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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会三日目

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宣戦布告

「ラビスちゃん⁉」


「てめェ! 今すぐその手を放せ!」


 彼女の細い首がベレスの右手に掴まれ、両足が地面から離れた。


「自国とは言え、学園の生徒に手を出すなんて許される行いではありませんよ!」


「すっこんでいろよカルティア、俺に用があるのはアルムだけだ」


「くっ……あ!」


「ラビスお姉ちゃんっ!」


 呼吸が出来ず苦しそうな彼女にマインが涙を浮かべる。


「ちょっとこんな時にも……」

「パパ、女の人苦しそうだよ」

「見ちゃ駄目だ……」


 催しに参加していた現地人や観光客は彼らを避け、衛兵ですら見て見ぬふりをした。

 ベレスがこのような暴力行為をすることは良くある事だった。

 無論、到底許される行いではないが彼を力づくで屈服させる者など居らず、ベルモンド王国の民は関わらないようにする事が最善の自衛手段だった。 


(ラビスさんの拘束を解くだけなら決して難しくはありませんが、他国の王都で暴力沙汰は――――)

「待ってください!」


 どうにか穏便に済ませようとするカルティアを余所にアルムは影の中に潜り込む。


「そうだアルム! 俺を恨み、憎め――――お前の本気を俺にぶつけろォ!」


 ベレスは右手の握力を一層強めながら周囲に点在する影に注目した。


「ここだ……」


 しかし予想外にベレスの正面、しかも数歩ほど届かない距離を開けて姿を見せた。

 アルムは左足を退いて向きを左に傾けると地面を蹴って鋭いハイキックが繰り出される。


「……?」


 見事な蹴りだったが命中するには離れすぎており、ベレスの目の前で披露する形になっただけだった。

 期待を大きく下回る行動にベレスは落胆しため息を吐く。


「……何をやって――――――――がぁっ⁉」


 直後、凄まじい衝撃が後頭部に駆け巡り、目の前が真っ白になる。

 完全に虚を突かれた彼はラビスを手放すとアルムは滑り込んで何とか受け止めた。


「ごほ、ごほっごほ……」


「ラビス、ゆっくり深呼吸しろ」


 激しく咳込む彼女の手を握り、落ち着かせるよう背中を優しく撫でる。


「はぁ、はぁ……ありがとね、アルム」


 (あざ)を作ってしまうほど締め付けられた彼女だが大事に至らずに済んだようだ。


「ッ……! ごめんな、俺のせいで……」


 巻き込んだ彼女に謝罪すると寄り添いながらラビスと共に立ち上がる。


(いって)ェ、まだ奥の手があったのか? つくづく面白い奴だ」


 脳震盪(のうしんとう)を起こし、立つことすら危うい状態にあるにもかかわらず彼は戦意を失うどころか更なるやる気を引き出した。


「お前が時と場所を選ばない最低な人間なのは知っていたが、無差別に人を傷付ける(くず)とは思わなかったよ」


「……それで?」


「こんなに腹を立てたのは初めてだ。お前みたいな人間と関わりたくはなかったけど、なんの罰を与えられずに野放しにされる事だけは我慢できない。それが誰かの思惑通りであったとしてもだ……!」


「だったらお前は何がしたいんだ?」


 続く言葉を理解したベレスは嬉々とした表情で回答を求める。


「ベレス=ダーヴィネータ、望み通り殺し合おうぜ」


 彼の言葉に満足したベレスは地面を蹴って屋根に着地する。


「くふふふっ――――明日は最高の闘いをしよう、アルム=ライタード」


 アルムを見下ろしながら言い残し、彼らの下から去って行った。


「ごめんなさい、私が連れてきたせいで……!」

「お姉ちゃん死なないでェ!」

「ラビスさん、怪我の具合はどうですか?」


 嵐が過ぎ去るとレイナやマイン、カルティアたちが一斉に押し寄せる。


「はい、喉が少し痛いですけど、大丈夫です……」


「ふぅ、この場で戦うんじゃないかと肝を冷やしたぞ」


「流石の俺でも公共の場で戦うほど血に飢えてませんよ」


「しかしベレスとあんな約束をして大丈夫なのか?」


「大丈夫、と言ったら嘘になりますがどのみち出場するつもりだったのでそのあと押しと考える事にします」


 テイバンとライザは心配で声を掛けるが彼は前向きに捉えた、というよりは捉えるしかなかった。


「お前って奴は……!」


 ライザは彼に尊敬の念を抱くとアルムの両親に向き合う。


「自分は五年生のライザ=バルトールと言います。あのような暴挙は上級生である私が率先して対応しなければならないのですが、息子さんのお陰で被害を最小限に抑えることが出来ました。彼のような優秀で聡明(そうめい)な魔法師を育ててくれた貴方たちに感謝を……」


