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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
大会練習

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荒れる会議

 扉を開けた二人の騎士は扉を押さえたまま敬礼しており案内は終わった様子。

 おれは野に放たれた赤子が(ごと)く、作法も礼儀もあやふやな状態で謁見(えっけん)の間に足を踏み入れる。

 目の前には国王陛下にカルティア、その兄君が玉座に鎮座(ちんざ)しており、少し離れたところに貴族の現当主が集まって皆が俺の様子を伺っていた。

 学園の制服着用しているお陰で格好だけを見れば然程(さほど)見劣りしている訳ではないが、王族は元より貴族の当主たちから溢れ出す気品やオーラで場違いな事この上ない。

 さっきまで平和なお茶会だっただけに精神的ストレスの落差が凄まじいことになっている。

 やっぱり今すぐにでも日を改めて帰りたい状況だが、生徒会でカルティアと対面した経験もあって思っていたより冷静だ。

 それに今日は国王陛下が直々に褒めてくれるって話だし、少しくらいの粗相は受け流してくれるだろう。


「そこで止まれ」


 控えていた城兵に呼び止められ、俺は片膝を屈して俯いた。


「……面を上げよ」


 数秒後、国王バルドラから許可をいただき視線を戻す。

 エンドリアス王国国旗の真下に国王を据え、その両脇にカルティアと兄君を座らせていた。


「まずは此度(こたび)の召集に応じてくれたことに感謝する」


「国王陛下の(めい)とあらばいつ何時(なんどき)でも馳せ参じるのは当然のことです」


 俺の目を見てバルドラが感謝の意を述べると言葉を選んで返答する。

 白髪の頭と首元が隠れるまで伸ばした(ひげ)、そして顔の局所にしわがあり年相応に老けていた。しかしそこらの老人では感じられない威厳(いげん)は一国の王に相応(ふさわ)しい風貌(ふうぼう)だった。


「これから貴殿(きでん)の活躍に対して褒賞(ほうしょう)を与えるのだが、その前にこの者の実績を皆に知って貰おう。ロイズ、読み上げてくれ」


 バルドラは傍に控えていた執事に指示を飛ばす。

 その執事は結われた紙を縦に広げ、綴られた文字を読み上げる。


 暴走したリーゼンから騎士や生徒を守り抜き、全滅を防いだこと。

 南部から押し寄せた魔物の大群を焼き払い、被害を最小限に収めたこと。

 そして瀕死状態の騎士団長や隊長を保護しつつ、竜種の殲滅に大きく貢献したこと。


「以上でアルム=ライタード殿の実績報告を終わります」


 読み終えた執事は再び紙を巻いて結わえた。

 長々と己の活躍を語られるのは少々こそばゆいが悪い気はしない。


「貴殿のこれまでの功績(こうせき)を評して金貨二百枚を褒賞として与えよう!」


「に、二百枚ですか⁉」


 提示された金額を聞いて貴族たちから驚きの声が漏れる。

 それに正直な所、俺も声こそ漏れていないが表情まで隠せているか自信が無い。

 今の経済情勢(じょうせい)なら金貨三枚でライタード家のような四人家族が不自由なく一年は生活できる。それだけの価値がある金貨が二百枚も貰えるとなれば、死ぬまで遊んで暮らせると言っていい。もしくは王都でなく地方に引っ越せば、孫の代まで働かずに暮らしていけるだろう。 

 無論、いくら金を貰おうと好んで営んでいる家業を辞める両親でないが。


「……失礼ながら陛下、平民に与える報奨金(ほうしょうきん)としては少し多くありませんか?」


 驚きの声を漏らしたであろう貴族は一歩前に出て進言する。

 周りの貴族よりもひと際目立つ身なりから公爵家か、それに近い地位の人間だろう。


「ロイマン(きょう)……先の報告は聞いていただろう。我が国の最高戦力である騎士団の窮地を救ってくれただけでなく、自身の危険も(かえり)みずに王都の危機にも迅速(じんそく)に対応してくれたのだ。むしろ少ないくらいだと思うがな」


「そうは言っても平民に巨額の富を与えるのは危険すぎます!」


 バルドラが軽く応対するも食い下がる貴族、そして彼と同様の考えを持っていた貴族たちもひそひそと話し始める。

 俺としてはお金を期待して戦ったわけじゃないし、家計の足しになったらラッキーくらいに考えていたんだけどなぁ……。

 でも確かに活躍に対する褒賞としてそれぐらいは貰ってもおかしくはない。それに少なければ王族の威信に傷が付く。

 とはいえ下手に発言して他の貴族に反感も買いたくないし……おれは黙って褒賞の行方を彼らに委ねた。


「止さないかロイマン卿!」


 貴族たちの先頭に並んでいた男が声を上げた。


「……なぜ止めるのですか? ビルフォート卿はそれで良いのですか?」


「陛下が決めたことに異議を唱えるつもりはない。それに国の窮地を救ってくれたのは事実、であれば授与される褒賞がいくらであろうと納得するしかあるまい」


「……先程のご無礼をお許しください」


 不服そうな表情を浮かべるもバルドラに謝罪した。


「……見苦しいところを見せてしまったが受け取ってくれるな?」


「はっ! ありがたく頂戴(ちょうだい)いたします」


 受け取り拒否なんてできるわけも無く、ありがたく頂くことにした。

 これで俺も資産家の一員になったというわけだ。

 しかし特に欲しいモノは無いため手に余るが。


「では褒賞の件は終わったところで次の話を始めよう」


 バルドラはそう言って城兵に淀んだ水晶を持ってこさせる。

 確かあれは連絡手段に用いられる伝承石だったか、一体何を……?


