第55話・プリシラ、12歳当時の姿に戻る
アルバ王国の国王である祖父が、大勢の兵士達に囲まれてブラストの街に到着した当日は、トロから遥々ブラストの街まで約7,000㎞、所要日数で40日にも及ぶ長旅の疲れを少しでも癒して貰えればと思い、事前に工作艦ヒチハに頼んで、僕が領主代行として使っている古城跡に宿泊施設を兼ね備えたスパを建設していたので、祖父と祖母、そして祖父の実兄である宰相に祖父の側近の人達にはそのスパでゆっくりと旅の疲れを癒して貰い、
その翌日の午後に、僕達と一緒に昼食をとりながら色々と話をする事に成った。
まあ話しと言っても、政務に関する話しは僕の亜空間に作った療養施設の一室や、バーチャル空間に構築した疑似空間で頻繁に話し合っていたので、本当に雑談しながら家族揃っての食事会だった。
ただまあ、その場に一人だけ『私は不機嫌です!』オーラを発している12歳当時の姿のプリシラが居て、僕の祖父から、
「お嬢ちゃん、つい先日会って話しをした時と比べて、随分と色々な所が縮んでおらんかのう?」と話し掛けられ、余計に『私は不機嫌です!』オーラの色が濃くなっていた所に、まるで傷口に塩を塗り込むかの様に、横でペコを抱えたまま話しを聞いていた5歳児の幼女モードのヒルドに、
「プリシラよ! 何をそんなにむくれた顔をしておるのじゃ? そう言えばプリシラよ、今日はあのナイスなバディーでは無いのう? 何処かにでも落として来たのか??」
などと陽気に聞かれてしまい、プリシラが余計に落ち込んで居た。
何故、プリシラの容姿が12歳の頃の容姿に戻っているのか?と言うと、二日後に予定しているあの男とあの男の悪事に加担していた者達の公開処刑の場で、あの男が犯した罪を告発する告発人としてと、更にはあの男の次男から受けた数々の虐待の証言をする証人として、出廷する予定なのだが、そこでちょっとした問題が発生した。
例え亜空間を利用した『時間加速治療』を受けた治療の副次効果だったとは言っても、当時のプリシラの容姿と今のプリシラの容姿が、余りにもかけ離れてしまって居た為、今のプリシラの姿では少々不味いのでは?と言う事に成り、ムツハに色々と相談されていた『月』の00号が、
「ジン殿、ムツハちゃんから、王様をやっているジン殿のお爺ちゃんがブラストの街に来た時に、プリシラちゃんは公衆の面前で、ジン殿のお爺ちゃんからの質疑応答に答える必要が有ると聞いたんだけれど、本当なの?」
「はい、僕の祖父であるアルバ王国の国王が、後4日程でブラストの街に到着する予定で、更にその4日後には、ブラストの街の南門前に広がる大草原に、裁判と罪の処罰をする為の公開処刑場を設置して、その場で裁判をする際に、プリシラには告発人及び被害者の代表の一人として参加して貰う予定です。」
「それでねジン殿、ムツハちゃんから『プリシラが公衆の面前に立つのには大きな問題が有る』って聞いたのだけど、間違いは無い?」
「はい、」
「ジン殿、それって単に亜空間を利用した『時間加速治療』で、プリシラに心的治療を施した結果、プリシラが亜空間で成長して、当時の姿とはかけ離れた大人のプリシラに成ってしまっている事が問題なのよね?」
「はい、その通りです00号、プリシラが亜空間に滞在中に成長した事が問題なんです。」
「分かったわジン殿、仕方ないけれどムツハちゃんが持っているナノマシンを使った医療技術と、私が持っている医療技術を使って、今のプリシラの姿から当時のプリシラの姿に戻して、この問題を解決しましょう。」と僕に提案をしてくれたので、
