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 さて、普段は朴訥なクォーツ伯爵家にはまれに金色の瞳の男児が生まれる。

 多過ぎる魔力が溢れた際にその瞳は金に染まるという。


 そして金眼の子がいる時代には必ず、隣のパライバ辺境伯領では魔物の大発生が起こる。

 金眼のその子は恐ろしく強いので、魔物の大発生を抑え込むことができる。


 一歩間違えば忌子として扱われてもおかしくないが、パライバ辺境伯領でも同時期に鮮やかなブルーの瞳の女児が生まれる。

 この子を守るために金眼の子が遣わされたのだと、辺境の守り手として婚姻が結ばれてきた。


 これは数代おきに不定期にあり、金眼の騎士と辺境の姫君として語り継がれている。


 ……なぜか今代では男女が逆転しているが。


 そして今、怒れるアリーシャの瞳は金に輝く。


「さて、次は剣術ですね。武器はレイピアを使用。武器を離すか倒れるかまでですね。」


 金眼のアリーシャを見て頬を染める友人に対してランスロットの顔は白い。


「アーリャ…もう本当に頼むから程々で。相手は人間。さぁ、復唱して」

 力なく懇願している。


「心配いらない、ランス。人間と魔物の違いくらい分かっている。貴方との婚約を守るため全力を尽くす。安心して待っていてくれないか?」

「はい…」

 ランスロットは一瞬で陥落した。


「久しぶりの騎士のアリーだわ」

「なんてかっこいいのかしら…」


 ささやき合う友人たち。

 ガーネット伯爵令嬢にアウェーの空気がとまらない。


「審判をそこの…オニキス伯爵子息に頼めないだろうか?」

「はい!かしこまりました!」

 上官と部下のそれである。


「レイピアは騎士科女子の中では一番だもの、大丈夫…」

 ぶつぶつと自分に言い聞かせているガーネット伯爵令嬢。


「それでは…はじめ!」

 オニキス伯爵子息が手を振り下ろし合図する。


「ゴッ」


 と鈍い音が一つ。

 遅れてカランと金属音が。


 最初の構えのままのガーネット伯爵令嬢の首元にはレイピアが突き付けられていた。

 その手には何も持たないまま。


「勝負あり!勝者、クォーツ伯爵令嬢!」


 瞬殺とはこのことだった。


「な?え?」

 じんじんと痺れる手を見つめ呆然とするガーネット伯爵令嬢。


「なぁ、ランスロットはその…見えたか?」

「もちろん…と言いたいところだけど、レイピアを搦手で弾き飛ばしたところまででその後は何がどうなったか正直わからない…アーリャまた強くなって」


 私は決めていた。

 完膚なきまでに叩きのめしてやろうと。

 騎士としてランスにふさわしいのは自分だと、きっちり分からせてやらないといけない。


「さぁ、これで五分ですね。三本目、次は武器は自由選択とします。さっさと終わらせるので早く選んでくださいね」

 レイピアを返し、袖に忍ばせていた扇子をそっと手に取る。


「私はこの扇子で。仕込みはありませんがオニキス伯爵子息。念の為に確認を」

「はい!かしこまりました!」


 領地の馬具職人を目指す弟に頼んで作ってもらった、ただの鉄扇である。

 淑女科で帯剣はできなかったので、代わりに淑女らしい武器を誂えてもらった。


「確認しました!お返しします!」

 オニキス伯爵子息から扇子を受け取ると、ガーネット伯爵令嬢も準備ができたようだ。

 震える手で先程のレイピアを握りしめている。


 決闘も最終戦となる。

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