第56話・ジン、辺境伯としての仕事を考えて憂鬱になる
12歳当時の姿に戻ったプリシラの機嫌が悪かったのも、アルバ王国の国王である祖父や祖母、そしてアルバ王国の宰相を務めている祖父のお兄さん、国の重鎮で祖父の側近の人達と、僕の家族である人達で開いた昼食会がおわるまでで、ヒルドに言わせると、
「旦那様、妾が思うに、プリシラのあの態度は照れ隠しじゃ♪」とのことだった。
その2日後の朝、ブラストの街の南門前の大草原は、
あの男と、あの男の長男と次男、そして、あの男の悪事に加担した元ブラストの街で冒険者ギルドのギルドマスター、ブラストの街の衛兵長とその配下で、色々な悪事に手を染めていた衛兵達、そして元アルバ王国所属のAランク冒険者のザンギエフと、あの男の次男が率いていた冒険者崩れの山賊達が、大草原の大地に打ち込まれた太い杭に縛り付けられて、刑が執行されるのを待っていた。
「これより、このブラストの街一帯を支配せんが為に、悪逆非道な行いを働いた豚一族の商人ブブと、ブブの息子達二名及び、豚一族の商人ブブの悪事に加担して私腹を肥やしていた冒険者ギルドのギルドマスター、ブラストの街の衛兵長、その衛兵長に加担して悪事の数々を働いていた衛兵達、並びに山賊達に対しての処罰の決定と、その刑の執行を行う!」とアルバ王国国王の宣言の後、被害者達からの告発、罪人として確定した者達の罪状と処罰が勧告された後、アルバ王国の国王である祖父から、
「この者達の行って来た非道さを考えると、ただ処刑するだけでは、多くの犠牲と成った者達が浮かばれる事は無いだろう。
また、今後、この様な事を起こそうなどど悪逆非道な考えを持った者達が出て来ない事を願って、全員をアルバ王国の定める処刑方法で一番重い刑罰である。
生きたままスライムに捕食させる刑とする。」と宣言され、刑が執行された。
その際、プリシラは、魔物をティムしているアルバの兵士に指示を出された調教済みのビックスライムが、豚一族の商人ブブと、ブブの長男と次男の髪の毛一本までもが完全に消化されて消えて行く様を、決して目を逸らす事なく、特別に用意されていた席に座って最後までじっと見届けていた。
そして、プリシラはその日の夜まで自室として与えられていた部屋から出て来ようとはしなかった。
ただ、ヒルドに差し出されたペコだけは、長い間抱きしめていた様だった。
それは、ヒルドの胸に帰って来た時のペコの様子を見れば、一目瞭然であった。
そして、アルバ王国の国王であるエドガード・フォン・アルバトロスは、この貿易都市国家フロトを属国として扱う事を辞め、アルバ王国と併呑してアルバ王国の国の一部として扱う事を宣言し、元フロトの全国土をメトの街を中心に4分割して、旧フロトの首都メトはアルバ王国の国王の直轄地として定め、4分割した北方、南方、東方、西方それぞれに辺境伯を赴任させて統治させる事も併せて宣言した上で、今回は暫定的ではあるが、今回の事件解決の功労者であるジーンサイザー・フォン・アルバトロスを、北方辺境伯に叙すると発表し、その場で任命式と叙勲式を執り行った。
多分、祖父が『暫定的ではあるが!』と言った言葉は本心では無いと思う。
絶対に、このままズルズルと僕に辺境伯をさせる気だと思う。
ただ、今回、国王である祖父とその兄である宰相に呼ばれて、辺境伯へ叙される事を要請された際、何故、それ受け入れたのか?と言うと、以前、フロトから水面下で経済的侵略を受けていた事が原因で、アルバ王国で優秀な人材を長年育成する事が出来ずにいた事が原因で、優秀な文官達が不足していた事、そして今回、旧フロトの首都メトをアルバ王国の国王の直轄地と定めた事で、ジェス兄さんがそのメトの統括総統閣下として赴任すると共に、西方辺境伯まで兼務させられると聞いていたからだった。
そして、今回、僕が管理する事と成った北方地域は、北海道よりも少し広いぐらいの面積だが、ジェス兄さんの方は、メト&周辺の直轄地を合わせて約四国並の広さの土地と、同じく北海道ほどの広さの西方を統括管理しなければならないのだ、この話しを聞いた際に宰相である祖父のお兄さんからは、
