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 第8話・ヒルドが拗ねて・・・

 

「ああ、あの時はのう。 父様から『若い娘が良い歳していつまでも巣穴でゴロゴロしておるな!』とか、『この前の竜王会議の時に、赤竜王の奴から家の娘は良き旦那をお迎えた上に、もう卵を抱いてるとか自慢されて、儂は悔しかったぞ!』とか色々と言われてのう。 妾も腹が立ったから色々と言い返しておったら、結局は父様と激しい親子喧嘩に発展してしまってのう。 その時は10日ぐらい続いたかのう親子喧嘩? まあ妾がどんなに頑張って父様に挑み続けても、いとも簡単に組み伏せられ続けた挙句に父様の鱗には傷の一つも付けられんでのう。 罰としてジンの義父様の所まで『竜王会議の際に呑む酒』を受け取りに行く様にと使いを押し付けられてのう。 父様に勝てなんだ妾は、渋々と巣穴在る郷を出て、毎年、父様が旦那様の義父殿から酒樽を受け取っていた場所へと向かう事に成ってのう。 父様に酒樽を持ち帰る期日を言われておったが故に、余りにも面倒で面倒で、ならば期日ギリギリまでのんびりと過ごしながら帰れば、妾の帰りが遅い事に流石の父様もあの長い首を更に長くして焦るのではないのか? もしかしたら、妾も数度しか見た事は無いが、焦り過ぎた父様が竜王会議に遅れる事を恐れて、父様の最強形態であり、竜種の中でも最速で空を駆ける『三ッ首竜』の姿が観れるかな〜♫ と、思ってのう。」とそこまで聞いた時、


『えっ!もしかしてヒルドの親父さんて、キングギ◯ラ!? えっ? え〜ッ!?? じゃあ、この前、神様が家の馬鹿親父の魂は、戦いと守護の神が光の巨人族からトレードして来た魂だよ的な事を言ってたし、父さん達の寝室に在る秘密の隠し棚には赤い縁のサングラスがあったし・・・


 馬鹿親父の髪型って、センターだけ長く伸ばして両側を綺麗に剃っているけど、まあ確かにその髪型って、妙に清潔感が有って馬鹿親父には似合ってはいたけど・・・


 あの髪型って髪を全部立てたら・・・ モヒカンだよね? モヒカンの光の巨人って?・・・


 昔、ヒルドの親父さんと家の馬鹿親父が戦った戦いって、あの時のリベンジマッチだったりして・・・汗 』と考えてしまった。



「で、ジンの村に向かいながブラブラと空を飛んでいると、突然、魔法攻撃して来る奴らが居ってのう。 まあ妾にとっては怪我をする様な攻撃でも無いし、全く痛くも痒くも無い攻撃じゃったんじゃが、まあダメージと言うか?そんなもんは全くのノーダメージじゃったが、親父との喧嘩に負けて渋々とお遣いに出ていたって事もあって、ちと苛ついてのう。 右往左往する連中を追いかけては踏み潰し、背後から迫る連中は尻尾で薙ぎ払い、遠くから魔法を付与した爆ぜる石礫を飛ばして来る連中には、お返しに熱々の熱線ブレスをお見舞いしたりしてストレスを発散する相手が出て来たもんで楽しくて楽しくて、3日間ぐらいはぶっ通しで遊んでいたじゃろうか? で、ストレスも無くなった事でお遣いの最中じゃった事を思い出してのう。 粗方、この3日間ぐらいで動く泥人形も殆ど潰すか?バラバラに壊すか?溶かすか?してしまったし、『まあこんな所か?』って感じで、ジンの義父殿との待ち合わせ場所に向かったんじゃがのう。 その時の泥人形が、さっきの話しに出てた某帝国の軍勢かも知れん? 丁度、某帝国との国境の近くじゃったしのう・・・ 」



