第9話・久しぶりに我が家に帰宅しようとしたけど・・・
元々ヒルドは、この世界でも最上位種の竜種であり、竜種とは『神に世界の秩序の維持を任されている存在』だと他の種族からもそう認識されている種族ではあったが、当の竜種達も自分達が『世界の守護者』である事を自覚し、また『そうあろう』と常日頃思っていたのだが・・・
実際は、この世界を初めて構築した神がまだまだ幼く若かった頃、約40億年前の出来事、
神は初めての世界構築だと言う事もあり、頑張ってその空間に様々な物質や物体を集めていった。
やがて、それは強烈な光と熱を発した巨大な光体となり、更に、その光体を中心にして激しい重力の嵐が広範囲に吹き荒れ始めた。
若い神様の太陽と太陽系が誕生した瞬間でもあった。
それから若い神は、自分の太陽系を毎日毎日ワクワクしながら観察し続けた。
そして、最初は強烈な光と熱を発した巨大な光体が中心で光り輝く周りを、数多くの物質が追突し合い、様々な色をした強烈な光を発して消えて行く・・・
後に『とても綺麗な光景だった・・・ あの光景の記憶は私と云う存在が消滅するまで、私の中からは消えないだろう。』と神は言った。
そんな綺麗な光景も、追突し合う物質が段々と大きく成長するにつれて観れる機会も減った頃、太陽と太陽系の一番端の距離からやや太陽寄りの真ん中付近で発生した。
大小3個の惑星と成りかけていた物質同士の追突を最後に、神様の太陽系は静寂に包まれるのだが、その大小3個の惑星となりかけだった物質が激突した際、その破片が多く飛び散ったのだが、多くの破片は太陽系の外側へと飛んで行き、また多くの破片は太陽の重力に引かれて、やがて太陽に飲み込まれて消えていき、残った破片の集団は静かにその場に漂い始め、追突があった場には地球と比べると約5~6倍のサイズの惑星の素が誕生したのだった。
その後、未だ惑星の表面がドロドロに融解して熱かった頃に、大量の氷の氷塊が降り注いだ事で、惑星の表面が冷やされて地表が形成され、蒸発した大量の氷塊が水蒸気となって惑星を包み込んだ頃、神様はワクワクとしながらその光景に注目しており、大量の水蒸気が結合して、未だ熱い大地にポツポツと降り注ぎ始めた時には、思わずガッツポーズした後にバンザイしながら踊り狂ったそうだ。
この話を神様から聞いた時に『そりゃそうだろう? なんたって儂の世界を手にした瞬間じゃったからのう。』と、ニカッ!と言い笑顔で笑いながら言っていた。
それで神様が一番最初に作った種が竜種だったらしく、何でも『地球を作った神様を参考にした』らしい、ただ、この竜種、文明じたいはそれほど発達した訳では無かったが、知能は物凄く無茶苦茶に進化して、理性と物凄く高度な知能と、文明の変わりに魔法を手に入れた。
ただまあ種が成長して熟成して来ると、必ず少しずつ違った容姿や特性を持った者達でコロニーが形成され集団化されて様々な大なり小なりの諍いが発し、段々と大規模な争いへと発展して行く事となる。
当然、竜種達もそう成った。
イヤ、そう成ってしまった・・・
竜種同士の争いが発生して数千年、種としての強靭さは、竜種が誕生した頃と比べると天と地の違いが出来ていた。
ある竜が鋭い爪や牙を振るうと、大地は裂け、山は崩れ、ある竜が息吹を吹くと大地はその熱で溶けてドロドロに成り、また逆に凍り付く・・・
あれほど神が目を輝かせて観ていた世界は荒廃し、ある場所では緑豊かな大地が岩と砂の大地に変貌し、水豊かな場所は毒の沼地へと変貌し、竜種達は僅かに残った同族の為にと、更に水と緑豊かな場所を求めて争って言った。
そして、惑星の緑も残り少なくなり、竜種全体の数が数千の数を切ろうとした頃、とうとう神は竜達の前に降臨し、竜達に強引に争いを辞めさせて、神が大切にしているこの惑星を復元させる手伝いを強制的に行わせる事にした。
