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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔物討伐試験

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正体不明の第三勢力

 剣に感じた違和感に思わず手を離すと重力に逆らって浮かび上がっていく。


「は……?」


 そんな異様な光景に目を奪われたのも束の間、剣に続くように木や黒棘(ブラックパレス)、俺も含め周囲の物体全てが浮かび上がった。


「クッソ! リーゼンの仕業か」


 術者と思しきリーゼンも浮かび上がり、今では俺の遥か頭上を浮遊していた。


「逃がさねえぞ!」


 俺は周囲の瓦礫(がれき)を利用してリーゼンを仕留めようと上り詰める。

 このような相手の魔法範囲内に留まるケースは危険なため、即座に範囲外へ逃げることが優先すべきなのだが、今の最優先事項はリーゼンを始末すること。そのためなら多少のリスクは許容しなければならない。

 せめてどんな攻撃にも対応するため警戒態勢は崩さないでおこう。


「……?」


 しかしそんな予想とは裏腹にリーゼンからの攻撃は来なかった。それどころか視線を向ける素振りも見せず、いつの間にか触れられる距離まで近付くことが出来た。

 演技である可能性も考慮できるがここまでおびき寄せる理由はない……。


「まさか⁉」


 確信に近いものを得た俺は無警戒に彼の体に触れる。


「…………」


 彼の肉体はなんの反応も示さず、冷たく無機質な肉塊と成り果てる。


 リーゼンはすでに死んでいたのだ。

 あれだけの傷を負わせたなら死んでもおかしくはない。だが懸念点が一つある。


「じゃあこの魔法は誰が発動したんだ……?」


 どんな魔法属性や特性を有する魔法でも術者が死ねば効力を失う。

 リーゼンの仲間が潜んでいるのか? そんな予感が頭を過ぎるが、敵の居場所も数も正体さえも分からない。

 それにこれだけの範囲と出力を持続できる魔法師に、今の俺が勝てるのか?


 予想だにしていない展開に動揺しながらも、一人でも多くの命を助けられるよう最善の選択を探し出す。

 

 そして自身との問答の末、次の動き(アクション)が確定する。 


「フェルンたちと合流しよう」


 一度、見えない敵の存在を忘れて救うべき人たちに意識を向ける。

 俺は体表(たいひょう)に魔力を纏わせ、魔法影響に対する抵抗力を高める。徐々に浮力が弱まっていき、地面に足を付けた俺は急いで生徒たちを(かくま)っている結界内に入る。


「ヒッ⁉ ア、アルム君ですか、驚かせないで下さい!」


 フェルンは顔や髪に血が付いたまま、騎士団の手当てを行っていた。生徒たちも彼女に付き添って手当てをしたり、介抱したりしている。

 結界内にまで干渉されていないようだがそれも時間の問題だろう。手遅れになる前にさっさとこの場から離れた方が良さそうだ。


「ちなみに外の戦いはどうなりましたか?」


「無事勝利を収めることが出来たので、その報告に参りました」


 フェルンの問いに答えると、緊迫していた結界内に歓喜の声が溢れる。

 伝えなければならない事実はこれからだが、一時的にでも緊張を解いたほうが心労も少ないだろう。


「何はともあれ無事で――――その血は何ですか⁉」


 彼女は安堵(あんど)の表情を浮かべるも、血で染められたのシャツを見て再び驚愕(きょうがく)する。

 無論、リーゼンの返り血だが、頭に血が上り過ぎて全然気づかなかった。


「落ち着いてください、リーゼン返り血です」


「それなら良いのですが……」


「あんな血に染まるぐらいの戦いってどんな戦いだよ」


「隊長クラスの戦闘を俺たちが想像できる訳がねえだろ!」


「オリバー隊長を倒した相手にすげえな!」


 生徒たちも落ち着きを取り戻せたことだし、そろそろ本題に入るとしよう。


「しかし残念ながらリーゼンを倒した直後、何者かが大規模な魔法を展開し、結界外は強い浮力で安全とは言い難い状況です。ですのでみんなで協力して、この場から離れましょう!」


