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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
大会練習

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競技種目

 午前の授業を終えた俺たちは食堂へ向かった。


「ここが二階の食堂……」


 ラビスは(ほう)けた様子で感嘆(かんたん)の声を漏らす。

 普段は一階で食事を取っている俺たちがなぜ二階の食堂に居るのかというと、またもやセロブロが下の階で食べることを拒否したからであった。


「いつまでそこに立っている、さっさと席に着け」


「は、はい!」


 セロブロは入り口で立ち(すく)む彼女に声を掛ける。


「言っておくが奢らないぞ」


「安心してくれ、今日はちゃんと持ってきた」


 流石に二度も奢ってもらおうだなんて浅ましい考えは持っていない。


「ッ……⁉」


 彼女はメニュー表を開くと早速眉をひそめた。

 いつも利用する食堂に比べて数倍の値段設定だから無理もない。

 選手同士で食事を取ろうと言ったのは俺だ、彼女の昼飯代以上の額は払おう。


「ラビス、と言ったか。今日は僕が奢ってやるから好きな料理を選べ」


 耳打ちしようとするもセロブロがそんな事を言い出す。


「いえ、そんなお気遣いは不要です……」


 しかし交流が少ない彼にお金を出してもらうのは少し抵抗があるようだ。


「気遣っていない。ただお前にも借りを返さないといけないからだ」


「借り、ですか?」


 ラビスは困惑(こんわく)の表情を浮かべる。

 俺もラビスが彼に借りを作るようなことがあったなんて初めて知った。


「魔物討伐試験、アルムに部下を殺されそうになったときに仲裁(ちゅうさい)してくれたとと聞いている。遅くなったがその借りをここで返そう」


 セロブロの話を聞いていた彼女は意外そうな顔を浮かべる。

 俺も借りを返すと言われて奢られた時は驚いた。最初の印象が最悪だっただけに、妙なところで律儀(りつぎ)なのがより衝撃的なのだろう。


「……じゃあご馳走になります」


 ラビスは遠慮しながらもセロブロの厚意に受け取ることにしたようだ。


 俺たちはスタッフに呼び出し、それぞれ料理を注文した。


「んじゃ、とりあえず魔導大会の競技種目を教えてくれよ」


「競技種目は百キロ走(ハンドレッド・ラン)魔撃墜ホープ・シューティング、そして一対一(ワオン・デュエル)の三種目でそれぞれ人数制限やルールが定められている」


 セロブロは頷くと説明を始めた。


「人数制限とかルールとか分かるか?」


 セロブロは待っていたかのように鼻で笑うと胸元から紙を取り出した。


「そう聞かれると思って授業の合間にまとめて来た。それを見て分からないこと聞け」


「あ、ありがと……」


 聞かれると思ってわざわざ用意する手際(てぎわ)の良さに感銘(かんめい)を受けつつ紙に綴られた説明に目を通す。


 大会1日目、百キロ走(ハンドレッド・ラン)

 人数制限なし 

 指定されたコースを走行し、六時間以内にゴールする

 特定の区域以外は他の選手の妨害行為あり

 一位72点、二位69点、三位66点と順位が下がるごとに3点ずつ引かれていき、24位0点となりそれ以降の順位も3点ずつ引かれる


 2日目、3日目、魔撃墜ホープ・シューティング

 一校につき八人選出

 三回戦まではトーナメント方式で的を射抜(いぬ)いて点数を競う

 五十六位5点、二十八位12点、十四位20点、七位20点

 四回戦目からは選手たちが主導となってチームを形成し、当日大会運営側から出された条件を達成して勝利チームを決める

 勝利チームは順位ポイントにチーム人数を掛けて導き出す

 例、三人でチームを作って勝利した場合

  20×(7-3)=80点をそれぞれ獲得する

 敗者チームは順位ポイントにチーム人数を足して導き出す

 例、四人でチームを作って敗北した場合

  20+(7-4)=23点をそれぞれ獲得する

 

 4日目、5日目、一対一(ワオン・デュエル)

