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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会四日目

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致命の一手

 久しく忘れていた胸の高鳴り


 血が飛び、肉が裂け、人としての理性すら消え失せ、衝動に全てを委ねる高揚感


 俺はこれを望んでいたのか――――それは……。


「殺した後に分かるっ!」


 アルムは地を蹴って激しく剣を打ちつけ合う。


「ああっ! 殺してみせろォ!」


 ベレスは烈火を纏った拳をぶつけ、獣のような息遣いが場を満たした。


「バリウス殿、これ以上の戦闘継続は取り返しのつかない事になります。即刻、戦闘を中断しましょう」


「……考え過ぎではないのかね」


 レイゼンは提案するがワイングラスを片手に持ったまま静観の態度を貫く。


(言われなくとも分かっているわ若造! だが止めに入ったら最後、ベレスからどんな報復をされるのか考えたくもない……!)


 しかし心中は決して穏やかではなく、ベレスの反感を買わずに試合を止める方法を考えていた。


「……そんなに自分の生徒が心配なら貴殿が介入すればよいではないか。貴殿の実力なら死に損な――――手傷を負った彼らを力づくで抑え付けることも出来よう」


(そうすれば少なくともベレスの敵意がこちらに向けられる事はない。上手くいけばレイゼンを始末できるかもしれんしなぁ)


 転移魔法を駆使した高い魔法力はもとより、学園理事長という社会的地位。

 そのうえ今年度の魔導大会はアルムを中心にエンドリアス学園の大躍進。

 そして14歳という若さでベレスに匹敵する実力と今後の成長性。


 魔導大会で確固たる地位を手に入れたバリウスは非常に焦っていた。


「……良いでしょう。どちらかが降参する判断をしてくれる事を期待していますが、万が一の場合は私が介入します」


 汚らしい謀略に唾を吐きたいが彼らが対応するとも思えず、仕方なくバリウスの提案を聞き入れる。


(私だって貴方の戦いを邪魔したくありません。ですから少しでも賢明なご判断を)


 密かに祈るレイゼン、しかし彼らの戦闘は激化と一途を辿る。


「【黒棘(ブラックパレス)】」「【空裂破断(くうれつはだん)】」


 アルムは地面一帯が針山へと変貌させるが、空間に描かれた斜線が軌道上のすべてを断ち切る。


「逃がさねェよ!」


 距離を取らせまいと間髪入れずに追撃を試みるベレス。


「逃げねェよ!」


 アルムは黒棘で姿を隠した一瞬の隙に影を伝って彼の背後へ移動する。


「【魔黒閃(ビルスター)】」


 指先から熱線を放射、しかし空間に干渉していたベレスは即座に察知。

 手中抹消で強引に右腕を動かし手の平に収束、跡形もなく霧散した。


「三度も同じ手は――――」

「まだだっ!」


 直後、アルムの視線の先に二体の影武者が出現。

 魔黒閃の構築式が組み込まれた二体は再び熱線を放出する。

 今度は左手を突き出し、熱線を受け止めた。


「【黒器創成(くろきそうせい)】!」


 アルムは長剣を形成し、絶え間ない怒涛の攻撃でベレスの防御を崩しに掛かる。


 依然として彼に背後を取られ続けるベレス。

 長剣を片手に接近するアルムに対処したいが影武者の放射は継続中。


(その間にアルムの剣が俺の体躯を貫くことなど造作もない

 左腕を動かしても死ぬ

 空裂破断も間に合わない

 空間干渉で剣の位置は把握できても身体の構造上、掴むことも叶わない……)


 ベレスは直感で理解する、痛みを伴わない選択はどこにもないと。


「はっ……⁉」


 アルムは目の前の光景に驚愕する。

 ベレスは意図的に後ろに倒れ、自らの意思で内臓を貫かせたのだ。


「がはっ‼」 


 食道から赤黒い血が込み上げて来るもベレスは口角を上げる。


(刺したのは小腸、急所は外させた……!)


「自傷覚悟の決死作戦! パクらせてもらったぜええェェ‼」


 彼らの間は僅か数センチ、ベレスは右肘を振り回すとアルムの側頭部に鋭い衝撃が走った。


「があァ――――⁉」


 予想外の行動に不意の一撃、頭部に更なる衝撃が加わり彼の視界は白く弾ける。


「っ……は、ぁ……!」


 再発する激痛に声が震え、途切れ途切れの呻きを上げた。


(ああっ⁉ 頭割れる……はやく、速く立ち上がらないと……)


 地面を掴もうと伸ばすが指先は力なく滑り、藻掻くように身をよじる事しか出来なかった。


「はぁ! ボコボコにしてやるっ!」


 ベレスは倒れた彼に馬乗りになり、逃げ道を塞ぐと炎の尾を引きながら拳が一直線に振り落とされる。


「ッ……!」


 咄嗟に腕を挟み、顔を守るアルム。

 しかし力任せの拳は二撃、三撃と畳みかけるように繰り出された。


 ドンッ!


「「「…………⁉」」」


 文字通りサンドバック状態の一方的な暴力に周囲は息を呑み込む。


 ドゴッ!


 衝撃音が途切れることなくフィールド中に響く。


 バギィ!    


 生成した結晶は即座に砕かれ、度重なる打撃は骨すら粉砕する。


「――――【魔黒閃(ビルスター)ァ】!」


 せめて拘束を解こうと光線を放つが、何事も無かったかのように手の平に収束されベレスの暴力は止まる事を知らない。


「止めて……もう止めて……」


 言ってはいけないと抑え込んでいたレイナ。

 しかし殴られ続ける息子の姿に止めど意もなく溢れてしまう。


「アルム! もう頑張らなくていいィ! 降参してくれ!」


 妻の悲痛な声にロイドも感情を爆発させる。


「アルム……!」


 ラビスはどうすれば良いか分からず、彼女にしがみ付くマインは見た事のない両親の様子に震えるしかなかった。


「アルム! お前はよくやったよ!」

「アルム君! もう無理はしなくて良いから!」


 状況を巻き返す事は不可能と判断したテイバンとスベンも降参するよう呼びかける。


「勝負は着いた、馬鹿な意地を張らずに試合を降りろ……!」


 セロブロは一方的に蹂躙される彼を直視することが出来なかった。


「何やってんだ審判っ! 早く試合を止めさせろよ!」

「もう勝負は着いただろうがっ!」

「死んじまうぞォ!」


 試合を面白がっていた観客たちですら声を上げる事態。


「…………」


 しかし審判の彼は口を開くどころか動こうともしない。

 しかし職務を放棄しているわけでは決して無かった。


『アルム選手の意識はまだあるようですね』


『そうは言ってもこんなものは学生の試合じゃなくてただの殺し合いですよ!』


 声が拾われている事を気にも留めず強く訴えるサイベル。

 エリアも同様の感想を懐くが、自分たちが試合に介入することはできない。


 彼はせめて手遅れにだけはならないことを切に願った。

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