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 第48話・主神の愚痴



 ブラストの街のに入ったジンの耳に入って来た事は、貿易都市国家フロトが事実上崩壊した後のブラストの街の悲惨な現状ばかりだった。


 特に顕著で異常だった事が税金の増税と、その税金の徴収方法が異常過ぎた事では有ったが、この事態を異様な物にしているのはこれだけでは無かった。


 アルバ王国の国王である祖父から色々と聞いてはいたが、メト周辺に点在する貿易中継都市として機能している各商業都市で、次々とブラストと同じ様な事が起きている事だったが、どうもこの事態を引き起こしているのが、僕の目の前に居るブクブクと肥え太った豚の一行の様だった。



「お初にお目にかかりますジーンサイザー様、私は『商売と旅』の神を()()として信仰する『正統宗教会』の司祭、ハラダマールと申します。

 今日はジーンサイザー様に、『正統宗教会』の素晴らしさをお話しさせて頂きにきました。」


「はて? 余は、その方達が何やら苦境に立たされておるから、助けて欲しいと願い出ておると聞き及んでおるが? セバス、余の聞き違いだったのか?」


「いえ、私も()()()()()()()()なる者から、『このブラストの街での生活に多くの者達が困っておりますので、是非お話を聞いて欲しい』と嘆願が出ていると聞き及んでいましたが、私の方に上がって来ていた報告とは多少違うようですな!」


「では、余がこの方の話しを聞く必要は無いと?」


「その様ですなジーンサイザー様」


「お、お待ち下さいジーンサイザー様、私の話しを聞かないとジーンサイザー様は不幸になりますぞ!」


「ほう、余がその方の話しを聞かないとどの様にして不幸になると申す?」


「はい、『商売と旅』の神の不興を買い、ジーンサイザー様の身に色々な災難が降りかかります。

 その災難を避ける為にも、是非とも我が()()()()()に入信して頂き、ジーンサイザー様も我々と一緒に『商売と旅』の神である()()()()を唯一神として崇めて頂く事で、ジーンサイザー様の繁栄も思いのままでございます。

 さすればジーンサイザー様が、次期国王と成られるのは間違いございません。」


「ほう、余が次期国王に成れると?」


「はい、唯一神メルク様のお力で必ずやジーンサイザー様が次の国王と成られるでありましょうぞ! それこそが唯一神であるメルク様のご意思です!」


「少し良いかな?」


「何でございましょうジーンサイザー様、」


「先ず、商売と旅の神メルクを、この世界の唯一神の様に言っているけど、それは誰が言っている事なの? もしかしてメルク本人が言っている事なの? それに、この世界にはメルク以外にも様々な神様が存在している訳だし、しかも君は、さもメルクが主神であるかの様に言っているけど、本当にメルク自身が()()()()()だと言っているのを聞いたのかい? じゃあ、それを聞いた本物の主神は何と言うだろうねぇ?」


「黙って聞いていましたが、商売と旅の神様で、この世界の主神でもあるメルク神様に対して何と失礼な! 貴方にはメルク神様の天罰が下りますぞ!」と目の前の肥え太った豚が、唾を飛ばして激昂してしているので、


「そうなのメルク? この状況って、君からの天罰なの?」と本人に聞いてみる事にした。


 無論、主神の爺さんも一緒である。





 一瞬で、ジンが謁見の間として使用していた部屋が、神々の降臨で神秘的な場となり、ジンの目の前の豚なんかは頭も上げられていられなくなるほどの()()で満たされた。


「酷いわジン君、私、ジン君にそんな酷い事なんてしてわッ!」


「ちょっと聞くけど、メルクっていつも僕の事はジン殿って呼んでたけど、何で今日に限って()()()なの?」


「だって、今日はジン殿が私の事を()()()って呼び捨てにしてくれるのが嬉しくて~♪」


「はぁ~・・・ まあその前に、メルク神様に質問だけど、この豚が言っていた『メルク神様が唯一神で主神』って主張は事実なの?」


「もうジン君、私の事は()()()って呼んでよ~♪」


「はいはい、で、事実なの?」


「この豚人族達(オーク)の祖先が、自分達の都合の良い様に()()()()を解釈して、自分達の為に作った『正統宗教会』って場所で()()()達が勝手に言っている事よ! 第一、私が主神で唯一神ですって? 絶対に有り得ないわッ! それに『正統宗教会』って組織は、ただの金集めをしているだけの組織で、私は一切認めた事は無いわッ! 私が唯一認めているのは、メトのスラム街に近い場所に在る小さな教会だけよ!」


「だそうだよ、『正統宗教会』の司祭ハラダマールとやらよ! うん?・・・ 」


 

 正統宗教会の司祭ハラダマールとやらは、ジンが視線を向けた際には、既に口から泡を吹いて気絶しており、フロトの全土のみならず、この大陸に点在している正統宗教会と名乗る教会組織の関係者全員が、ジンの目の前に居る司祭ハラダマールとやらと同様に、一斉に口からは泡を吹き白目を剥いて昏倒してしまったそうだ、


 この一件で世間では『金儲けの為だけに豚人族達(オーク)達が率いて来た()()()()()一派に、メルク神だけでは無く、主神からの罰も下った。』と言われているが、後世の歴史家達には『正統宗教会の教えを()()として来た貿易都市国家フロトに、主神の罰が下り、その罰で貿易都市国家フロトはアルバ王国の()()()()()()()に完全に滅ぼされた。』と言われている。


 言われているジン本人にとっては良い迷惑であったが、この今回のブラストの街での正統宗教会の司祭との会談自体が、元々は以前にフロトの首都メトで主神とメルク神から依頼されていた事で、本来の目的が正統宗教会と商売と旅の神であるメルクの教えには大きな隔たりが有り、メルク神自身には支持されていない事を世間に周知させる為だった事が一つと、もう一つが、正統宗教会の教えを()()として来た貿易都市国家フロト全土の商人達に、『正統宗教会の教え≒メルク神の教え』だからだと言って自身の利益だけを求めていた商人達に、もう一度『商売とは何なのか?』と考え直す機会を与えて欲しいとのメルク神からの依頼でも有った。


 今回は、その神様の思惑にアルバ王国が乗っただけの話しだったのだが、この会談と主神とメルク神が降臨した瞬間の姿を、セバスが子機を使って録画していた物を、セバスの親であり『月』の統括者である00号(ママ)が、リアルタイムでこの大陸全土の住人に対して見せてしまって居たのである。


 まあ僕の顔は微妙に(ぼか)しており、僕の事を良く知らない人物が見た場合、僕とは気付かない様に成っていたのが救いだったが、主神の姿が初めて民衆の前に晒された事も有り、一時期は民衆の主神に対する熱量も物凄い事に成ってはいたが、主神自らが、



『我は主神なり、我はこの世界に存在する全生命の父なり、我の願いは全生命体の安寧のみである。

 我が愛する全生命達よ、子達の教えを良く聞き、良き一生を遂げる事を、我は願う!』と、この世界の全住人達の夢枕に立って演説した結果、

 それ以降、この世界の住人達にとっては主神様が自分達の前に姿を顕すことが無くても、主神様が自分達の行いを見ている事は事実であり、主神様が言いたい事は子である神様が自分達の前に降臨して教えてくれているのだと教えられる事と成った。



 そして、この世界の主神だと全生命体に周知された存在は、今夜も僕の目の前で、何処から持って来たのかは知らないが、高級そうな安楽椅子に座り、旨そうにウイスキーを飲んでは『副神達の対応が冷たいのじゃ~』と僕に向かって愚痴を零していた。





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