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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会四日目

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望まない彼女

『では左の1番と2番の選手は10分後に試合を始めるので準備を始めて下さい』


 トーナメント発表と競技説明を終えた俺たちは各々の学園席に戻った。


「アルム君のあの配置は明らかに公平性が欠けています!」


 戻って来るなり俺に迫り来るようにマリアは近付いてきた。


「マリアちゃん少し落ち着いて。32人ならまあ、そうゆう事もあるんじゃないかな……?」


 引き留めようとするスベンも彼女と同じことを思っているようで強く出られなかった。


「こんな采配、ベレスが介入したに決まってるよ!」

「自国だからって好き勝手やりやがって……!」


 エンドリアス学園の生徒たちを中心に不満の声が漏れ出す。


「確かにアルム君の優勝を阻む意図的なものだと否定はできませんが、その代わりにテイバン先輩やライザさんは良い配置にいます」


「大会連盟がどのように配置しているのかは分かりませんが、全体として見れば私たちだけが損をしているという訳では無いでしょう」


 冷静に分析し、彼らの不満を抑えようとミリエラとカルティアは声を上げる。


「カルティアたちの言う通りだ、それに当の本人は初戦で戦いたかったとか言っている始末。どれだけ騒いでもトーナメントは変わらないんだからその(いきどお)りは声援で発散しような!」


「……まあ本人が文句ないなら外野の俺たちが言ってもな」

「そうだな、それにああ言ったけどアルムとベレスの戦い(すげ)ェ楽しみだよ」

「アルムも俺たちも望んでいた事だし……むしろ好都合か⁉」


 そしてライザの口添えもあって不満が爆発することを未然に防ぐことに成功した。


「一か月前の顔合わせのときは皆から反感を買っていたのに今じゃ中心人物だな」


「中心人物なんてとんでもない。生徒会の方やライザ先輩みたいな人たちが中心で俺は問題児(トラブルメーカー)なだけですよ」


「……お前はどんな時でも変わらないんだな」 


 背後から話しかけるテイバンに軽く返すとぽつり呟いて同級生の下へ向かって行った。


 ライザの言っていた通り顔色は多少良くなったが普段のようにはいかないようだ。

 しかし下手に触れて地雷を踏みたくない俺は階段を下って家族のいる席へ向かう。


「モテモテだったなぁ、アルム」


「何言ってるの? ただの声援でしょ」


「お兄ちゃん凄くカッコ良かった!」 


「お疲れ様アルム、ここ座っていいよ」


「ありがとっ」


 家族と一緒に座っていたラビスは身体を左に動かして空席を作る。

 おれは感謝を伝え、ロイド、レイナ、マイン、俺、ラビスの順で階段状の石造りに腰かけた。


「周りの生徒さんたちが話していたけど、第三回戦で昨日のベレス君と戦うんでしょ。しかも勝たないと優勝は無いって……」


 レイナは昨夜の暴挙が相まって心配した様子で尋ねる。


「そんな顔しないでよ母さん。確かにこれまで戦ったどんな奴より強いのは間違いないけど勝てない敵じゃないよ」


「そうだぜレイナっ! 心配なのは分かるが息子を信じてやろう」


「ラビスお姉ちゃんに乱暴した人にはいっぱいお仕置きしてね!」 


「ああ、全部お兄ちゃんに任せておけ!」


 彼女を想ってくれるマインの頭を優しく撫でた。


「ラビスも楽しみにしててくれよな!」


「う、うん……でもあまり無理はしないでね。アルムが傷付いてまで頑張ってほしくないから……」


 彼女は治った自身の首を触れながら本心を口にする。


「あっ、でも優勝して欲しくないわけじゃ全然無いからね! ただ私のせいでアルムまで痛い思いをしてほしくなくて……ごめん、少し自惚(うぬぼ)れてるね……」


 自分のために戦っている訳ではない、そう自覚した彼女は自然と目線が下へ向き、肩まで伸びた茶髪がラビスの横顔を覆い隠す。


 ここ最近は戦いばかりで忘れていたけど、()()()()()()()()()()()()……。


「自惚れなんかじゃないよ、ラビス」


 俺は彼女の右肩を掴むと顔を上げさせ、深緑色の瞳を覗き込むように見つめた。


「俺がここまで怒っているのはラビス、お前が傷付けられたからだ。ヤツに勝ちたい理由は他にもあるけどそれは間違いない」


 恥ずかしさで赤らめていた頬は急激に紅潮し、顔全体にまで広がっていく。


「だけどお前は俺が傷付くくらいなら水に流すとそう言っている。でも俺は許せない、それがお前の本意で無かったとしてもだっ!」


 ラビスために、そんな大義を背負いながら戦おうと思ったが彼女自身はそれを望んでいなかった。


「だから俺が傷付いて痛い思いをしても、それはお前のせいじゃない。でも大切な友達を傷付けられて、はらわたが煮えくり返るほど怒っている事だけは忘れないでくれよ」


「は、はい……」


 俺の正直な思いを伝えると彼女はか細い声だが聞き取れる声で返事する。

 あの男に勝って欲しい、とラビスから言ってくれるのが一番だが、戦いを好まず人を思いやれるのも彼女の魅力なのだ。


「大切な友達、か……」


「ああ、俺たち友達だろう?」


「……それは、そうだけどももう少し無いの? 友達以上の関係、とか……」


「友達以上の関係……そうだな」


 頬に熱を残しながらジト目で見つめ続けるラビスに俺は欲している答えを導き出した。


「分かったよ、俺たちは今日からしんゆ――――」

「親友だ、言うと思ったよ、アルムのばか……」


 俺の答えを待たずにラビスが合わせると悪口を言い残してそっぽを向く。


「馬鹿って、それ以上の言い表しがあるのか――――」

『では一対一(ワオン・デュエル)第一回戦、スタートですっ!』


 次の問いはサイベルの宣言によって見事にかき消された。 

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