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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
生徒会

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生徒会の全容

 レイナに叱られた翌日の放課後、俺は一人で生徒会室へ向かっていた。


「とりあえず悪い(うわさ)が流れていなくて良かった……」


 ミリエラから恨みを買ったように見えなかったが、一応念頭に入れて登校するもいつも通りの学園生活を送ることが出来た。

 しかし昨日のやり取りを見たクラスメイトに生徒会に入るのかどうかかれた。 

 無論、活動内容も所属している人間も分からないためはっきりと言わなかったが、『生徒会』と言うのだから生徒が過ごしやすい学園を作るとかそんな活動だろう。


「ここか……」


 『生徒会室』と書かれたドアプレートを見つけ、足を止める。

 生徒たちの教室は二階以降で、一階は職員室や図書室など特別教室が並んでいる。

 この生徒会室が一階にあるということは、特別な生徒という意味もあるのだろう。


 俺は扉を三度叩く。


「入ってください」


 ドア越しから女性の声が聞こえる。


「ッ……⁉ 失礼します……」


 二日前の状況とあまりに似ていたため、嫌な記憶が頭を過ぎってしまうが顔に出さないよう(こら)え、落ち着いてドアを開ける。


「生徒会へようこそ、どうぞこちらへ」


 入室すると長い藤色(ふじいろ)髪の綺麗な女性が出迎え、一人用の革ソファーへ誘導する。

 彼女以外にはミリエラと他二名の生徒がいたが、彼女らは俺に見向きもせず各々の仕事に従事していた。


「マリアさん、紅茶を()れて頂けますか?」


「分かりました」


 俺をソファーに座らせるとマリアという小柄な女子生徒に指示を飛ばし、彼女も向かいのソファーへ身を預けた。


「初めまして、生徒会会長を務める五年生のカルティア=エンドリアスと申します」


 自身の豊満(ほうまん)な胸に手を当てて自己紹介をした。

 『エンドリアス』が家名ということは王族の人間ということか……。

 

 俺は心臓の鼓動が早くなり、(ほお)に汗が伝うのを確かに感じた。


「どうも、一年B組アルム=ライタードです……」


 王女への第一声はたどたどしい自己紹介から始まってしまう。

 普段から言葉遣いとか意識してないから、ボロ出たらどうしよう……!


「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」


 自分では気づかなかったが、いや気付きたくなかったが、緊張しているように見えたらしい。


「ご厚意(こうい)、感謝します」


 この言葉選びで良いのか?

 ご厚意って何だっけ? 

 感謝しますって上から目線じゃないか?

 ヤバい、分からん! ってそれよりも普段使わない言葉をここで使うなよ!


「紅茶をお持ちしました」


 自分が発した言葉に翻弄(ほんろう)されている俺に対して淡々と紅茶を置き、小柄な女子生徒は自分の仕事に戻っていった。


 何をしているんだおれは!

 あんな小さな女の子ですら堂々と振る舞っているのに、負けていられない! 


 俺は淹れられたばかりの紅茶を一息に飲み干す。


「熱くはありませんか……?」


 心配した面持(おもも)ちでカルティアが尋ねる。

 正直言うと、滅茶苦茶熱い……! けど、あの子からの熱烈なエールだと思えば、この程度の火傷は火傷の内に入らない。


「大丈夫です!」


 俺は表情筋を完全に制御し、堂々と答えた。


「ではこれから私たちの活動を説明していきたいと思います」


 そう切り出してカルティアは大きく三つに分けて説明を始めた。


 一つ目は学園風紀(ふうき)の取り締まりだ。

 学園の中を歩き回って監視するわけじゃないが、風紀を乱す(やから)を見つけたら声を掛け、場合によっては実力行使(こうし)で場を収める。

 これは学園側から許可を得ているため、やり過ぎなければ問題は無い。


 二つ目は学園行事の運営だ。

 この学園では一年を通して様々なイベントが開催される。

 そのため生徒たちや関係者が安全にイベントへ参加できるよう裏方(うらかた)として働く。


 三つ目は他校との交流だ。

 教師らだけが集まって話し合うだけでなく、生徒たち自らも他国の学園と交流を(はか)ることでより素晴らしい学園づくりを促すということで、他校を訪れる機会を設けている。 


