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死神だった俺、暗黒魔法の転生者として平和な時代で再び戦いに巻き込まれる  作者: バッチョ
魔導大会三日目

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終息に向けて

「「…………」」


 カルティアとエミリーは不安な面持ちで戦場の音が鳴り響くほうに視線を向けていた。

 最初こそ世間話や敵が攻めた時の対処など語り合っていたが、試合が進むごとに会話は減っていき、開始から30分以上が経過した今ではすっかり口を閉ざしていた。


「……かなり激しめに戦っているようですけど、私たちはここで待ってて良いんでしょうか?」


 最善の判断を下せる自信が無かった彼女はカルティアに尋ねる。


「良いのか悪いのか、と訊かれたら決して良くは無いでしょう、理想はアルム君を援護し、少しでも負担を減らすことです……」


「しかし絶対的な敗因である水晶球(クリスタル)が安全な場所で守られていることで彼が戦いに集中できるという利点もあります」


(だからこそ動く判断を(にぶ)らせる、彼を想っての行動が裏目に出てしまうのではないかと……しかし彼が危機的状況を迎えているのなら、私は……!)


「エミリーさんはどうしたいですか?」


 意を決したようにカルティアは彼女の目を見つめる。


「わ、私はカルティアさんの意見を尊重します……」


「それではいけません、貴方は決勝戦まで勝ち抜いた選手で私たちのチームメイトです。ご自分の考えを口にしてください」


 自分に自信がないエミリーは彼女に気圧され、(うつむ)いてしまう。


(うぅ、やっぱりズルしてまで勝ち上がるんじゃなかった。()()()()()も切れちゃったし……とりあえず意見は言っておかないと……)


 エミリーはゆっくりと顔を上げ、彼女の考えを読み取ろうと試みる。


「――――綺麗(きれい)な顔……」


「え……⁉」


 しかし凛々(りり)しくも女性らしい整った顔立ちに見惚れ、心の声が漏れてしまいカルティアは懐疑的な顔を浮かべた。


「ああっ、じゃなかった! いきたい、行きたいですっ!」


 必死に取り(つくろ)おうとしたエミリーは一か八か彼女が欲しているであろう言葉を発する。


「本当ですか⁉ では一緒にアルム君を助けに行きましょう!」


「え、あっ、はい!」


 彼女の勘は見事に的中し、失言を追及されることなくカルティアは水晶球を持って戦地へ向かって行った。


(何とか上手くいったけどあんな強い人を助けられる訳ないじゃん、私の馬鹿ァ……!)


 エミリーは安堵と不安の反する感情を(いだ)きながら彼女の背中を追いかけた。


 ***


『ここで離脱したタリオナ選手とセロブロ選手が参戦する、しかし奇襲は失敗に終わったようだ!』


『あの攻撃を防げるのは流石としか言いようがありません。ですが彼女らの目的は奇襲だけではないようにも見えます』


 残念そうに発するサイベルに対し、エリアは密かな期待を含ませた。


「無様に敗走した雑魚共がなに言ってんだ!」


 アルムとの戦いを邪魔されたベレスは彼女たちに特攻する。


「タリオナ、火力を上げるぞ」


「分かったわ」


「コソコソと話しても意味なんてねェんだよ!」


 ベレスは手中抹消を発動させ、地面を蹴って大きく跳躍した。


「お前たちの蛮勇はこの俺が跡形もなく消してやるっ!」


「【炎々する槍(フレッド・スピア)】」


 タリオナの頭部に狙いを定めた時、間に割って入るように燃焼した槍がベレスの手に接触する。


(そんな槍、俺の魔法で消し去って……)

「――――あっっっっっちいいいいィィ‼」


 燃え盛る槍を握ること数瞬、ベレスの手の平が真っ赤に焼かれ、皮下の筋繊維を露わにした。


「なに油断してんだ、お前なら触った感触もなく消せるだろ!」


「……頭は悪くないのに鈍い奴な、あんた」


「褒めるか(けな)すかどっちかにして!」


 非難する彼をアルムは横から口出しする。


(ベレスが行使する魔法以上の魔力密度で対抗すれば相殺できる。原理は魔法抵抗(レジスト)と同様、セロブロとタリオナの魔力層で相殺、そして熱された槍で火傷を負わせたのだろうが……)


「これで黒憑(クロウヴィル)で武具の無効化も難易度を増した、面倒になって来たぜ……!」


 アルムは彼女たちの乱入が更なる激化を引き起こすと確信する。


『思わぬ奇策で対抗するタリオナ選手とセロブロ選手、ここから再び三つ巴の戦いが始まっていくのかァ⁉』


「面白くなってきたじゃん!」

「タリオナ様は絶対に負けないもの!」

「そんな奴ら、さっさと蹴散(けち)らせベレスっ!」


 サイベルの実況とともに会場の熱がより一層増していく。


「……エルヴィス、これ持ってろ」


「うおっと! 危ねぇ……」


 流石のベレスも敗北の予感を感じ取り、水晶球をエルヴィスに預けた。


「さっさと負けを認めればいいのに、それとも左手も焼かれたいの?」


「はっ! 雑魚呼ばわりしたことは撤回してやる、だが二度も通用するとは思うなよ」


「貴様はどうするつもりなのだ、アルム?」


 睨み合う彼女たちを横目にセロブロは宿敵(ライバル)に視線を向ける。


「……こっちからしてみれば探す手間が省けたんだ、無論戦うつもりだ」


「俺が居ることも忘れるんじゃねえぞ!」


 アルムは足元の影を一瞥(いちべつ)し、エルヴィスも声を上げた。


(これで各々のチームで戦力差は無くなった、やっぱ乱戦はこうでなくちゃなぁ!)


 ベレスは舌を出し、出場したことを心の底から喜んだ。


「「「「「……――――――――」」」」」


 部外者同然だったセロブロとエルヴィスを交え、五人の間に張り詰めた空気が漂わせる。


 ……しかしアルムの右足が地面を擦らせ、全員が大きく目を見開いた。 


「【黒憑(クロウヴィル)】!」

「【手中抹消(インディレータ)】!」

「【高圧熱水(ヘブル・ポンプ)】!」 

「【炎々する斧(フレッド・アックス)】!」

「【円状の業火(サークレット・フレア)】!」


 タイミングを見計らったかのように五人同時に魔法を発動させる。


 他チームに対抗する手段を編み出したタリオナとセロブロ。

 本気で叩き潰そうとするベレスとやる気を見せるエルヴィス。

 状況に合わせて思考を巡らせ、優勝を狙い続けるアルム。

 そして彼らが集う戦場へ向かい始めたカルティアとエミリー。


 出場する選手や観客を含め試合展開は予想できず、より複雑化しながら終息の道を辿り始めた。

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