 ヒルドの話しを聞き終えた祖父母、そして祖父の兄、ジェス兄さんとメイヤーさんは『・・・』って感じで口が半開きになっていたが、



「ねぇヒルド、その時のヒルドって今日王都に姿を見せた時ぐらいのサイズだったの?」


「いや旦那様、流石に今日は気を使っていつもの半分くらいじゃったかな?」


「じゃあ、ヒルドがその泥人形を潰した時は、本来のサイズだったって事?」


「そう言う事かのう?」とヒルドはニッコリと微笑んでいたが、私は全長80m越えのフルサイズの姿のヒルドに対して、精々全長5~8m程度しかないゴーレム達がワラワラとヒルドに向かって行っては、無残に踏み潰されて、尻尾で吹っ飛ばされて、挙句の果てには熱線で薙ぎ払われる姿が容易に想像出来たと共に、当時の某帝国のゴーレム軍団の団員が目の当たりにした光景は、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図であっただろう事は容易に想像する事は出来た。


 そして祖父母、祖父の兄、ジェス兄さんとメイヤーさんの5人は「 !?・・・ 」って感じで放心していた。


 昼間に目撃したヒルドの姿が、余りにも巨大な姿だったので驚いたばかりだったのに、更に倍のフルサイズのヒルドが王都に現れた際の事でも想像していたのか?それとも某帝国のゴーレム軍団15万の真っ只中に現れて暴れるヒルドの姿でも想像していたのだろうか?



 離宮のリビング内の空気が『何だかな〜』ってな雰囲気になってしまっている事に気付いて、以外にも回りに気を使ってしまった上に、それがかえって畏怖されてしまった事にちょっと凹んでしまったヒルドを、なんだかんだと全員で慰めた結果、ヒルドが可愛い感じで拗ねてしまった。



 そんな拗ねたヒルドを見た祖母が、卓上の呼鈴を鳴らしてヒルドの為に多種多様なケーキが、塔の様な感じで盛り付けられた5段重ねのケーキスタンドをリビングに運び入れる様に指示すると、その運び込まれたケーキスタンドに乗せられた数々のケーキに、ヒルドは完全に魅入られてしまっていた。



 そんなヒルドに祖母とメイヤーさんが同調して、更には例の二人のメイドさん達までが参加して女性陣はメイヤーさんの話題を中心としたケーキパーティーに突入し、男性陣はそんな女性陣を眺めながら酒を飲みつつ、再び某貿易都市国家と某帝国に対しての対応をどうするか?との議論にはなったが、実は某帝国の軍事力がヒルドに因って再起不能な状態に追い込まれていた事、そしてその事実を必死になって隠そうとしているであろう事から、王国の宰相である祖父の兄が中心となって某貿易都市国家への対応と、その某貿易都市国家が企んでいる悪事に加担している貴族や商人達をを制裁する事が決まった。


 某帝国に関しては『ヒルドが郷に帰郷する時にでも、素知らぬ振りして某帝国の帝都の上空を飛んで貰ったら?』と、私が冗談のつもりで何気無く言うと、『当面はそれで良いのでわ?』と言う事に成った。

 



 実質的に、アルバ王国の今後の舵取りに関係する話が進められている中(私はノータッチです。)、女性陣は甘いケーキスタンドに群がる蝶の様にワイワイと賑やかに騒いでいたが、祖母が若い女性陣の中に混じっていても違和感を感じ無い事に、逆に違和感を感じてしまう。


 まあ以前の私なら、目の前の光景に『そうなの?』ってな感じで『普通に当たり前な光景』だと思って気にも留めなかったのだろうが、いかんせんココ数日、前世の記憶が完全に蘇りつつあると言う事と同時に、前世での常識も同時に思い出しているのだが、その結果、拗ねてしまったヒルドを全力で構い倒している祖母の姿に対して異様に違和感を感じているのだ・・・