「――――これが私たちの主な活動になりますが、何か質問はありますか?」


 簡潔に分かりやすくまとめられた説明のお陰で活動内容に疑問は無い。

 疑問があるとすれば――――。


「……俺が生徒会に誘われた理由は実力を認められたからですか?」


「そうですね、その認識で間違っていません」


 俺の疑問を即答するカルティアだが、どうしても引っかかる部分を感じた。


「……浮かない顔ですね。遠慮せず、なんでも聞いてください」


 王族という圧倒的な身分差にもかかわらず、彼女は笑顔で対応する。


「では訊きたいのですが――――」


 そんな彼女の優しさに甘え、俺は腹を決める。

 

「この学園に在籍(ざいせき)している人たちの大多数は貴族の出自です。そしてこの生徒会には貴族の者しか籍を置いていません。平民の自分が選ばれるのはあまりに不自然だと思います。よろしければ、実力以外で俺を選ぶ理由を教えて頂けますか?」


 俺の問いに紫紺(しこん)の瞳が大きく見開く。


「実力、以外……ですか」


 カルティアは少しばかり時間を欲しい、と言って他の生徒会役員の元へ行った。


 彼女たちが意見交換を行っている間に、俺も自身の立ち位置を客観視する。

 まず風紀の面で考えれば、実力と知名度が大きく知れ渡った俺を誘う理由は納得できる。 

 だがそれ以外の面から見れば俺を誘う必要はない。

 むしろ俺を誘うことで他の業務に悪影響を及ぼすかもしれない。


 特に分かりやすいのが他校との交流だ。

 他校の生徒会と交流する場合、確実に向こうの貴族がいるだろう。

 もしかしたら俺より身分が高い人間しか居ない可能性も全然ある。

 平民が所属している生徒会だと低く見られ、言葉遣いやマナーの悪さで格を落とすかもしれない。

 少し被害妄想が過ぎるかもしれないが、平民を入れるという事はそれだけのリスクを(はら)むことになるだろう。


「お待たせしました」


 答えを決めた彼女は再び話の席に戻る。


「時間を取らせておいて申し訳ないのですが、生徒会に入ることを確約して頂かなければ、教えることは出来ません」


「……実力以外で勧誘した理由は、それ程までに重要なものだという事ですか?」 


「私たちも話せないのは心苦しいですが、そうなります」


 カルティアは重々しく首を縦に振り、苦悶(くもん)の表情を浮かべた。

 これが演技かどうか見分けがつかないが、これから下す選択に関係は無い。


「分かりました、生徒会のお誘いは――――断らせていただきます。わざわざ俺の為に説明をして頂き、ありがとうございました」


 俺はソファーから腰を上げる。

 生徒会の活動は非常に魅力的だが、彼らに迷惑を掛けてまでやりたいとは思わない。

 せめて実力、地位ともに兼ね備えたセロブロにでも声を掛けておくか――――。


「待ってくれ!」


 カルティアの横を通り過ぎたところで、生徒会唯一の男子生徒が声を上げる。


「アルム=ライタード、俺と勝負をしないか?」


「勝負、ですか?」


 突然の提案に思わず聞き返してしまう。

 それに見覚えあると思ったら、前にセロブロに説教した公爵(こうしゃく)か。


「ああ、俺と一騎打(いっきう)ちで勝負をしよう! 俺が負けたら、お前を誘ったもう一つの理由を無条件で教えてやる。だが、お前が負けたら生徒会に入れ!」


「……その勝負、俺が負けて生徒会に入っても理由は教えてもらえますか?」


「それは会長が判断する」


 俺が生徒会に関心が無ければ、受ける必要も無い勝負だが悪い条件ではない。

 こいつに勝って勧誘した理由を聞いたとしても加入義務は発生しないし、生徒会自体には興味がある。

 しばらく戦いから離れて生活したかったが、この好機(チャンス)を逃すのも惜しい。 


「……分かりました。その勝負、受けて立ちます」


「よく言ったな! じゃあ明日の放課後、演習場で戦おう。言っておくがお前が倒した上級生と俺を同列(どうれつ)に考えるなよ」


 傲慢な物言いに聞こえるが、立ち振る舞いやオーラは他の生徒と一線を(かく)しているのも事実だ。


「ええ、楽しみにしています」


 俺は一騎打ちの約束を取り付け、生徒会室を後にした。

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