表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/67

 第59話・ヒルドの騎士、ペコ

 


 この目覚ましい発展を遂げているブラストの街には、幾つかの禁止事項が、住民達の暗黙の了解の下で語られている。


 特に、この暗黙の下で語られている幾つかの禁止事項の中でも、様々な事が囁かれているが、その中でも・・・



 曰く、同じ制服を着たメイドにはちょっかいを掛けるなとか?


 曰く、同じ軍服を着た女軍人には手を出すなとか?


 曰く、猫獣人族の女魔法使いの『簡単なお仕事』の誘いには絶対に乗るなとか?


 曰く、冒険者ギルドの受付に居るドワーフ系の巨乳受付嬢は絶対にナンパするな、イヤ絶対に逆らうな!


 などと、ブラストの街に到着したばかりの者達の耳元で囁かれているが、その中でも一番の禁止事項として囁かれているのが、



 曰く、カエルを抱いた5歳児ぐらいの幼女には、絶対に手を出すな! でもお菓子などをプレゼントして()でるのは良し!


 などと、古株の住人達から新人の住人達に向けて囁かれていた。




 その日もヒルドは、お気に入りの白いワンピースをシオンに着せて貰い、お気に入りのつばの広い麦わら帽子を被り、お供のカエルを抱いて、色々な店が立ち並び始め、頓に賑やかに成って来た中央区と呼ばれる区画を、楽しそうに散歩していた。



 行きつけの肉屋で、購入した腸詰ウインナーをボイルしてもらい、隣のパン屋で買ったコッペパンに挟んで貰うと、これも彼女にとっては定番の散歩コースになりつつある中央区に作られた噴水の側のベンチに腰掛けて、肉屋の女将さんにコッペパンに挟んで貰った腸詰ウインナーを、カエルと一緒に食べるのが彼女の日課だった。



 ただこの日は少しだけ様子が違う様で、腸詰ウインナーを分けて貰ったカエルが、噴水の水に浸かって水浴びしている姿を眺めていたヒルドに、カエルが・・・


「ゲコ!(左だ!)」と警告する前に、ヒルドは既に暴漢の腕をすり抜けて、お気に入りのワンピースが濡れるのも気にせずにペコを抱き上げていた。




「お嬢ちゃんが、巷で有名な『幼女ちゃん』かな~? ちょっとオジサン達と一緒にお話しをしようぜ~  まあ俺達のお話しは、ちょっとお嬢ちゃんのパパにお小遣いが欲しいと頼んで貰うだけだけどね~ 」


「待て待て、俺はお嬢ちゃんを裸に剥いて・・・ 」



「ゲコゲコ!ゲ~コゲコゲコ~!(お前達! 何者だ~! お嬢に気安く触るんじゃあね~よ!)」と言って、ヒルドを誘拐しようとした男達を、筋肉の束でもあるペコの舌で瞬時に殴り飛ばしていた。


 しかも、ペコが最近習得した麻痺属性も上乗せしていたので、ひっくり返って手足をピクピクと痙攣させている姿は、逆に二人の暴漢達の方がカエルの姿に見えた。



「カエル、お前、強者だな!」


「ゲコ!(まあな!)」


「でも俺達、そのお嬢さんを連れて来いと頼まれたんだ・・・」と、背後から伸びて来た巨漢の男の腕が、ヒルドを捕まえようとした瞬間、巨漢の男の顔面に、再びペコのキツイ一発がさく裂したが、巨漢の男はその場でたたらを踏んで踏みこたえて、再度ヒルドに手を伸ばそうとしたが、もう一発ペコの一撃が顔面に入ると、


「カエル、本当に強いな! でもそんな弱いパンチじゃあ、俺は倒れない」と言いながらペコを見て笑う。



 その巨漢の男の言葉を聞いたペコは、自身を抱き抱えているヒルドを見上げ、まるで笑っているかの様に口元を歪めると、



「ゲコ、ゲコゲコ?(嬢ちゃん、悪いが下して貰えるかい?)」と言って、ヒルドに地面の上に下して貰うと、


「ゲコ、ゲコゲコ、ゲコゲ~コ! ゲコゲコゲコゲコ?(おい、そこの兄さん、俺は家族を守る騎士だ! 俺の本気の一撃を耐え切れるかい?)」


「来いよカエル!」と巨漢の男が言うと、ペコがまるで相撲の四股(しこ)を踏む様に後足を高く上げて地面を踏みしめて、両前足を地面に着けると、ペコの黒い斑模様が紫色に変色して、いつもは優しいクリリとした目が吊り上がり、次の瞬間、物凄い爆音が鳴り響き、目の前に居た巨漢の男は、約10m後方に吹き飛ばされていた。


