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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
生徒会

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学園屈指の実力者

 翌日の放課後、ようやくテイバンとの勝負を迎える。


「お前の馬鹿さにはうんざりだったが頑張れよ」


 セロブロは呆れつつもエールを送り、教室を後にした。

 来てくれる話だったが、昨日の遅刻のせいで見放されてしまったようだ。

 本当に悪いと思っています……。


「絶対勝てよ!」


「俺たちは応援しに行くからな!」


 応援するクラスメイト達に押されて俺も教室を後にする。

 貴族が多く在籍するこの学園で俺を応援する生徒が居るのか疑問だったが、『公爵家が負けるところを拝みたい』という下衆(ゲス)な考えを持つ者が多かったため、俺を応援する生徒もそれなりの数が存在した。

 実際、俺が勝利を収めればビルフォート家の名に傷が付くのは確実だ。

 俺を生徒会に入れたいためとはいえ、リスクとリターンが釣り合っているようには思えない。

 

「生徒会長は何を考えているんだ?」


「ライタード君!」


 戦いの場となる演習場の入口前でカルティアが軽く手を振っていた。


「昨日は本当にすみませんでした!」


 俺は彼女の下へ駆け寄り、深々と頭を下げる。

 補習の件は完全に俺が悪かったため、まずは謝罪をする。


「遅刻は誰にでも起こる事ですから気にしていませんよ。こちらの方々も応援ですか?」


 カルティアは背後で立ち(すく)んでいる彼らに視線を向けた。


「彼と二人でお話しがしたいので先に行ってもらっても良いですか?」


「「「勿論です‼」」」


 お願いとは名ばかりの命令に満場一致の判断が下され、演習場内へ走って行った。


「が、頑張ってアルムゥ――――!」


「お、おお……」


 集団の中でラビスが顔を見せるも集団の勢いに流されて中へ行ってしまう。

 応援に来てくれたのは嬉しいが、怪我がなければいいけど……。


「先ほどの女性と仲が良さそうでしたが、もしかして婚約者ですか?」


「こ、婚約者だなんてとんでもない。俺には勿体無い良き友人です」


 突然の物言いに驚きつつもはっきりと事実を伝える。

 貴族社会では成人を迎えて結婚することも珍しくないため、接触回数の多い男女がそのように勘違いされることはあるのかもしれない。


「それでお話ししたい事とは?」


「そうでした。まずは貴方から許可を得ずに新聞に載せてしまったことを謝罪させてください」


 頭を下げるのと同時に藤色の長髪がサラサラと肩からこぼれ落ちる。

 

「頭を上げて下さい。驚きはしましたが、別に気にしてませんよ」


「……謝罪を受け入れて下さったので本題に入ります。テイバンと勝負が着いたら、生徒会室に来て欲しいんです」


「勝敗に関係なく?」


「ええ、どちらにしても話す必要はあるので」


 この勝負に勝てば俺を誘ったもう一つの理由を、負ければ生徒会加入の手続きを、確かに話すことになるのは変わらないか。


「分かりました、テイバン先輩と勝負が着いたらそちらへ向かいます」 

  

