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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
生徒会

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魔物の大群

「なんじゃこりゃ……」


 爆発のあった南門に着くと目の前に広がる凄惨な光景に己の眼を疑う。

 魔法による爆発のせいで石造りの大きな門は全壊しており、周囲には重度の火傷や怪我を負った門兵が倒れていた。


「ひとまず避難を――――イルクスさん⁉」


 怪我人を運び出そうと周りを見渡すとロイドの友人の姿を発見する。


「大丈夫ですか!」


「――――アル坊か、情けねえ姿を見せちまったな……」


 近付いて声を掛けると意識はあるようで大事に至らなかったが、酷い火傷を負っており、重傷者であることに違いは無い。


「一体何があったんですか?」


「ほんの数分前のことだ、大量の魔物の群れがこっちに向かって来たんだ。門を閉鎖して応戦してたんだが勢いが収まらなくて、どこかの馬鹿が魔法を乱射しやがったんだ……!」


 イルクスは朦朧とする意識の中、起こっていた状況を説明する。 

 門が砕け散ったにもかかわらず、魔物たちが王都内に侵入していないのは先程の爆発を警戒してのことだろう。

 だが攻撃が来ないと分かれば、今すぐにでも入ってくるはずだ。


「アル坊……」


 イルクスは俺の手を強く握り締める。


「本当に情けねえけど、俺たちの代わりにここに居る人たちをを守ってくれねえか……?」


 握っていた手はプルプルと震わせ、涙をこぼす。

 彼にとって誇りと呼べる門兵の職務を俺に託すことがどんなに辛く、悔しいだろうか……。

 

「任せてくださいイルクスさん。貴方の代役として精いっぱい頑張ります!」


 俺は彼の気持ちを汲み取ってこの言葉を送る。

 それを聞いたイルクスは薄っすら笑みを浮かべ、そのまま意識を失った。


「危ないので離れて下さい!」


 手始めに門兵として周囲の人たちに呼びかけながら、イルクスやほかの門兵を街中に避難させる。


「そこの学園生!」


 爆発音を聞きつけて他の門兵が応援に駆けつける。


「怪我人を運び出してくれて助かったよ、南門の防衛は我々に任せてきみは下がりなさい」


「いえ、魔物は俺が対処するので彼らの治療をお願いします」


 イルクスに任せられた使命感が半分、彼らに魔物たちの相手が務まるか不安なのが半分というのが正直な気持ちであるため、丁重に断る。

 彼らと協力して魔物と戦っても良いが、イルクスたちの治療に人員を回したほうが建設的だ。


「何を言っているんだ、学生は下がっていなさい」


 門兵は引き留めようと腕を伸ばし、おれは軽く弾いた。


「な、何をする⁉」


「俺が対処すると言ったでしょ。この場は俺の指示に従って下さい」


「魔法学園の生徒だからといって調子に乗るんじゃないぞ!」


 激昂した様子で俺の肩を掴む。

 年下のガキに言われてむかつくのは分かるけど、俺もムカついてんだよ。

 だが怒りの矛先を向けるのこいつじゃない……。


 俺は怒りを抑えながら掴んだ手を引き離す。


「俺はアルム=ライタード、貴方たちは門兵の治療をお願いします……」


「アルムって言えば、王国新聞に載っていたような……」


「騎士隊長に匹敵すると噂の!」


「やっぱ人命が最優先だよな……」


 目論見(もくろみ)通り俺の名を明かした途端にイルクスたちの手当てに回った。

 取材されたときは面倒だったが、有名人になるもの悪い事ばかりではない。


「俺も門兵の端くれとして仕事に取り掛かるとしよう」


 俺は跳躍して外壁に飛び移り、魔物たちの動向を(うかが)う。

 イルクスの言う通り、魔物たちは先程の爆発を警戒して森の奥まで後退しているようだ。

 外壁から魔黒閃を乱射して王都から離れてくれたら簡単だけど、そう上手くはいかない。

 この魔物の数からして南方向の魔物全てが集まったと言っていい。何故そんな事態になってしまったのか原因は見当もつかないが、少なくとも南で何かがあったのだろう。


「ここで追い返しても意味は無いか……」


 防衛戦のつもりだったが、逃げ場を無くした魔物たちは何度でも王都にやってくるならここで一掃するしかない。

 俺は外壁から降りて門の周りに黒棘を展開すると魔物たちが潜む森へ走って行く。


「【黒器創成(くろきそうせい)】」


 構築式を展開し、右手に黒い長剣を生成する。

 一掃するとは言ったものの、魔黒閃で片付けるには魔力の消費が多いうえ環境への影響も大きい。


「出来るなら大規模な魔法攻撃は避けたいところだが――――」


「キイィ!」


 森に入った直後、木の上から三匹の赤猿(クレントモンキ―)が襲って来る。気配を察知していた俺は回避も防御もすることも無く、その場で斬り裂いた。

 体長は50センチほどで小鬼(ゴブリン)より小柄だが、素早い動きと木にのぼる特性がある討伐が面倒な魔物だ。単体での脅威は小鬼以下だが数百匹規模の群れを形成するため、油断は禁物だ。