 一校につき四人選出+総合獲得ポイント上位四校にのみもう一人選出

 運営側から割り当てられたトーナメント方式で執り行われる

 四位決定戦以降は五日目に行われる

 一位100点、二位90点、四位60点、八位40点、十六位20点、三十二位5点


「……どうだ、訊きたい事は見つかったか?」


 説明を読み終えて顔を上げるとセロブロが尋ねる。


「複数の種目に出場することは可能か?」


「特に禁止されている訳じゃない。ルール上は可能だ、だが説明を見たら分かると思うが参加するだけで魔力と体力の消耗は尋常じゃない。その上で校内の先輩方より高いパフォーマンスで参加できるようじゃないと複数出場は『絶対』に認められない」


 セロブロはその言葉を強調して発した。

 魔導大会は学園で培った力を披露(ひろう)するのにこれ以上ない大舞台だ。

 面白半分で複数の種目に出場なんて許されるものではない。


「……もう一つ訊きたい事がある、一対一(ワオン・デュエル)に出場して一位を取ったら個人総合一位はほぼ確実という認識で構わないな?」


「ああ、毎年観戦しているが一対一(ワオン・デュエル)で一位になった奴が総合でも一位だ」  


 彼の表情を(うかが)うも嘘偽りの感情は見えない。

 魔法師としての個人能力を重視しているからこその高い点数、複数種目も視野に入れていたがどうやら杞憂(きゆう)に終わったようだ。


「そうか……」


 俺は水が注がれたグラスを持ち上げ、乾いた喉を(うるお)す。


「……ごめん、結局アルムは何が聞きたかったの?」


 ラビスは話題について行けず困った顔を浮かべていた。


「ホームルーム前にセロブロが言っていただろ、『一位が取れるほどこの大会は簡単じゃない』って」


 コクコクと大きく頷く。


「でも一対一(ワオン・デュエル)で一位を取れれば、個人総合も一位になったと言って同然(どうぜん)なんだ」


 そのまま答えを教えるのもつまらないため遠回しに伝え、彼女を試すことにした。


「うん……」


 ラビスは顎に手を当てて頑張って思考を巡らす。


「そして去年総合八位のテイバン先輩は一対一(ワオン・デュエル)に出場した、そうだろセロブロ?」


「ああ、種目別だと確か四位だったか」


「惜しくも一位に届かず悔しい思いを胸に秘めて鍛錬し、優勝候補とまで言われた先輩を相手におれは勝利を収めたんだ。だから……えっと、だから……何が言いたかったんだっけ?」


 謎解きを楽しむあまり出題者本人が答えを見失ってしまう。

 そんな様子にセロブロは大きくため息を吐いた。


「つまり鍛錬を積んだ彼を倒した自分は優勝に最も近い、そう言いたかったんだろ」


 言い終えた後に再び大きなため息を吐かれる。

 悔しいがセロブロが居なかったら今日中は答えが分からなかっただろう。


「頭の悪さは今に始まった事じゃないだろうが、その楽観的思考はどうにかしたほうが良い」


「楽観的思考、俺のどこにそんな思考があるんだよ?」


 前置きの罵倒はひとまず置いておいて、改善しなければならない理由を尋ねる。

 

「去年の優勝者は五年生で彼らは卒業したから敵はもう居ないって確信しているだろう。顔にそう書いているぞ」


「なっ……⁉ つーかぁ! その言い方だと去年の優勝者は卒業していないように聞こえるんだけど!」


 図星を突かれた俺は話題を切り替えて何とか誤魔化す。


「……ああ、一対一(ワオン・デュエル)の優勝者だけは卒業していない。ヤツはテイバンと同じ四年生だ」


「そんなヤバい奴なのか? そいつ」


 深刻そうな顔で答えるセロブロに思わず聞き返す。


「ベレス=ダーヴィネータ。あいつは一年から魔導大会に出場し、個人総合一位を三連覇する正真正銘(しょうしんしょうめい)の化け物だ」


「……三連覇!」


 周辺国の魔法学園から選抜された419人の頂点の座を三年も居座り続けるなんて確かに化け物と言い表す他ないな。

 カルティアが提示した条件は総合一位、全種目一位ではないため残り二種目で良い結果を出せば問題はない、が……。


「出場種目はよく考えたほうが良さそうだな」


 料理が来るまでの間、それぞれが魔導大会について深く考えた。 

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