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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
大会練習

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食堂騒動

 練習初日の百キロ走(ハンドレッド・ラン)終えて翌日の放課後、魔撃墜ホープ・シューティングの練習するこの時間。


「優雅な時間だ……」


 俺は王国最高の客室で紅茶を飲んでいた。


 ***

 

 はなしはラビスとの昼食まで(さかのぼ)る。

 

「あんな事言った次の日にどうなるのか心配だったけど何も無くて良かったね」


 隣で昼食を食べながら放課後の話に花を咲かせていた。

 彼女の言う『あんな事』とは全種目出場のことだ。


「そっちの一対一(ワオン・デュエル)の練習はどうだったんだ?」


「もう大変だったよ! 演習場に一歩でも足を踏み入れれば即戦闘、お陰で体が痛くて……」


 そう言ってラビスは腕や肩をさする。

 練習中に怪我は珍しくもないため回復薬は常備されている。

 彼女も少なからず使っただろうが、傷付くたびに使用していては治癒(ちゆ)する際の消耗が上回ってしまう。

 生活に支障をきたす傷でない限り、自力で回復させる方が賢明だと考えたのだろう。


「悪いな、俺が勧めたせいで……」


「ううん、アルムは私じゃ考え付かなかった戦い方を教えてくれただけ悪くないよ。悪いのは私だから……」


 俺の謝罪を即座に否定し、ラビス自身を責めてしまう。

 彼女に教えた戦い方とは魔物討伐試験で見せた他者の魔力制御に干渉するという方法だ。

 あの制御技術を体得(たいとく)できれば離れた距離から相手の魔力に干渉し、魔法発動の妨害や阻止、魔法そのものを支配することだって理論上は可能である。

 だが後にも先にもあんな芸当を成せたのは試験の日だけで、今はそもそも干渉できないのが現状。


「そう自分を責める事はないって。あの競技は学園内でも血の気の多い奴ばかりが集まりそうだからな、優しいラビスには向いてなかったんだよ」


 極限状態でなければ彼女の潜在能力が覚醒しないと思って練習に参加するよう促したが、他者を傷付けることに抵抗を感じる状態で集中しろなんて無理な話だ。 

 

「じゃあ今日の放課後は百キロ走(ハンドレッド・ラン)の練習をしたらどうだ? 今のところ先輩二人しか居ないけど監督の先生も含めて良い人たちだよ」 


「戦闘が少なそうな競技だし行ってみようかな」


 競技選択までの期間はまだまだある。焦らずゆっくり、彼女が挑戦したい種目選びに付き合って行こう。


「アルムは今日魔撃墜ホープ・シューティングだったよね……」


 俯きがちに俺の予定を尋ねるラビス。

 何故そんな反応を見せるのか、それは再びセロブロと言い争いに発展しないかを心配しての事だろう。


「ジクセスさんと仲直りはしないの?」


「仲直りはまだ良いかな、意見の食い違いなんてよくあることだし――――なんだ?」


 突然、食堂の入口ほうが女子生徒の声で騒がしくなった。 


「カルティア様、食事をご一緒しても良いですか?」


「ちょっと、私が先に声を掛けていたんだけど!」


「あんたは先週食べたでしょ! 今日は私よ!」


 たくさんの野次馬(やじうま)が群がって様子は見えないが、可憐(かれん)で美しい王女殿下に寄り付いている光景が目に浮かぶ。


 彼女の権力に(あやか)りたいがためか、それとも同性でも彼女の美貌(びぼう)に惚れこんでしまったか、どちらにしても飯を食いに来ただけでこんな騒ぎが起きるなんてあの女も大変だな。


「……ん、どうした?」


 僅かな同情をカルティアに向けているとラビスがまじまじと見つめていた。


「アルムってさ、生徒会室に行った時から少し変わったよね」


「え、そうか?」


 やや怒気を含みながらそう尋ねられる。


「そうだよ、だって前のアルムじゃ『個人総合一位』なんて目標は(かか)げなかった。それなりの成績を残して楽しむことを優先してたよ」


 彼女から俺はそんなふうに見えていたのか、カルティアとの賭けが無ければそうしていただろうけど……。


「別に真面目に取り込もうとしてるのはすごく良いと思うけど……――――嫌だな……」


 怒気を含んでいたかと思えば急にシュンとした様子で口ずさむ。


「なにが嫌なんだ? 直すから教えてくれ」


 怒らせた理由が分からないおれは彼女に向かい合い、己の改善点を探し出す。

 意見の食い違いがあっても良いが、直す姿勢も忘れてはいけない。


「だから……だから……」


「うんうん」


 徐々に小さくなる声量に合わせて彼女の口元に耳を近づける。

 人の悪い所を指摘するのは勇気が必要であるにも関わらず、彼女は俺のためだと思って言ってくれるんだ。出来る限りの改善する努力をすると約束しよう。


「――――会長さんのことが好きになっちゃったんでしょ‼」


 彼女の唇に触れてしまいそうな距離まで近付けたとき、いきなり大声を上げる。


「ッう……! 急にどうした――――――――え?」


 食堂内に響き渡るほどの声を間近で聞いたため反射的に両耳を押さえるが、彼女が発した言葉を理解していく内に背中から冷や汗が噴き出る。


「あっ――――⁉」


 彼女の顔が一瞬で真っ赤になっていく。

 両手で顔を覆うも恥ずかしさに耐えきれず昼食を残したまま足早に食堂から出て行き、おれは理解が追いつかずその場で動けないままだった。


「……あいつなんて言った?」


 俺がカルティアを好きだと……⁉ 彼女から俺はそんなふうに見えたのか?

 そりゃあ魔導大会の賭けで意識してなかったわけじゃないけど、そんな恋愛感情を抱いた事なんて一度もないぞ!

 流石にこれは否定……いやまさか、自覚がないだけで俺は彼女の事が――――。


「いやいや絶対違う、あいつの勘違いだ」


「勘違いなんですね。残念です」


「うおっ!」


 そう言ってカルティアは落ち込んだ様子を見せる。

 気持ちを落ち着かせるのに集中して彼女の接近に気付けなかった。


「大きな声が聞こえたので様子を見てみれば、婚約者さんが喧嘩をしていたのですね」


「前にも言いましたが婚約者じゃありません。それに喧嘩じゃなくてただの勘違いです」


 これ以上話をややこしくされるのは勘弁だ。


「そうですよね、貴方が私に好意を向ける理由がありませんし」


「……話が済んだなら他へ行ってくれますか? これ以上悪目立ちしたくないので」


 周囲に目を配ると賑やかな食堂ながらもこちらを覗いている。

 ラビスの誤解発言で注目されているのは仕方ないが、目の前の女と一緒に居るとさっきの発言も相まってへんな噂が立ちかねない。


「ご希望に添えず申し訳ないのですが、食べ終わるまでは居させてください」


 彼女は席に座り、昼食のトレーをテーブルに置いた。

 なんで王女が一階の食堂で飯を食うんだ……?


「実は貴方に伝えたい用件があってこちらに来ました。アルム君、今日の放課後に王城へ来てくださいませんか?」


 大衆の面前で自身が住まうお城へ来るようお願いされる。

 否、お願いではなく『命令』が下された。

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