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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
竜種討伐

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竜戦の裏側5

「何で魔法が発動しねぇ!」


 地中に魔力を流し、黒棘を発動しようと試みるも不発に終わってしまった。


「足元に仕掛けようとしていたようだが無駄なことだ。私の靴には地層改変(グリフト・キャニオン)の構築式が刻まれているからな」


 アイビスの中心には魔法が発動していたから俺の魔力が打ち消されたのか、じゃなくて! 早く次の手を考えねぇと顔を見られる……!


(うつむ)いても無駄なことを……いや、重加力(グレイブ・ジル)で上げられないだけか」


 アイビスは俺の髪の毛を掴んで魔法を発動したまま、無理やり引っ張り上げる。


 不味い! 逃げも反撃も出来ない、顔を見られたら終わりだ――――。


「くっっそォ……」


 髪を引っ張られた痛みと素顔がバレた悔しさで顔を(ゆが)ませた。

 これから一生、裏社会(れんちゅう)に追われることになっちまうなんて。とりあえず今は生き延びる事を最優先に考えて――――。


「……な、何できみがここに居るんだ。アルム君……!」


 俺を知っているような物言いをすると明らかに動揺(どうよう)した様子を見せ、僅かに体に掛かる負荷が軽くなったように感じる。

 俺は瞬時に反撃の糸口を見つけ、口の中で小さな針を作り出す。そして(まと)える限りの魔力を針に付与させると唾を吐き捨てるように彼の顔に射出する。


「ぐあぁ⁉」


 仮面に刻まれた結界魔法を発動させようとするも対応が一歩遅れ、仮面の一部が欠ける。


「死ねェ!」


 同時に重力魔法が解除され、長剣で斬り掛かるがアイビスとの間に岩壁が作られてしまい剣は弾かれた。


「チィ! あと少しだったのに……」


 とはいえ悔やんでいる暇は無い。俺は『瞬間転移』、『重加力』、『地層改変』を最大限に警戒しながらアイビスの出方を(うかが)った。


「…………」


 全神経を尖らせ警戒態勢を敷いて30秒ほどが経過するが、アイビスからの攻撃も接触も無かった。


 俺に隙が生まれるまで攻撃しないつもりか? 

 それともより強大な魔法を発動させるために使っている? 

 俺の素顔を知って戦う必要が無いと判断して逃走?

