第66話・僕が月に行く方法が!
ダブの街に到着した初日の深夜、僕はベッドで一緒に寝ていた大人バージョンのヒルドを起こさない様に静かにベッドから抜け出た。
ヒルドが一度寝入ると、まあこの世界の最強種だと言う事もあり、命の危険が全く無いので例え真横で爆裂魔法を炸裂されたりしても中々起きないのだが、意外と僕の身動ぎ一つで起きてしまう事も有るので慎重にベッドから抜け出すと、部屋に備え付けられているソファーに移動して、腕に装着しているコンバットスーツの起動キーを解除して、コンバットスーツのヘルムだけを装着して、『月』の00号に連絡を入れた。
僕が、コンバットスーツのヘルムを稼働させると直ぐに、コンバットスーツのヘルム無いにセットしてあるモニターに00号の姿が現れた。
「どうしたんだいジン殿、そちらは深夜の時間帯だと思ったが?」
「ああ、実はちょと00号に聞きたい事が出来てね」
「ジン殿に頼られるなんて嬉しいね~♪ で、私に聞きたい事って何だい?」
「00号が知っている範囲で良いんだけれど、僕が前の世界で主食として食べていた米や、調味料として使われていた味噌や醤油と同じ様な物が、この世界にも無いかな?と思ってね、それで00号が何か知らないかと思って連絡を入れてみたんだ。」
「そうだったのかいジン殿、でも今のジン殿はこの世界での転生者だから、ジン殿が言う米や味噌、それに醤油と言う物が無くても、普段の食生活では何不自由も感じないと思うけど?」
「00号も知っている通り、今、僕達は海洋都市ダブに来ていて、昼間に露天商が立ち並ぶ市場を通った際に、マグ太郎と呼ばれているカジキマグロ系の生身を、前の世界で言う所のカルパッチョ的な食べ方で食べさせて貰ったんだけど、そおしたら、無性に前の世界で食べていた食べ物で寿司と言う食べ物が有ったんだけど、それを思い出したら連鎖的に前の世界で食べていたマグロの食べ方を色々と思い出してね、しかも、巨大なマグ太郎の半身もその露天商の主人から貰ってしまったから、これは絶対に前の世界で食べていた味を再現したいと思ってね♪ それに再現出来なかったとしても、もしかしたら可能性は低いけど、この世界に転生ないし転移して来た日本人が、しかも食にこだわりが有った人が、何処かで再現して無いか?と思って・・・
00号だと色々とこの世界の事を見て来ているから、もしかしてと思ったんだよ?」
「確かに、私はジン殿が知りたい情報は持っているが・・・」
「えぇ~~~! 本当に知っているの?」
「そんなに大声で騒ぐで無い、例えヘルムで遮音されていても、側で寝ているヒルド殿がジン殿の感情の変化に気付いて起きてしまうではないか!」と、思わずテンションが爆上がりして叫んでしまった僕を宥める。
「えっ!ヒルドが? ヒルドなら大丈夫だよ、ベッドで爆睡してるから、」
「まあ私が言いたい事の意味は違うのだが・・・ そうだジン殿、ジン殿が以前『月』に来た時に、かなりこの『月』に対して興味を持った様だったから、特別にジン殿専用の義体を作ったのじゃが、色々とジン殿に説明するにしても、ヘルム越しだと色々と伝えられる情報量も制限されてしまうし、一度、試験的実験に参加すると思って、良かったら義体への意識の転送を試してみるか?」
「えっ? そんな物まで用意してくれてたの?」
「まだ試験段階だから、実際にジン殿に試して貰うには少々準備する時間が必要なので、実際に来て貰うのは明日の深夜か?その翌日となるが、準備が出来次第にシオン経由でジン殿に連絡を入れる事にしましょう。
なので今夜は大人しく寝て、明日以降に私から準備が出来たと連絡が入るのを楽しみにして待ってて下さい♪」
「そ、それはラミアの生殺しだよ~~~! 」
「未だ安全確認等のプロセスが完全に済んでませんので我慢して下さいジン殿、第一、万が一ジン殿に何かが有った場合、激怒した黒竜ブリュンヒルドが、私の『月』まで来て大暴れしそうで怖いですから、」
「えっ?・・・ 00号、ちょっと聞いてみたい事が有るんだけれど、神様達は兎も角としても、竜種であるヒルドも00号が居る『月』まで行く事が出来るの?」
「いえ、主神様は『月』には来る事は出来ますが、ここにはお姿を顕す事は有りませんし、副神様達はここには来る事は出来ません、守護している人族達が居ませんしね、そして竜種の方達ですが、残念ながらジン殿が居られる惑星の重力には、例え強靭な力を持った竜種とは雖も絶対に勝てませんし、ジン殿もご存じの通り、この宇宙には生物が生存するのに必要な酸素や二酸化炭素、窒素や水素と言った物が存在しない場所です。
私達の様な呼吸する事が必要の無い物達にしか、存在が許されない場所です。
現に、あの戦艦達がこの場所に辿り着くまで、私の娘達は一度地上に降りたら、決して里帰りが出来る場所では・・・」と、ここで00号も僕が言いたい事に気付いた様だった。
そう、これまでは『月』からこの地上に降りる為には、使い捨てのシャトルか?ポッドの様な物に機械人形を乗せて打ち出さなければならなかった上に、一度地上に降下したら二度と『月』に帰還する術が無かったのだが、今は家の戦艦娘の7人姉妹の本体、4000m級の超弩級戦艦の本体にジョイントされている付属艦と言えば良いのか?護衛艦と言って良いのか?兎に角、200m級の戦艦が20艦前後ほど彼女達の本体に随伴しており、
最近では、その4000m級の超弩級戦艦の本体にジョイントされている200m級の戦艦が、この惑星の地表の各地に点在していて、自分の使命を果たした後、静かに活動限界を待つだけだった機械人形を回収して周り00号の下へと送り届けたり、機械人形が必要としている物資を届けて回ったりしていたのだった。
「ジン殿、取り敢えずジン殿を迎えに行く艦の手配は直ぐにでも出来ますが、こちら側がジン殿を迎え入れる準備が出来ていませんので、同時にジン殿を迎え入れる為の準備と、義体への意識の転送実験を進めますので、今夜の所はこれまでとしましょうね?」と言って、一方的に00号の方から通信が切られてしまった。
どうも尻切れトンボに成った様な? 喉に魚の骨が残っている様な? そんな不完全燃焼ぎみの00号との会話では有ったが、取り敢えず今夜はコンバットスーツのヘルムを解除して、静かに寝息を立てているヒルドの横に体を滑り込ませて、僕も寝る事にした。
明日以降の00号からの連絡が楽しみだ♪ (*´ω`*)
そして、00号から全ての準備が整ったと連絡が来たのは、あの夜から二日後の事だった。
ただこの時の僕は『米や味噌、そして醬油に関する情報が知りたかった。』だけだったのだが、完全に意識は『00号が居る月に行く事』にシフトしてしまっていた。




