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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
大会練習

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幹部殺害

 竜種出現の理由から始まり裏社会の幹部アイビスと交戦したこと、そして学園理事長のレイゼンもその一員であることを事細かく説明した。。


「あのレイゼン殿が信じられん……」


戯言(ざれごと)も大概にしろ! 平民!」


「そんな話を誰が信じると思うんだ!」


 貴族たちからは批判の声が巻き起こる。

 無理もない。魔法教育という自国の発展に不可欠なものを先導する人物を決めるのに何度も協議を重ねて選定したのだ。そんな人物が国を裏切り、世界の安寧(あんねい)(おびや)かしている組織に属していると説明されても信じてもらえるわけが無い。

 この場で一番交流があるカルティアでさえ疑いの眼差しで見ていた。


「俺が話したことは全て真実です。謝罪も撤回もする気はありません」

  

 それでも話さなければならない。問題が起きてからでは遅いのだ。


「城兵! その平民を摘まみ出せ!」


 貴族の一人が命令を下し、城兵が動き出す。


「少し落ち着こう」


 しかし眼前に座っていた男が立ち上がりこの場を鎮める。


「私はアルム殿が語ってくれた真相を戯言(ざれごと)(ののし)るのは早計だと考える」


 そして意外にもその男は俺を擁護(ようご)しようと声を上げた。

 妹のカルティアより三つ年上の兄にして王位継承権第一位アイレス=エンドリアス。


「アイレス殿下! そのような発言はお控えください!」


 公式な場での危うい発言に彼を支持する貴族が慌てて注意する。


「なぜ止める? 彼の言っていることが真実ならば、一刻も早くレイゼン殿を捕らえるべきだ」

 

「レイゼン殿は学園理事長に就任させる際に身元や経歴は調べております。それに裏社会(スタンドル)に所属している証拠はありません。その平民が言ったことは事実無根です!」


 貴族には痛い所を突かれ、周囲はそれに同調した。

 王侯貴族が集まる場が目の前にあったからと言って証拠不十分のまま話したのはやはり不味かった。

 しかし俺のような一般人に尻尾を掴ませるほどあの男も、そして組織も甘くはない。


「確かに証拠はない。だが裏社会(スタンドル)の幹部であれば改ざんや隠ぺいも容易に行えるのではないか?」


「……つまりそれは、調査結果を書き換えた裏切り者がこの国に潜んでいる、という事ですか?」


「そうは言っていない。こちらが潔白(シロ)だとしても向こうの情報操作が上回っているという可能性もある。無論、私は後者を信じている」


 王国の調査結果が偽りである可能性を主張したことで俺を糾弾(きゅうだん)していた者たちは頭を悩ませる。

 権力の違いで話し合いを有利に進めているのは間違いないが流石はカルティアの兄君だ。正直、アイレスが信じてくれなければ、謁見(えっけん)の間から追い出されて俺の処遇について議論が進められていただろう。 

 このまま上手く話が進んでレイゼンの再調査が行われたら最高だが。


「お互い、主張はそれくらいにしてもらおう」


 しばらく静観していたバルドラが止めに入る。


「アイレス、お前の主張が間違っているとは言わん。だが不毛な水掛け論はどこかで区切る必要がある」


「はい父上」


「私としてレイゼンを疑いたくはないが、罰せられることも(いと)わず彼は訴えたのだ。だからレイゼンの再調査、または監視役を付けるのが落としどころだと考えていた。だがこれまでの功績と忠義を疑うようなことは私としても避けたい――――ならばこの場に()の者を呼び出し、真相を確かめよう!」


「呼ぶ……?」


 バルドラは懐の中から高尚(こうしょう)手鐘(ハンドベル)の取り出すとチリンチリンと二度鳴らす。

 数秒後、俺の背後で白い光が王室を明るく照らした。


「お呼びでしょうか? バルドラ王」


 振り返った先には丁寧にお辞儀するレイゼンが立っていた。


「おや、貴方も居ましたか」


 目が合った彼はそう言って声を掛け、俺は敵意むき出しで彼を睨みつけると血のような赤い液体が顔に付着させていた。


「突然の呼び出しで済まない。貴殿に聞きたい事があったのだが、その前に頬に付いた液体はなんだ?」


「おっとすみません、少々慌ただしくて気づきませんでした」


 驚いた様子を見せるとハンカチを取り出して頬を拭う。


「何かしていたのか?」


「ええ、ほんの数分前まで裏社会(スタンドル)最高幹部、オルオ=モーゼウスと交戦していまして……」


「……はっ⁉」


 彼の言葉に動揺を隠せず声を漏らした。


「オルオって、『惨殺のオルオ』か⁉」


「はい、私も情報網を張り巡らせて奴らの居所を探していまして、二日前に強襲を仕掛けていました」 


 魔導大会の選手顔合わせに姿を見せなかったのは幹部のアジトにいっていたからか。


「それでオルオは始末できたのですか?」


「激しい戦闘で首から下は無くなってしまいましたが、遺体はあの場に放置したままです。必要であれば後ほどこちらに寄越す形でよろしいでしょうか?」


「……分かった。では会議が終わり次第、別室にて確認しよう」


 真偽を確かめるために呼び出したはずが、いつの間にか幹部を殺したのかどうかの話にすり替わってしまう――――って言うかどういう事だ? つい最近もアイビスの計画を邪魔したくないとか言って仲間を庇うような言い方をしていたのに。それが同じ幹部を殺した……意味が分からん!

  

「結局、彼の話は嘘だったらしい」


 そして俺の証言と不一致な状況を楽しもうと独り言のように貴族が呟いた。

 死体を確認するまでレイゼンが潔白(シロ)であると確定したわけでは無い。

 だが嘘であるのならそもそもこの場に現れる必要がない、つまり本当に幹部を殺したという事になる。


「止めないか、誰にでも間違いはある……しかしレイゼン殿の侮辱をしたのは事実。ならば言うべき事があるのではないか?」


 バルドラは威圧的な目つきで俺を見据える。


「……証拠もなく不確かなままレイゼン理事長を侮辱(ぶじょく)したこと、そして議会の進行を妨げたことに深く謝罪したします」


 片膝を付いて上体を小さく屈んだ状態で深々と謝る。

 レイゼン、目的も意図も不明瞭(ふめいりょう)で実に腹立たしい男だ。

 しかし今の俺には謝罪以外の選択肢はない、罪状を掛けられないだけマシとも考えるしかない。


「……此度(こたび)の議会はこれにて終了する、みなご苦労であった」 


 貴族らが退室する流れに乗じて俺もこの場を後にする。

 レイゼンは確認作業のため、この場に留まるようだ。


「我らの尊き議会がが愚かなの平民のせいでめちゃくちゃだ」


「少し褒めたくらいで付け上がる、これだから下賤(げせん)な身の上は困る」


 先の失態を面白がって口々にそんな事を言い放たれ、俺は聞こえないふりをして歩き続ける。


 今は何が正しくて何が間違っているのか分からない。

 だがひとつ言えることがあるとすれば、レイゼンは俺の味方ではないという事だ。

 本当に裏社会の幹部を殺したのなら組織を脱退させられる可能性は高い、がそれを考慮せず殺したわけが無い。

 彼は自身の陰謀を成就させるため組織を裏切った。そう遠くない内に何かとんでもない事を起こすだろう。


「お前の好きにはさせない……!」


 俺は軽率な言動を(いまし)めると共にレイゼンへの警戒心をより一層高めた。

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