「シャアァァ!」


 赤猿の奇襲を警戒していると死角から森蛇(ウルガルド)が咬み付こうと突進する。


 上に逃げるのは赤猿の餌食(えじき)、ここは下に逃げるか!

 瞬時に判断した俺は上体を(かが)めて回避する――――が、地面がもこもこと盛り上がり鋭い爪が顔を(かす)め取った。


「チッ!」


 想定外の攻撃に驚いて咄嗟(とっさ)に黒棘を展開する。

 棘先に貫かれて攻撃の正体である爪土竜(アナグラ)が姿を見せた。

 爪土竜は地面に接近した獲物を両手の爪で捕らえ、引きずり込んで狩るため地面の違和感には十分に注意を払わなければならない。

 今回は運よく回避できたが、次に同じようなことが起きれば無傷では済まされない。

 

「これは環境に配慮している場合じゃねぇな……」


 俺は苦渋の決断を下し、外壁のほうへ撤退すると獲物を逃がすまいと魔物の大群が追いかける。 

 南門手前まで辿り着いたおれは体勢を反転させ、人差し指を魔物たちに向けた。


「【魔黒閃(ビルスター)】」


 直線的に俺を追いかけた魔物たちは黒色の熱線に呑み込まれ、骨すら残すことなく焼き尽くしていく。

 一度目の照射で生き残った魔物たちはすぐさま俺から離れていくが、今更逃げ出したところでほんの数秒しか寿命は変わらない。


「【魔黒閃(ビルスター)】!」


 俺は二度目の魔黒閃を撃ち、射線上に存在する魔物を焼き払う。

 その後も数えきれない程の熱線を魔物が蔓延(はびこ)る森へ撃ち続けた。

 僅かばかりの理性すら投げ捨てて、一矢報いようと向かって来た魔物には黒棘で応戦し、それ以外は生い茂る森ごと焼き滅ぼした――――。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


 試験のときから射撃精度や反動はだいぶ改善したが、百発近くも撃てば嫌でも疲れる。

 一か所に集まってくれれば10発程度で済んだのだが、四方に散らばられてしまい一掃するのに大分時間を掛けてしまった。

 それに王都の下半分は数キロ先まで焼け野原、魔物の大群から王都を守ったとは言えお咎めなしとは考えにくい。


「とりあえずイルクスの容態を見に行こ……」


「オリバー隊長ォ! ここは彼に任せましょう!」


 外壁を飛び越えて搬送された病院へ向かおうとすると、門の前で言い争っている男たちを目撃する。

 しかし喧嘩とかそういう類ではないようで一人を複数人の男で取り押さえていた。


「何を言っている! どれだけ強くても彼は学生なんだぞ! 騎士団として僕たちにもできることがあるはずだ!」


 鎧姿でなかったから分からなかったが、取り押さえられているのは騎士隊長のオリバーだった。

 しかし彼は部下(リーゼン)の監督責任で謹慎中だったはずだが、もう終わったのか?


「そもそも貴方は謹慎中でしょうが!」


 だよね、あと二週間ぐらいあった気がするし……。


「オリバー隊長の手を煩わせる必要もありませんよ」


 イルクスの容態を確認したいが、これ以上騎士団の醜態(しゅうたい)を民衆に晒されてしまうのは良くないため、面倒だが彼らに接触することに決める。


「アルム君! もう魔物を退(しりぞ)けたのか?」


「退けたというか、殲滅したので魔物の大群が襲ってくることは無いでしょう」


「殲滅⁉ いやきみがそう言うのだから本当なのだろう……」  

 

 オリバーたちは顔を見合わせると本人を含め部下たちも深々と頭を下げる。


「我々の窮地(きゅうち)を救ってくれただけでなく、王都の危機も先陣を切って救ってくれたこと、アルム殿(どの)に心より感謝と尊敬を!」


「と、とりあえず場所を移しましょう!」


 頭を下げる彼らになんと声を掛けて良いか分からず、衆目の前に姿を見せないことがおれに出来る最善の選択だった。 

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