「――――こちらブレイド=ラインヴィル。トロストの町の伝承石から失礼する」


 ノイズが鳴り響くもすぐに向こうの魔力波を受信し、淀んでいた水晶内にブレイドの顔を映し出される。


「良い、それよりも身体のほうは大事無いか?」


「まだ動けそうにありませんが話すのに問題はありません」


「では貴殿の口から竜種(ワイバーン)との戦いの報告を聞こう」


「はっ!」


 王命によりブレイドは竜種を発見した時からの出来事を話し始める。

 しかし彼の話が下手過ぎて貴族たちや命じたバルドラ、戦場に赴いた俺ですら理解できなかったため数分後には隊長のディアンが呼ばれることとなった。

 ディアンは高貴な身分であったため状況説明は元より、言葉遣いもしっかりしていた。

 恐らく『最初からディアンに話させておけ』と思ったのは俺だけじゃないはず。     


「――――以上で報告を終わります」


 結局ブレイドが話したのは冒頭(ぼうとう)だけでほとんどディアンが説明した。

 それに裏社会幹部(アイビス)の話題が出なかったことからオリバーはあの約束を守ってくれたようだ。


「よし、もう行って良いぞディアン」


「いえ、会議が終わるまでここに居ますよ」


「ここからは機密情報だ。隊長とはいえ許可できない」


「それでも団長の話を通訳する人間は必要です!」


 そして水晶の向こう側で言い合いが始まる。


「一週間以上も前の話だから記憶が飛んでただけだ! いいから下がれ!」


「嫌です! それにこれから竜種(ワイバーン)が出現した原因を話し合うので団長こそ下がってベッドで寝ててください!」


 言い争っている向こうに対し、王室内はひどく静まり返っていた。

 ほとんどの人間が呆れ果て、早く終わらないかと待ち望んでいる様子だった。

 俺もこの場の雰囲気を読んで黙っているが、そもそも出現理由が分かっているから話し合いを待つ必要がない。


 だが『裏社会の幹部が騎士たちの遺体を媒介(ばいかい)にして竜種たちを召喚した』と証拠も何もない話をしたって誰も信じてはくれないだろう、こんな平民学生の話なんて――――いや待て。

 確かに平民出身の学生の話を王侯貴族(かれら)が聞く耳を立てるわけがない。しかし今の俺は実績を認められ、謁見(えっけん)の間まで足を踏み入れている。

 少なからず俺の発言力は増しているはずだ。


「陛下。竜種(ワイバーン)出現の理由、俺に説明させてくれませんか?」


 静まり返った王室に俺の声が響き渡る。

 予想外の申し出にカルティアは大きく瞳を開いた。


「突然なにを申すかと思えば――――!」 


「……許可しよう」


 激昂(げっこう)した貴族の言葉を遮ってバルドラは承諾すると同時に伝承石の通信を遮断させる。

 俺が話しやすい環境を作ろうという配慮と直接的に被害を受けた騎士団に不確定な情報を聞かせ、会議が(とどこお)る事を危惧(きぐ)したのだろう。


「「「…………」」」


 緩んでいた空気が一瞬で張り詰める。

 俺はこれから竜種出現の理由に加えて、レイゼンが裏社会の一員であることを暴露(ばくろ)することに決める。

 せっかくバルドラが発言する機会をくれたんだ、国の中心人物が(つど)うこの会議以上に話すべき場所など無い。


「ふぅ……」


 俺は高鳴る鼓動を鎮めようと深呼吸をする。

 レイゼンが正体を明かした時、誰かに打ち明けようとも考えたが時期尚早(しょうそう)だと言い聞かせていた。

 しかしアイビスとの戦闘で自分が如何(いか)怠慢(たいまん)であったか思い知らされた。裏社会(やつら)の戦力は俺の想定を遥かに上回っており、『世界征服』という戯言(ざれごと)を成し遂げるだけの計画性と社会的地位も有している。


 最善の選択かと問われれば疑問の余地はある、だが最早(もはや)一刻の猶予(ゆうよ)も無い。

 信じてもらえるかは分からないが、最低でも注意すべき人物であると皆に認識させてやる!


「まず竜種(ワイバーン)出現理由についてですが、裏社会(スタンドル)の手によるものです」


 発言に細心の注意を払いながら俺が知りうる真実を語り始めた。

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