 「ブリュンヒルド様、このベリーがたっぷり入っているケーキは、離宮の果樹園で今朝一番に朝摘みされたベリーのケーキなんです。 このハーブティーとの相性が抜群に良いので是非試してみてください。」と、綺麗な黒髪を持つ美しい女性がヒルドにケーキとお茶を進めている姿が、私が座っているソファーから見えるのだけれども、この女性、割と身長は高くてジェス兄さんぐらいだろうか?整った顔立ちに、エメラルド色した瞳、美しい黒髪をちょっと長めのショートカットにしており、その黒髪から少し尖った耳が見えている。



 この女性の見た感じの年齢もジェス兄さんと変わり無い様にも見えるので、知らない人が見れば彼女が『メイヤーさん?』と思ってしまうかもしれないが、4人の娘達の母であり、9人の子供達の祖母なのだ! 


 この世界の常識で言えば、ハイエルフの血が混じっている祖母の外見が若いのは当たり前の事なのだが、私の前世の記憶が邪魔する。



 向こうのテーブルでヒルドの世話を焼いていた祖母が、私の視線に気付いて、チョイチョイと小さく手招きして私をケーキスタンドがセットされているテーブルへ来いと呼んでいる。




「ジンは未だお酒には慣れて無いんでしょ! このベリーのケーキ、美味しいわよ♪ 私が世話している果樹園で取れたベリーを使っているのよ!」


 「ありがとうございます。お婆様。」


 「もう何度も言わせないでジン、プライベートでは『お婆様』では無く、『ミランダさん』か『ミラちゃん』と呼んでくれる約束でしよ?』


 「はい、ミランダさん。」


 「あら? もうミラちゃんって呼んでくれないのかしら? ちょっと前までは『ミラちゃんをお嫁さんにする♫ 』って言ってくれてたのにね〜 」


 「そんな事を言っていた記憶が無いのですが・・・(汗 」


 私の祖母のフルネームは、『ミランダ・フォン・アルバトロス』と言い、外見は20歳ぐらいにしか見えない、何故ならハイエルフとハイヒューマンと鬼人の血が混じった混血種であり、ハイエルフと鬼人の特性として外見的老化現象が遅い事もあるが、彼女が他人よりも桁違いに大きい魔力の持ち主だと言う事から、彼女は『自身が持つ膨大な魔力を無駄遣いして若さを保っている。』と、世間では噂されたりしているが、ハイエルフの血が混ざっているならば、たかが130〜200歳程度ではそこまで老けて見える事はまずは無い、ただ、彼女の髪の色が黒髪なので誤解されているだけなのだ、ああ因みに、彼女に歳を聞くのは禁忌である。


 祖父が初めて祖母と出会った際に、出会った酒場で祖母の歳を確認したらしいのだが、ボロ雑巾の様な姿に成るまでタコ殴りにされたらしい・・・ 


   



 そして今!


 『ヒルドが物凄い顔してコッチを見てる・・・ ヒルドの金色の瞳が視線だけで私を焼き殺しそうな勢いで! 


 ヒルド!その視線は辞めて! ヒルドの視線はマジで人を・・・ いや、小さな山なら一瞬で消滅させるから・・・(汗 


 てか?なんで女性陣の皆さんニャニャして私を見ているのだろうか? しかも全員の顔が赤いし酒臭い・・・


ああ、このベリーのケーキから強烈にラム酒の匂いがしているし・・・(泣 』




「だ・・・ 旦那様の浮気者〜〜〜!」とヒルドが泣き叫び始めた瞬間、ヒルドの回りに黒い靄が出現したと思えば、靄が晴れた後には5歳児ぐらいの見た目に退化してしまい泣いているヒルドの姿が・・・


 熱線ビームで焼かれずには済んだが、ヒルドの以外な姿にミランダさんは大爆笑、メイヤーさんオロオロ、二人のメイドさんが泣き叫ぶヒルドを宥めてる・・・ 


結果的に女性陣のテーブルの方がカオスな状況だった。










 


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