 簡潔に分かりやすく彼らに状況を説明する。


「マジかよ、ようやく落ち着けると思ったのに……」


「弱音を吐いても仕方ないでしょ。彼の言う通り協力しよう」


「そうです! 動くのが難しい方には手を貸してあげてください!」


 怪我人が少ない学園生を中心に準備に取り掛かった。弱音をこぼした生徒は何人かいたが、先に朗報を伝えたお陰で大多数は気持ちを取り持てたようだ。


「少し良いか!」


 手負いの騎士が声を荒げる。


「何か気に障らない事でも?」


「『何者かが大規模な魔法を展開した』って話が本当なら、そいつを倒せばいいだろう!」


「その考えにも至りましたが居場所も正体も不明な以上、撃退は困難だと判断し、避難を優先しようと考えました」


 丁寧に説明して何とか納得して欲しいところだが、彼の理解を得ることは出来なかった。


「居場所も正体も分からないのなら尚更(なおさら)動かないほうが良いだろ? 救援弾は王都からでも見える。もうじき騎士団本部から応援が来るはずだ」


「王都から応援が来るなら無理に動かなくてもな……」


「うん、結界の外は魔法が展開しているらしいし大人しく待ってたほうが良いかも」


 彼の提案によって避難を開始しようとしていた生徒たちですら足が(すく)んでしまう。

 状況が悪化しないのならそれが最善の判断と言える――――が、あくまで状況が悪化しなかった時だけだ。結界内にいるため俺もはっきりとしたことは言えないが、先ほどより魔法力が強まっていくのが感じる。

 これ以上時間を掛けてしまうと避難という選択肢すら取れない状況になってしまうだろう。


「冷静に聞いて――――」


「聞きたい事があるんだけどよ」


 一刻も早くみんなを説得しようと口を開くもほかの騎士に遮られる。

 仕方なく彼の質問に答える事にした。


「本当はリーゼンに勝ったって嘘なんじゃねえのか?」


「……何故そう思ったのですか?」


 込み上げてくる怒りを抑えつけてその考えに至った理由を問う。


「術者の正体も居場所も分かっていないのに、どうして術者が居るって分かるんだよ。外の魔法はリーゼンの仕業なんじゃねえのか?」


「それはあり得ません、俺はこの手で彼が死んだのを確認しました」


「どうだかな。俺は外の状況なんて分からねえし、リーゼンの野郎が死んだのかも見ちゃいねえ。どこまでが本当でどこまでが嘘なのか……」


 その騎士はみんなに問いかけるように心中を明らかにする。


「命を助けてくれた人にこんな事は言いたくねえけど正直な話、この結界に逃げて来たんだろ。俺たちを説得して結界の外へ出させれば、数の差でリーゼンを殺せると考えてな」


 彼の言葉に(まど)わされ、数人の生徒が疑念の視線を向ける。

 浅い考えだが、リーゼンより劣っていれば一つの戦術として使っていたかもしれない。

 しかしこれは不味い状況だ。今の俺には彼の意見に対する反論材料がない。リーゼンの遺体があれば、議論の余地など無かったというのに。


「……リーゼンを倒した証明をこの場で出来ませんが、この服に付いた血が彼の血であることは証明出来ます。そうすれば信じて頂けますか?」 


「まあ、それが本当にリーゼンの血なら信じよう」


 言質を取った俺は仕方なくジャケットのボタンを外し、ズボンからシャツを引っ張り出す。


 みんなを逃がそうと来たのに、俺は一体に何をしているんだ……。


 服を脱がされる状況に困惑していると――――――――ビシィィ、と亀裂音が結界内に響き渡る。


「「「えッ?」」」


 俺を含める全員が音源に視線を向けると、黒一色の結界壁に無数の亀裂線が芸術的に描かれていた。


「……ウソだろ」


 直後、パリィィンと結界は砕け散る。俺は再び体表に魔力を纏わせた。

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