「ありがとうございます、それでは行きましょう」


 俺たちも演習場の中へ足を踏み入れると入試試験と同じ光景が広がっていた。

 違いがあるとすれば、的であった壁が立っていないことと、そして数百人の生徒が俺たちを囲んでいるところだ。


「ようやく来たぞ!」


「あいつが騎士隊長に匹敵すると(うわさ)超新生(スーパールーキー)か!」


「カルティア先輩となに話してたんだァ!」


「「「テイバン、あいつをやっつけろぉ‼」」」


 俺を褒め称える声から罵詈雑言(ばりぞうごん)、テイバンの応援と様々な声が飛び交っていた。

 当然ながら観客席がないため、四方の壁に沿って生徒たちが集まっており、想像を遥かに凌駕(りょうが)する声援が場内に反響していた。


「セロブロが言った通りだな……」


 生徒数は百や二百を優に超えているだろう。

 耳を塞ぎたくなるほどの騒がしさだったが、目の前のカルティアは気にも留めていない様子だったので意地を張って我慢することにした。


 王族が歩く道を遮ってはいけないと生徒たちは道を作る。

 俺は彼女の後ろを追従し続けると広々とした空間に連れ出され、目の前にはテイバンが立っていた。

 見世物にされている状況にもかかわらず、柄に手を当て自然体を振る舞っていた。 


「戦いの合図が出されるまでここで待っていてください」 


 案内を終えた彼女は俺から離れると他の生徒より少し前の位置で足を止める。


「この勝負の審判はわたくし、カルティア=エンドリアスが取り仕切らせて頂きます!」


 彼女は俺たちの紹介、そしてルールの説明を行った。

 一つ、死に至らしめる攻撃、再起不能の傷を負わせることは禁止。

 二つ、対戦者が自ら負けを認める、もしくは審判が戦闘続行が不可能と判断した場合は速やかに戦闘を止める。

 三つ、対戦者以外の生徒に怪我をさせるのは原則禁止。


 細かな規則もあったが、俺が守るべきものはこの三つだ。

 学園にも回復薬(ポーション)は配備されているため、万が一にも大丈夫だろうが気を付けるに越したことはない。


「では、試合開始!」


「【氷の槍(アイス・スフィア)】」  


 合図とともに槍状の大きな氷が放たれる。


「【黒器創成(くろきそうせい)】」


 構築式を展開し、長槍を両手に構えると氷槍の芯に目掛けて槍先を突く。

 硬度の差で氷全体にひびが入り、ばらばらに砕け散った。


「――――冷え……!」


 吹きつける冷気に声を漏らすと白い息が浮かび上がる。

 攻撃は当たらずとも生じた冷気は防ぐことも回避することも出来ない。

 決定打には到底成り得ないが、長期戦になれば向こうが有利。


「寒いのは苦手だ、さっさと終わらせよう!」


 俺は地面を踏み込み、一気にテイバンとの距離を詰める。


「【氷塊(アイスロック)】」


 テイバンの頭上に無数の氷塊を形成し、砲弾のように俺を撃ち出した。

 回避可能な攻撃は全て避け、それ以外は槍で打ち砕く。


 彼との距離が10メートルに差し迫ろうとした時――――突然、足を滑らせる。


「うお⁉」


 地面に意識を向けると広い範囲で凍結していた。

 足腰の力で体勢を立て直そうとするも踏ん張りが利かない。

 そんな俺をお構いなしに次々と氷塊が撃ち込まれた。


「【黒棘(ブラックパレス)】」


 この足場を槍一本でテイバンの猛攻(もうこう)(しの)ぐのは極めて難しいため、ほんの一瞬だけ地面に触れ、黒棘を展開する。


「――――ヒリヒリする……」


 テイバンの攻撃を防ぐことには成功するが、凍結した地面に触れたことで手の皮がめくれてしまう。

 麻痺してて見た目ほど痛くないが、戦い終わったら絶対痛くなるやつだ。

 未来に不安を抱いている俺にも構わず、テイバンは氷塊を撃ち続けた。


 氷塊に注意を向けさせて足元を(おろそ)かにさせる、単純な手だが見事に引っ掛かってしまった。

 しかも地面の凍結に気付かせないよう、氷塊と並行して冷気も放出していたのだろう。

 セロブロの言う通り、総合的な高い魔法力に加え、自身の属性を深く理解して戦闘を有利に進めている。


「これが生徒会副会長の実力」

  

「どうしたアルム=ライタード! お前の力はそんなものか!」


 守勢に回る俺を見兼ねて、テイバンは分かりやすく挑発してくる。

 楽に勝てると高を括っていたが、セロブロを圧勝している相手が楽なわけ無いか。


「お望み通り、本気で行かせてもらう!」


 俺も覚悟を決めて地面に指を突き立てた。

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