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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
大会練習

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会場出発

 魔導大会当日、俺たち生徒や同伴する教師らは王城の一室に集められた。


「大きい構築式……」


 隣に並び立つラビスは部屋の中央に描かれた転移魔法の構築式を見て驚きの声を漏らす。

 魔導大会の会場まで王都から300キロ以上も離れており、馬車での移動では数日前から移動を開始しなければならなかったため、大会会場に往来(おうらい)する専用の魔法陣が刻まれたのだった。


「皆さんは魔法陣の内に入るよう並んでください」


 宮廷魔法師が指示を飛ばし、俺たちは学年ごとに整列した。


「よぉセロブロ、選手として出場できるか分からないけど、お互いにベストを尽くそう」


「…………」


 俺の前に整列した彼に話しかけるが一瞥(いちべつ)することなく、前を向いていた。

 まあ言い争ってから一か月、ほとんど口を聞いていないからシカトされることは予想できた。

 だがこの練習期間でセロブロの魔法力は目に見える程大きく向上していた。それは出場権を獲得するため、そして王侯貴族(じぶんたち)を軽んじた俺に分からせるために他ならない。


「冗談だよ、ベストを尽くしてお前に勝つ」


 先の発言は訂正し、思ったことを口にする。


「……勝つのは僕だ」


 返事は無いと思っていたがセロブロはそう言って不敵な笑みを浮かべ、再び前に姿勢を戻した。


「魔法を発動させます!」


 十数人の宮廷魔法師が魔法陣を取り囲んで魔力を注ぎ、微弱な光が灯された。

 転移先の座標が決まっているため、レイゼンが使用する魔法より消費する魔力は少ないが60人の選手候補生と6人の教員を合わせれば座標が決まっているなど無いに等しい。それは常人を凌駕(りょうが)する魔力総量が有した彼らを集めたとしても往復(おうふく)が限界だ。


「選手の皆さま、ご武運(ぶうん)を!」


 宮廷魔法師の彼は応援の言葉を送り、転移魔法が発動した。


 ***


 王城の一室から転移し、瞬きをする間もなく見知らぬ部屋に転移が完了する。

 しかし転移魔法を経験したことのない生徒たちは興奮した様子で辺りを見渡した。


「静かにしろ! ここはもうベルモンド王国の中だぞ」


 同伴した教師らは浮付いた生徒らに(かつ)を入れる。

 魔導大会を経験した上級生やレイゼンで経験した俺はその対象では無かったが……。


「うぅ……」


 後ろを振り向くと落ち込んだ様子でラビスは俯いていた。

 初めてレイゼンの魔法を食らった時は俺でも驚いたのだから(はしゃ)いでしまうのは仕方のないことだ。


「これから宿泊施設に移動する。そこで昼食を取った後、競技種目に分かれて最終調整を行う。エンドリアス魔法学園の制服を着ている以上は不要な行動は慎み、現地の人々に迷惑を掛けることにならないように! じゃあ移動するぞ!」


 荷物を持って転移用の部屋を後にし、建物内を移動する。


「この建物は円形闘技場として平時(へいじ)では使われ、魔導大会やイベントの時にも活用されている。勿論、選手の待機場所やミーティングルームは十分に確保されているから狭苦しい思いはしないはずだ」


 男性教師は生徒たち不安を和らげようと移動しながら説明を交えた。

 開催(かいさい)国であるベルモンド王国は好戦的な国民性から闘技場やカジノなどの産業に力を入れている。

 特にこの円形闘技場は有名な観光地でもあり、観光客として見物するもよし、戦士と参加して賞金を稼ぐもよしという自由な国なのだ。


「ここからは外へ出る。勝手に行動し、迷子なんかになるなよ」


 そう言って会場の出入り口を開け、俺たちは二列に並んで宿舎に向けて歩き出す。


「……街並みはこっちとあまり変わらないね」


 他国に赴いた事の無かったラビスはやや落胆した様子で耳打ちした。


「気候や文化に大きな違いが無いからそれは仕方のない事だよ。田舎や地方だと目に見えた違いがあったかもしれないけどね」


「思ったんだけど、魔導大会の会場が王都の中にあるって凄いよね。てっきり自然に囲まれたところにあると思ってた」


 彼女は闘技場を振り返り、改めてその大きさ驚く。


「ベルモンド王国の周囲には大きな山脈が連なっているから王都周辺ならまだしも、離れたところには建物が建てられない。だから人が密集している王都に闘技場を建てたんだ。そっちのほうが人の行き交いが楽だからな」 


「へぇ……ずいぶん詳しいけど、来たことがあるの?」


「え、まあ、二三日立ち寄って……ね!」


 俺は動揺しながらも彼女の質問に回答する。

  

「マインちゃんたちと来たんでしょ?」


「あ、ああ……当然だ」


 一人で訪れたなんて言えるわけもなく、俺は頷くするしかなかった。


「家族で旅行なんて羨ましい。ちなみにマインちゃんたちはいつ頃着くの?」


「ええェと確か、三日目の魔撃墜ホープ・シューティングには間に合うって……わざわざ見に来なくてもいいって言ったのに」


「遠くてもアルムの活躍が見たかったんだよ」


 嫌そうに振る舞う俺を彼女は(なだ)めた。

 王城と会場を繋ぐ転移魔法は選手候補生と同伴の教師、そして王族しか使用することを許されない。だからエンドリアス王国からこちら来る場合、馬車を使っての移動になるため会場まで足を運ぶ者はほとんどいない。それに最近では魔法で大会の様子が映像で可視化されているため、直接見に来る者は現地人や近隣の者に限られていた。


「まあどうせ来るなら息子の輝かしい活躍を見せつけてやるよ! ラビスの親父さんは来るのか?」


「いや、知らせて無いから多分来ないかな」


「そうなのか、百キロ走(ハンドレッド・ラン)に出られそうだからてっきり手紙を出したのかと……」


 一か月間の練習期間で性格や実力を考慮(こうりょ)し、彼女は百キロ走を選択することに決めたのだった。

 彼女の能力を最大限発揮できる種目かと言われれば肯定できないが、魔力を効率的に運用することは持久力に直結する。ならば彼女の高い魔力制御も存分に発揮されるだろう。それに――――。


「でも関係ないよ、だれが来ようと自分の全力を出し尽くすだけだから!」


 暗い顔を浮かべていた彼女も自分に言い聞かせるように言って、やる気に満ちた表情を見せる。

 それに彼女は逆境(ぎゃっきょう)にも(くじ)けない心の強さも兼ね備えている。

 

「ああ、お互いベストを尽くそうぜ!」


 俺は真っ直ぐな彼女に敬意をもってこの言葉を送った。

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