「頭を上げて下さい! 私は何もしてませんから……」


「そうですっ! 魔法師の育成なんてとても、ただの息子として育てただけですので……」


 深々と頭を下げる彼にロイドたちは慌てた。


「私からも言わせてください。本来国民を守るべき立場であるにも関わらず申し訳ありませんでした」


 次いで頭を下げる彼女にレイナたちは絶句し、言葉を失った。


「カルティア様⁉ このような場で頭を下げるべきではありません!」


「テイバン、国民に寄り添おうとせず体裁ばかり考える王に存在する価値は無いと思います」


「であればカルティア様、此度(こたび)の失態はベレスの暴挙を止めれなかった自分にあります! それに謝罪をするにしても被害者であるラビスや救出したアルムにするべきなのではないのですか?」


「勿論そのつもりです。しかしまずは不当に《《ご子息の婚約者》》を傷付けられ、傷心しているお二人に謝罪をするべきだと思います」


「……確かに、カルティア様のおっしゃる通り、ですね」


 早計な判断と糾弾するテイバンだが彼女の言い分を聞き、納得したようだった。


「義理とは言え、自分たちのせいで危害が加えられたなんて辛いだろう」

「罪悪感に(さいな)まれたライタード夫妻にまで気に掛けるなんて……」

「流石はカルティア王女殿下!」


 アルムたちを囲む生徒たちも納得し、賢明な彼女の判断を褒め称えた。

 当事者四名と幼児一名を除いて。


「止めて下さい、これは称賛に値する行いではありません。自身の失態を謝罪しているだけなのですから」


「……カルティア先輩。ひとつお訊きしたいのですが、『ご子息の婚約者』とは誰を指しているんですか?」


「……何を言っているんです? アルム君とラビスさんに決まっているじゃないですか」


「……俺がご子息で」 「私が婚約者……?」


 彼女の言葉を唱えながら顔を見合わせるアルムとラビス。

 未だに状況理解が追い付いていない彼らに対し、一足早くレイナが動き出す。


「お気遣いありがとうございます王女殿下。しかし不用意に他校の生徒を案内した私たち責任、貴方様が謝罪する必要はありません」


 彼女は家業で培った接客能力を駆使してカルティアに対して飄々(ひょうひょう)と言葉を発する。


「嫁いでくるラビスちゃんの首の(あざ)は治療で治るんですよね?」


「はい、我が国の威信にかけて傷一つ残さず完璧に治療いたします」


「……ッ――――⁉」


 彼女らのやり取りを経て、状況が思わぬ方向に進んでいる事に気が付いた。


「だからラビスは婚約者じゃないと言ったじゃないですかァ! 母さんも適当なこと言わないで」


「何もそんな照れる事はないよ。まあ成人前から婚約者がいるというのはあまり耳にしないけど……」


「スベン先輩の言う通りですよ! 冗談でも言って良い事と悪いことがあるんですから!」


「マリア先輩まで……だからすべて誤解なんですって――――」


「そんな強く否定しなくてもいいじゃん、アルム……」


「女性を泣かせるなんて貴方も最低な人間ですね」


「ちょっと、勘弁してくださいよぉ……」


 悲しそうに呟くラビスにミリエラは持ち前の毒舌でアルムを糾弾する。


「……お姉さん、守れなくて済まなかった」


「大丈夫だよライザのおじさん、ラビスお姉ちゃんはお兄さんと私が守るから!」


 妹のマインにも謝罪するライザだが彼女は両手に握り拳を作った。


「ははっ、それならお姉さんも安心だな」


 マインの(したた)かさに驚きながら彼女の頭に手を添えた。


(だれか、俺たちの関係を知っている人物……セロブロでも誰でも良い!)


「誰か助けてくれええええェェ――――‼」


 アルムは旧敵に助けを求め、街道は賑わいを取り戻しつつあったが約束がなくなった訳では無い。


 残りの催しを楽しんだ後、ベレスとの決闘の日を迎えることとなる――――。

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