかった自分を恥じているようで深々と頭を下げた。


「怪我こそ負いましたが、そこまでご自身を責める必要はありません。それにこの大会中に対戦することにはなっているので、むしろ手合わせできてラッキーですよ!」


「……知ってはいたが、お前は本当に強いな」


 俺はこれ以上テイバンが責任を感じないよう元気な様子を見せる。

 学園屈指の実力を有する彼があそこまで怯える理由は詳しく知らないが、おおよその見当は付く。

 

「……それで、マリア先輩はどんな用件で?」


「私は怪我の具合を見に来ました。でもその様子だと明日の競技に影響は無さそうですね」


「ええ、練習の範疇(はんちゅう)であれば何の問題もありませんが……他にも言いたげですね」


「……! はい、実はもうひとつあります」

  

 彼女から僅かな違和感を感じて尋ねるとゆっくり頷いた。


「……俺たちは席を外そうか?」


「いえっ! いやでも……だ、大丈夫です!」


 自信無さげな彼女の反応にテイバンたちは不安になりながらも居残り続ける。


「ここに着いた時にバルテン先生から、『怪我が酷くなければ明日は選手として出場する事を伝えて欲しい』と言われておりまして……」


「選手指名は競技当日の朝食で言われるのではないんですか?」


 無論、出場する事が確定しているのは嬉しい事だから文句は無い。

 だが事前に説明されていたことと違うことをするのは教師としてどうなのかと疑問の余地はある。


「正直言うと俺も去年の魔導大会で監督教師から前日に言われたんだ」


 俺の疑問は過去に経験したことがあったテイバンが答える。


「……それは競技の事に集中させるためですか?」


「そう言った意味もあるんだろう、それに何だかんだ期待されているんだと思う」


「期待、ですか……?」


 予想外な言葉に聞き返してしまう。


「ああ、二週間前の競技選考のときは上級生(おれたち)を抑えて全種目一位の成績を収めた。それに騎士団を救ったり王都を魔物から守ったりこれまでの活躍も含めて……みんな期待しているんだ。この三年間、一位の座に居続けるベレスを引きずり落としてお前が、エンドリアス学園の生徒が優勝してくれることを……!」


「副会長の言う通りです。全員が応援してくれている訳ではありませんが、心の内ではみんな期待しているのです」


「私も見てみたいです。魔導大会史上初の全種目出場、そして個人優勝を成し遂げる姿を……」


 テイバンが、ミリエラが、マリアが応援の言葉を語ってくれた。


 俺は自分の望みを叶えるために大会に参加した。

 しかしそんな動機で参加した俺を期待して、信じてくれる人たちがいる。


「……任せてください! 俺がその偉業を成し遂げてみせます!」


 彼らの信頼に応えたい、そう思えた。

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