「なあジン、何だったらフロト全土を2分割して、それぞれをジェスとジンの2人で治めて貰っても・・・」と言い掛けていたので、その場で丁寧にお断りさせて頂き、北方辺境伯の案だけを受け入れる事にしたのだった。
まあ冒険に出掛ける機会は減ってしまうが、幸いな事に僕の陣営には優秀な面子が揃っているし、今回知り合ったプリシラの祖父であるボンドネルと、山賊から救い出した際に居た海洋都市ダブの商人の父親が、ボンドネルがメトで理事会の理事長を務めていた時の同僚らしく、ボンドネル経由で海洋都市ダブを統治する際の協力を求めたら、
「息子を山賊から救出しただけでは無く、治療まで施して頂きありがとうございました。
今回、旧友ボンドネルから、このフロトの北方辺境伯へと着任されたのが、息子の恩人であるジーンサイザー・フォン・アルバトロス様だとうかがっています。
つきましては、一度お会いして、ジーンサイザー様に直接お会いした上で、感謝の気持ちを述べさせて頂きたいと思っている次第でございますので、近い内にブラストの街へと参上させて頂きます。」と言う様な感じの手紙が僕宛に届いていた。
まあこの件に関しては、取り敢えずはボンドネルに丸投げするにしても、僕以外の女性陣達にも色々と動いて貰っているので、そろそろ、何かの形で一度感謝の気持ちを伝えなければと思っていた時に、例の海洋都市ダブに在住しているボンドネルの旧友からの手紙の後に、
「追伸・ジーンサイザー様が海洋都市ダブへお越しになられる際には、是非私に連絡を頂ければ、私どもが所有している海が見渡せる眺望の良い別荘を、ジーンサイザー様の療養施設としてご利用して頂ける様にご準備させて頂きます。」と有ったので、どうせブラストの街の状況が安定したら、北方の主要な街を繋ぐ交易ルートと、ブラストの街の様な交易都市として機能している街を視察する必要が有るので、最初の視察場所は、彼女達の慰労も含めて海洋都市ダブに行くのも良いかな?と思っている。
そして、このブラストの街に付いてなのだが、今回、ブラストの街の古い時代の衛星画像を00号から貰ったのだが、その過去の衛星画像を見て驚いたのだが、約1,100年程前のブラストは、直径およそ約13㎞、そしてその外周は山々を上手く利用して、外周がおよそ約41㎞にも及ぶ城壁に守られた『城塞都市』だったと言う事が分かったのだ、
そして、古い時代のブラストが『城塞都市』だった頃の衛生写真を、工作大好きヒチハに見せてみると、
「提督!是非、この美しい街並みを再現しましょう!」と言って、
次の日には『ブラスト・都市改造計画書』なる物を作成して僕の所まで持って来ると、この古い時代に作られた『城塞都市』の機能的美しさの説明から始まり、水源を確保する為に作られた人造湖の話しから、衛生上の観点からの上下水道を完備した街並み構想に続き、
外周の城壁を再構築する際には、自分達の本体側面に船体を三分の一ほどメリ込ませる格好でドッキングしている200m級護衛戦艦達を、城壁内部に仕込んで、城壁の強化をすると同時に使用する資材のコストダウンに繋がるなどと、僕に対して物凄い勢いでプレゼンを開始する始末で、その勢いに負けてしまった僕は、
「取り敢えず、古い時代に『城塞都市』だった時の城壁後周辺の調査から始めようか?」とヒチハには言っておいた。
取り敢えずは、今のブラストの状況を把握し、街自体の機能と活動を復活させてからではないと、ブラストの街の再開発計画にGOサインすら出す事が出来ない状況だった。
それに、このフロトの北部方面には、海洋都市ダブの他にも海洋都市が2か所と、穀倉地帯の農業都市が3か所に、鉱山都市が4か所と工業都市が2か所の、合計12か所の主要都市があるのだ、先ずはその全ての都市を調べて、現状の把握を進めないと成らなかったのだ、
確かに『城塞都市』だった頃のブラストの街にも興味はあるが、まだ足元の地固めすら出来て無いのだ、ヒチハには悪いが過去のロマンを追うのはもう少し後になりそうだ、
そして、それ以外にも考えないといけない事や、心配しないといけない事がテンコ盛りなのだ・・・(;´・ω・)