この時、生き残っていた竜種の部族の数は7部族、各部族で生き残っていた竜達の数は、多い部族でも3桁、少ない部族だとギリギリ2桁だったらしい・・・
そして、この世界に対しては『干渉せずに見守るだけにしておこう。』と決めていた神ではあったが、他の世界を構築して尚且つ安定した世界を作る事が出来た神々の多くが、
『初期の頃は、その世界で発生した生命体に色々な助言や手助けしていた。』と話していた事を思い出し、更に尊敬する地球の神も、
「私も、地球に発生した人類が知識を得て、文明を構築し始めた初期の頃は、良く人類の前に姿を見せて助言をしてたし、その他の文明を上手く発展させる事が出来た星からアドバイザーなんかも呼んでアドバイスなんかさせたりしたよ〜 それでも地球の文明は4度ほど途絶したけど、その度には復活しているから、今は様子を見て観察してる最中かな?」と話していたのを思い出し、この世界の神も方針を180°転換して今後は干渉して行く事にしたのだが、先ずは、この惑星をこんな姿にした竜種に責任を取らせて、神の世界再構築を手伝わせる事にしたのが『竜種は世界の秩序の維持者』との認識の始まりだった様だ、
ただ、当時はこの世界には神が一人しかおらず、手が色々と回らない事が多いので、神は自分の魂を先ずは半分にして、更にその半分の魂を竜種の数に合わせて7等分にした後、その魂それぞれに自我と得意な特性を持たせた上で、竜種達の監視&監督者と定めて色々と働かせたのだが、その後も色々とトラブルは発生した様で、気付いたら御霊分けした自分の魂に主神と崇められていたり、御霊分けして自我を得た自分の魂達が更に分裂して数を増やしていたり、竜種が半神格化してたり、最初は竜種の食糧のつもりで発生させた様々な生命体が独自に進化していたり、今後は主神から御霊分けされた神の分身を『福神』と呼ぶ事にするが、この福神達が更に色々とやらかしていた。
しかし、色々とやらかしていたとは言っても、必ずしも悪い事だけでは無い、その一つがこの世界に様々な種族を招き入れたのも福神の一人だった。
彼?若くは彼女?の言葉によると、
「私が参考に訪れた世界は、この方法で繁栄してました。」との事だった。
彼?若くは彼女?は、空間を司る神として活動しており、様々な空間に点在する『世界の構築に成功した神々』と交渉の末、その世界の多種多様な生命体の種をこの世界に蒔いたのだった。
まあその多くが地球型惑星の別時間軸の存在だった事もあり、割と意外にも早い段階で世界の再構築は安定させる事が出来た。
また、生体重機の如く惑星の各所で主神又は福神にコキ使われた竜種達も、ただコキ使われた訳では無い、先ず絶滅し掛けていた竜種の救済、常に他部族との戦いで不安だった事からの救済、そして、どんなに厳しい環境でも生きて行ける様にと竜種全体の特性の改善が為され続けた結果、竜種本来の姿を一度マナと置き換えて、再度、自分が望む姿へと再び肉体を作り替える事が出来るスキルを竜種全体が身に付けたのだった。
それから月日は流れ、竜種達の努力はこの惑星を見護る神々に認められただけでは無く、この惑星の亜神的な『神々の協力者』として『神に世界の秩序の維持を任されている存在』と成ったのであった。
話しが大きく逸れて、この惑星の成り立ちと神々と竜種の関係、そしてその結果として竜種が取得した特殊なスキルを説明したが、今、ヒルドは祖先の竜種達が苦労の末に手に入れたスキルで、5歳児相当の姿へとその姿を変えると、両の手足を器用に使って私に抱き着き『だ・・・旦那様の浮気者〜〜〜!』と泣き叫び出してしまったので、ここで食事会はお開きと成り、私も未だにグズって抱き着いているヒルドを連れて王都に在るアパートに帰ろうとしたのだが、ここでも祖母であるミラが『今夜は離宮に泊まって行け!』と騒ぎ出して面倒な事に成った。