「大人に成長した人族を、再び幼かった頃の姿に戻せるの?」と疑問に思って聞いてみると、
「まあママに任せて♪任せて♪」と軽く言われてしまったが、良く考えてみると、これから00号とムツハが持っている科学技術を統合して、プリシラに行おうとしている処置は、
この世界に住む魔法が使える者達の中でも、ほんの一部の強力な魔力を持った大魔法使いと呼ばれる者だけが、自身の肉体を魔法で強化し、更には肉体が劣化しない様に魔法を使って自身の肉体を改造する事で、自身の寿命を最長で2~3倍ぐらいには伸ばす事が出来る様な、
大魔法使い達にとっては秘術中の秘術であり、普通の魔力しか持っていない魔法使い達には憧れの大魔術であり、その他の自身の延命を望む者達にとっては、永遠の命題と言っても良い若返りさせる為の処置を、プリシラに対して行おうと言っているに等しい事だった。
最初こそ、ジンからの提案に対して、酷く反発して聞き入れ様とはしなかったプリシラだったが、ヒルドからの
「残念ねプリシラ、貴女がジンと一緒に居る事が出来る時間が、10年は短縮されたままになるのね!」と言われて、その理由が分からず、ヒルドに
「それってどういう意味ですか?ヒルド様」
「プリシラは気付いて無い様じゃ?」
「だからどういう事なのでしょうか?」
「残念な事に、妾とは違って人族には寿命って物が定まっているわ、しかも人族よりも多少は獣人族の方が寿命は長いけれど、それでも150歳の誕生日に手が届く獣人族って、一体どれ程の人数が居るのかしら? そしてプリシラ、貴女の寿命って後何年残っているのかしら?」
「まあ普通に考えると、今の獣人族の女性達の平均寿命が143歳前後だから、後120年ぐらい?だと思いますヒルド様」
「まあ大体はそのぐらいじゃろうて、ならば、今プリシラが旦那様の言う事を聞いて、12歳当時の姿に戻ったったとしたらどうじゃ?」
「・・・・ 私の寿命の残りが130年ぐらいに・・・ なる?・・・ 」
「後、妾自身も感じる事があるが、旦那様は今のナイスバディな妾も愛してくれておるが、妾が幼い姿を取る事が多いのは何故じゃと思う?」
「う~ん・・・・ 良く分かんないですヒルド様・・・」
「では、お主は、まあバーニャは置いて置くとして、ポプラ、ラタニー、ラムネに、そしてシオン、更にはお主の治療を担当してくれたムツハ達7人姉妹達じゃが、プリシラは彼女達を見てどう感じる?」
「大人な雰囲気のナイスバディなお姉さん達かな?」
「まあ妾も同感じゃ、旦那様の周りにはバーニャ以外はナイスバディな女が集まり過ぎじゃ! 今はお主もナイスバディな女達の一員じゃがの、そんな訳で旦那様は、普段からナイスバディな彼女達と暮らしているせいか? 妾がこのナイスバディな姿で迫っても、最近はいまいちな反応をされる事が多くてのう。
最近では特にじゃ、ナイスバディな女性達を見慣れてしもうた旦那様が、唯一何も警戒せずに一緒にベッドで寝てくれたり、一緒に風呂にも入ってくれたり、膝の上に乗って甘えても、逆に頭を撫でて甘やかしてくれるのが『5歳児の姿をした幼女モードのヒルドちゃんじゃ、その次がバーニャかのう?・・・・
さて妾はここまで話したが、この先どの様な選択をするのが良いか?は、頭の良いプリシラなら・・・」
「うん、分ったよヒルド様! 私、ムツハちゃん先生の治療を受けて来るよ!」と元気にムツハの下に向かって駆け出して行くと、そのまま12歳当時の姿に戻る為のナノマシン処置を受けて、肉体を再調整する為の医療特化型ナノマシンが充満した身体調整槽からプリシラが出て来たのは、昨夜遅くの事だった。




