無意味な尋問
第三回戦が終了後して昼時を迎えており、午後の決勝戦に向けて英気を養おうと俺たちは店の中に入った。
「ラビスちゃん、お代はこの人が出すから好きなものを食べてね」
「その言い方で俺に払わせるのかよ! まあ全然良いんだけど」
「そんな、昼食に誘ってもらっただけで感謝してますから……」
「ご馳走になっちゃえよ、それとも父さんに奢られるのは嫌か?」
「ええっ! そういう事だったのか!」
「いえっ! 嫌なはずがございません! むしろご馳走になりたいです!」
「なら決まりね! みんなで一緒に食べましょ」
「お腹すいたぁ、早く行こうよ!」
時間帯が昼時であるため、多くの客が居たが何とか空いていた席に見つけることに成功する。
「いよいよ決勝戦だな。お父さん、緊張してきちゃったよ」
「何で貴方が緊張しているんですか?」
「そそっ、どうせ俺が所属するチームが勝つんだからさ」
午後の決勝戦は選手七名で班を形成して戦うチーム戦、どんな試合展開になるのか予想できないが百キロ走で班員との連携に自信はある。
「チーム構成はアルムたちが決めて良かったんだよね。やっぱ会長さんとかセロブロ君と組むの?」
「どうなんだろ。向こうも組みたいって言ってきたら組むかもな」
チーム構成の話し合いは決勝戦の一時間前に行われる。
これまでの試合展開や情報で実力や性格などで把握しているから、相性のいい選手と組みたい気持ちは強い。
「……会長さんってカルティア王女殿下のことよね。どういう関係なの?」
「急にどうした?」
「良いから答えて!」
理由も意図も分からず、レイナに問い詰められる。
こうなればカルティアとの関係を話すしかないが、正直に打ち明ければ面倒なことになるのは目に見えている……。
「ただの生徒と生徒会長の関係――――」
「生徒会に勧誘されてたのに、どうして嘘吐くの?」
「ら、ラビスさん……?」
そう言って虚ろな目で否定する彼女に思わず怖気づいてしまう。
「……説明が面倒くさくてね、まあ生徒会役員候補的な感じだから友人くらいに――――」
「放課後、二人きりで逢引してたって聞いたよ?」
「逢引って、そもそも何で知ってん――――」
「質問を質問で返さない! 会話のキャッチボールも出来ない息子に育てた覚えはありません!」
指で数える程度しかない母の怒鳴り声に顔を強張らせた。
「それはぁ……誤解じゃないけど、正確ではない……」
「「誤解、ね……」」
彼女たちは顔を見合わせ、俺の審議を判断している様子。
ラビスを交えての楽しい昼食は、いつの間にか尋問に変わってしまったようだ。
「父さん、マイン……」
「どっちの手にボタンが入っているでしょう?」
「うーん、こっち!」
「大当たり! マインは賢いな」
僅かな期待を胸に秘めて助けを求めるが、父親は娘の可愛さに絆され、妹は好きな色のボタンに夢中で兄のことなど眼中になかった。
「こちらの席で、『鶏肉のグリル焼き』を注文したお客様はいらっしゃいますでしょうか?」
「自分が注文しましたけど、何かありましたか?」
申し訳なさそうな面持ちのスタッフがこちらのテーブルを尋ねて来る。
「先ほど料理場で問題が起きて焼いた鶏肉が食べれなくなりまして、再度焼く時間を頂戴したいのですがよろしいでしょうか?」
「それって何分ぐらいで焼き上がりますか?」
「提供までに20分ほど掛かります、他の料理であればもう少し早く提供できますが……」
「そうですか……」
俺はホールに設けられた時計に視線を向ける。
話し合いまではそれなりの時間があり、料理を待つことは可能なのだが……決勝戦前に話しておきたい人物が居る。
「……すみません、野暮用を思い出したので自分の料理は結構です」
「料理は結構って、昼食は食べないの?」
「ごめん母さん、ちょっと予定があってね。適当に済ませるからゆっくり食べてて」
俺は駆け足で店を出て行った。




