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「クォーツ伯爵令嬢!貴女のような者がパライバ辺境伯子息の婚約者などふさわしくありません!」


 威勢のよい言葉とともに白い手袋が投げつけられる。

 咄嗟に持っていた扇子でくるりと受け止めると、やや驚いた様子の騎士科の令嬢が仁王立ちをしている。


 騎士科で白い手袋を投げるということ。


 決闘の申込みだ。


 同じ淑女科の友人たちと穏やかにお茶会をしていたというのにこれでは雰囲気がぶち壊しだ。



後日、お詫びの茶会を開かなくては…菓子や茶葉はいつもよりよいものを手配せねばならないがその前にやることがある。

 心配そうに見つめる友人たちに淑女らしく微笑んでみせる。


 そして扇子で受け止めてそのままにしていた手袋を、手首を捻り弾き返す。

 豪速でそれは見事に顔面にヒットした。


「ガーネット伯爵令嬢にご挨拶申し上げます。その決闘、お受けしますわ」


 あくまでも穏やかな声。そして笑みを浮かべる。

 ガーネット伯爵令嬢は顔を赤くしぷるぷると震えている。

 これが武者震いなのね、きっと。

 きっとこちらを睨みつけ、彼女が何か言おうとしたところに後ろから数人の騎士科の子息たちが走って割り込んできた。


「間に合ったか?!」

 息を切らしてやってきたその人は私の婚約者。パライバ辺境伯子息のランスロット様です。


「間に合いましたよ、ランス。私たちの決闘の内容をちょうど今から決めるところですもの」


 にっこり微笑むと婚約者の目が大きく開かれる。

 鮮やかなブルーの瞳が強調されてお綺麗です。


「それでガーネット伯爵令嬢。決闘の内容は受ける側が決める習わしですがよろしいですね?」


 決闘は主に騎士科の生徒のするものである。

 しかし近年は流行っていないのでほぼ廃れたものだが。

 三番勝負を基本とし、決闘を受けた側がその内容を決めることができる。

 仲の良い婚約者同士であれば「婚約者の好きなものをあてる」などでほぼ出来レースとなる。

 三番勝負なので自分の得意なことでさらに婚約者へアピールすることもできるので、申し込む側にメリットはほぼない。


「内容を決める前に…なぜ私に決闘を申し込んだのかしら?ランスにふさわしくないとはどういうことなのかしら?」


 きちんと淑女科で鍛えたので小首をかしげる仕草も様になってきた気がします。

 上手くなったでしょう?と、ちらりと婚約者を見ると俯いています。

 ……見ていなかったのね。まあ、いいです。

 今はガーネット伯爵令嬢との決闘が大事です。


「あ、貴方なんてただ領地が隣なだけでしょう?鮮やかなブルーの瞳で見目麗しいランスロット様に比べて貴女は…いえ」


 私のくすんだ茶色の髪と薄墨のような瞳のことを言いかけて、見た目の非難はよくないと気付いたのでしょう。

 言いよどんでいます。続けて?と目線をおくると


「淑女科での成績もせいぜい平均程度だと聞いています!王都に住む伯爵令嬢として私の方が所作は洗練されてますし、それに王都から離れた田舎にある貴女の領地なんて馬を育てるしか能がないじゃないですか!」


 馬を悪く言う者は許さない。

 馬は可愛らしくて賢い最高の生き物なのに騎士科で何を学んできたのか。

 それに私の領地の馬は王族へ献上されることもあるんですよ。

 これは馬のためにも負けられない戦いになる。


「そんな貴女より私のほうが同じ騎士として彼を支えていくことができます!我が家は代々騎士の家系ですから辺境伯をお支えするのに不足はありません!」


 なるほど、申し込むメリットがないかと思えば彼女はまるで負けるとは思ってないのですね。

 堂々と言いきっていますが……ランスは彼女のことをどう思っているのかが問題です。


「ランス。ガーネット伯爵令嬢との婚約をお考え」

「全くそんなことはない!アーリャ以外との婚約などあり得ない!」


 食い気味に答える彼の目は真剣で…これはさらに負けられませんわね!

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