 そう言えば騎士団と竜種の戦いに介入したい的なことを言っていたような……。


「オリバーたちが危険!」


「そっちの用はもう済んだ」


 適当な距離を開けてアイビスが姿を見せる。


「……用が済んだってどういう意味だ!」


 少しの間だったとはいえ、こいつなら竜種との戦闘中に騎士団を壊滅させるだけの力はある。

 万が一、俺が無駄な時間を過ごしていたばっかりに彼らを死に導いてしまったのならば……。


竜種(ワイバーン)たちに付与魔法が効くのかどうか実験しただけ。騎士団らに手を下したわけでは無い」


「……それを信じるほど馬鹿じゃねえよ」


 嘘も真実も語る理由はない、さっさと向こうに行かなければ。


「さっさと戦いの続きをするぞ!」


「いやこちらに戦闘の意思はない。話をしようじゃないか」


「お前とここで話す事は何もない! 聞いて欲しかったら独房にでも転移しろ」


「そうか、では勝手に話させてもらうが単刀直入に言って裏社会(スタンドル)に入ってくれないか?」


 俺の提案を軽く受け流すと向こうは流しきれないような提案を繰り出した。


「はぁ! 入るわけねェだろ! 寝ぼけてんのかお前は!」


 裏社会に入るくらいならレイゼンと仲良くなったほうがまだマシだ。


「今の世界が腐りきっているのはきみも感じているだろう。だから私たちと共に良い世界に導こう」


「……寝言も大概にしろよ。だから人を殺して魔物を召喚して、多くの人間を巻き込んでいいと思ってんのか!」


 世界征服だとか、世界を変えるとか……裏社会は狂人の集まりなのか。


「世界が腐ってるのなんて最初から分かっていたことだろうが! まず自分の腐った思想から導けよこの詐欺師(さぎし)!」


「詐欺師、それは私に言ったのか……」


 これまでの言い放った罵倒(ばとう)と違った反応を見せる。


「そうだよ。数々の偉業を成し遂げた英雄の名を語るお前にはピッタリだな」


 プルプルと体を震わせて怒りを爆発させるかと思いきや、アイビスは大きくため息を吐く。


「きみの言う通りだ、私はこれから起こす革命の重責(じゅうせき)に抗うため、一族の誇りである彼の名を借りた……」


 朝日が昇り始め、光を灯していた森にも陽光が差し込めた。


「それに良い世界に導こうなんて言ったが、結局のところ私がしたいのは復讐(ふくしゅう)なんだ……」


 何かが吹っ切れた彼は本音に近いものを発した。

 これ程の実力を有する男が世界に復讐、か……。


「一体おまえの過去に何があったんだ?」


 同情とは全く異なるが僅かに好奇心が湧いてしまった。


「……聞かせてあげたいけど、もう時間みたいだ」


 アイビスの足元に転移魔法の構築式が展開される。


「逃がすかよ」


 無論、逃がすつもりは毛頭なく俺は指先を向けた。


「私に構って本命を逃してはいけないよ」


 そう言ってアイビスは空を指差す。

 意識を逸らす事が目的だと理解しながら、一瞬だけ視線を空へ向ける――――すると人が空を飛んでいた、いや飛ばされていた。


「恐らく竜種(ワイバーン)にやられたのだろう。受け止めなければ即死は免れない」


 どちらを選ぶ、そう言わんばかりにアイビスは問いかける。

 いやここでアイビスを逃がせば、これからも大きな犠牲が生まれてしまうだろう。残酷だが一人の命では比べるまでも……。


「ああ、クソォ!」


 俺は魔黒閃を撃つと降下する軌道を読んで先回りする。

 どのみち転移魔法で逃げられてアイビスを捕らえることは出来ないのだから救える命を救ったほうが良い。

 それに元々の目的は騎士団の援軍だからな。


「【水球(ウォーターボール)】」


 地面に激突する手前で大きな水球を作り出し、衝撃を受け止めた。

 

「おいっ! あんたしっかりしろ!」


 大声で呼びかけるが気絶しているみたいだ。

 片腕欠損に肋骨(ろっこつ)が砕けているから当然だ、むしろ生きているのが不思議なほどだ。

 とりあえず持参した回復薬(ポーション)を飲ませ、黒き空牢(ローブ・ジエルド)で彼を覆った。


「俺が遅れたせいで申し訳ない。あんたの仲間は俺が助けるから!」


 そう言って俺は黒煙(こくえん)が立ち上っている戦場へ向かって行った。


 ***


「――――そして竜種の群れを倒したあとにここに来ました」


 レイゼンの話は省略して三日間の出来事を語った。


裏社会(スタンドル)の幹部クラスが関与していたなんて……とりあえずきみが無事でよかった」


 アルムの無事を心から喜ぶオリバー。

 しかし魔物討伐試験で彼の部下を殺すよう命じ、あまつさえ供物として利用する(やから)に対して怒りが込み上げて来ないわけが無かった。


「オリバー隊長、改めて色々とすみませんでした……」


 アルムはその責任と罪悪感を感じて頭を下げる。


「ほんっっとうにきみが気に病む必要は無いし、謝る必要もない。まあ僕の約束を(ないがし)ろにしても良いと言われたのは少し複雑だけどね」


 そんなアルムを見兼ねてオリバーは他の話題を持ち掛ける。


「……! それも何と言ったらよいか……」


「でも、素晴らしいご両親だね」


「はい、俺も誇りに思っています」


 長い話を終えて両者の間に長い沈黙が訪れる。


「……アルム君は卒業したら騎士団に入る予定なのかい?」


「……すぐには答えが出せませんね、自分の進路はあまり考えた事が無いので」


 不意に話を振られてアルムは頭を悩ませた。


「学園生に聞けば全員が二つ返事で引き受けてくれるのに、騎士団はそんな魅力的に映らなかったかな?」


「それは違います! 何ていうか騎士団が何をやっているのかまだ理解できていないんです。それに今は学園生活で忙しいので進路を考えてる余裕があまりなく――――」


 焦って弁明するアルムの姿をくすくすと笑う。


「いくら君が強くても学生の将来を強制させることは出来ない。まあ入りたいと思ってくれるような騎士団にしたいと思っているよ」


 急にごめんね、と言ってオリバーは謝る。


(自分の進路は考えてないけど、どんな人間に成れたら良いだろう……)


 アルムが考えていることは進路というにはあまりに抽象的だ。

 しかしこれからの長い人生では、ぼんやり見えるくらいの将来で良いのかもしれない。


「オリバー隊長、進路じゃありませんが成りたい将来像は見えました」


「教えてくれるかな?」


「おれは、俺が大切に思っている人たちを守りたい。だから強くなりたい。でもずっと傍に居られる訳じゃない。だから俺がその場に居なくてもその人の力になれるような、そんな大人になりたいです……」


「うん……うん? それはどういう……?」


 アルムの気高き将来像に感心しながらも理解が及ばない様子だった。


「言っておいてなんですけど、俺も自分が何を言ってるのか分かんなくなりました」


 そして本人ですら意味が分からなくなり、答えられる者は居なくなった。


「はは、なんだそれ! まあはっきりしすぎていると視野が狭くなるかもしれないし、それぐらい大雑把な方が良いのかもしれないな」


 しかしその答えは数年後のアルムが見せてくれるだろう。


「そう言ってくれると助かります」


 そんなことを話している間に茂みの奥からオリバーたちを呼ぶ声が聞こえる。


「ようやく救助隊が僕のほうに回ってきたようだな」


 オリバーは火傷した足を庇いながら立とうとする。


「肩、貸しますよ」


 アルムは火傷した部分を触れないよう注意しながらオリバーを支え、救助隊へ向かって行った。

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