 ただ、それでも巨漢の男は、地面に二本の踏ん張って耐えた証の線を引いて立って居たが、ペコの姿を見てニヤリと笑うと、そのまま後ろに倒れて気絶してしまった。




「なあペコよ、あの男、面白いな~♪」と、ヒルドが地面で蒸気を上げて体を冷やしながら、ぐったりとしているペコを抱き上げてやり、噴水の水の中に浸からせながら楽しそうに言う。


 その顔は、ヒルドが『新しい玩具』を見付けた時と同じ表情をしていたと、後日、ペコがトロに住む白猫に話して聞かせていた。




 ペコが噴水の中で、急激に上がった体温を冷ましながらまったりと泳いでいると、ラムネが揃いの法被の様な物を着た冒険者達を数人引き連れた現れた。



「ペコさん『ヒルドちゃんが誘拐されそうだ!』との報告が、私の所に入ったので、様子を見に来たのですが、その不届きな輩は何処に?」


「ゲコ、ゲコゲコ? ゲコ、ゲコ、ゲコゲコ!(ああ、わざわざラムネが来たのか? 不届き者達はそこの二人と、今、嬢ちゃんが様子を見ている巨漢の男だぜ!)」


「ああ、ありがとう。 

 諸君、不届き者はこの場に倒れている二人と、向こうでヒルド様が様子を見ている巨漢の男だ! 冒険者ギルドに連行しろ!」と、揃いの法被を着た冒険者達に指示を出していた。



 この冒険者達が着ている揃いの法被は、ジンからの提案で、


「冒険者ギルドで、仕事の無い冒険者達に向けて『街の自警団員』としての募集を掛けるなら、集まった冒険者達が『街の自警団員』だと分かり易い様に、冒険者ギルドで、応募して来た冒険者達に何か揃いの装備か?何か?持たせた方が分かり易くないかな?」


「ジン様、揃いの何かとは、どの様な物が良いでしょうか?」と、会議の場だったので敢えて『旦那様』とは呼ばなかったブラストの街の冒険者ギルドのギルドマスターに就任したポプラから聞かれたので、『自警団』と言うワードで連想されて出て来た。


「そうだね、揃いの『法被』なんかどうかな?」


「その、ジン様が仰られている『法被』とは、一体どのような物なのでしょうか?・・・」と、この世界では『法被』と言う呼び名は余り普及しては無い様なので、ポプラが困惑していたが、


「ああ、ラムネの実家の『ウサギ茶屋』で働いている店員さん達が、仕事着として着ている制服と同じ感じの物の事だよ♪」


「ああ、それなら昔『この制服わなぁ、古い呼び名が有って、大昔は法被と呼んでいたそうだよ!』と言う話しを父から聞いた事が有ります。」と言う事で、ブラストの街の冒険者ギルドの副ギルドマスターであるラムネが、街の洋服屋の店主達を呼んで作らせたのが、赤い布地の背中に大きく『Vigilante(自警団)』と黒い糸で刺繍された法被だった。



 この、ヒルドを誘拐しようとした三人の男達は、自警団の連中に連れて行かれる事になったが、例の巨漢の男に関しては、


「この男の身柄は、被害者である妾が預かる。

 それに、この男、ペコの『カエルパンチ』で全身の骨にヒビが入っておる様じゃ、ムツハちゃんの病院へ送ってくれぬかのう?」


「ヒルド様、この男をどうされるおつもりですか?」


「ああ、この男、少々は根性が有りそうじゃからのう。

 ちと旦那様の為に使える男に教育し直して使ってみようかの?とおもってのう。」


「ヒルド様が『教育し直す』のですか?」


「ああ、妾が直々に教育し直すのも一興じゃろう。(*`艸´)ウシシシ」と笑って言うヒルドの姿を見たラムネは、ムツハが管理運営している病院へと連れて行かれる男の後ろ姿を、物凄く可哀想な者を見る目で見送っていた。


 因みに、ヒルド自身は楽しみ気な視線を送っていたが、ペコもヒルドの横でラムネと同じ様に、物凄く気の毒そうな目で見送っていたらしい。


 


 この男、名はゴンザレスと言う名なのだが、ヒルドの『長い名は呼び辛い!』との一言で、『ゴン』と改名させられ、その屈強そうな巨漢から、誰もが護衛兵士として雇うものだと思って居たが、なんとヒルドは、この『ゴン』を執事として雇うと言い出したのだった・・・


 どうなるゴン?


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